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018 マンガ『君は放課後インソムニア』① オジロマコト

 主人公の(一人の)登場が遅いマンガ――早乙女らんま/乱馬の『らんま1/2』、若松みゆきの『みゆき』、雨宮ひかりの『H2』など――その主人公はたいてい秘密を持ってる。本作のヒロイン曲伊咲も見開きの扉絵を除く17/18頁目で(寝)姿を現す。もっともクラスメイトだから見つけられてしまった中見元太と互いに顔と名前を見知っていたようだけど。しかし今まで言えなかった不眠症という悩みを同じ悩みを持つ中見には言うことが出来、恋愛とも同志愛とも友情とも決めつけられない(あるいはどれとも言える)物語の始まり。
 第2話は第1話で紹介したサブキャラのキャラ付けのあと、曲の「夜のお楽しみ会」の提案。第3話はその具体的な活動、夜明けまでの街中のお散歩。しかし挫折や失敗からくる大人の鬱屈はそこにはなく、あるのは曲の健気な明るさ。もっとも曲に屈託がないわけではなく、「今は全然ヘーキだよ。/水泳と体操習って体力ついたし」とわざわざ自分から言うところ、曲自身の不安の表れ。
 第4話は中見の曲に対する気遣いで、第5話は二人の隠れ家、天文台のさらなるリニューアルで。しかし第7話でついに教職員に発覚。しかし中見の捨て身の機転で次の第8話、天文部を復活させることで事態か収拾。しかし第8話は中見と曲の無罪放免では終わらず、「私が月に行ったら、/そこから手ぇ振るよ」と中見に言う。
 そして第9話は隠れ家の天文台を見つけた職員も寛ぎに来た。その職員が退室した後、曲はソファで眠りこける中見に寄り添って横たえ。こうして各話を論じると陰湿なじめじめさではないけど、本作の魅力ははからっとした明るさでもないと理解でき。中見は曲の明るさ、元気に引かれてるようだけど、曲は中見の温もりと暖かさが救い。まさに「ふれあい青春まんが」で、私好みのスキンシップのあるマンガ。

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