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頁14「スミマセン、お話し中に」
事あるごとにマイペースな人がいて、心のなかで何度となくツッコミを入れてきた。
(いや、それくらい自分でやりなさいな)とか。
(メールの最後、「よろしくお願いしま」ってなんなん)とか。
小さなことだけれど。
けれど、そんなマイペース氏がある時、
「スミマセン、お話し中に」
と、話に割って入ってきた。明らかに、ふたりの人間がおでこを突き合わせじっと話し合っているところに、割って。
「スミマセン、お話し中に」
いや、ホントよ。ホント“お話し中”なのよこちらは。
そうまたマイペースぶりに翻弄されながらも、よく割って入って来られたなぁ……と感心すらしつつ、実のところはホッと胸を撫で下ろしている自分がいた。
なぜならばその時の私は、上司にとうとうとやり込められている真っ只中だったからだ。
また今日もこの時間が始まったか……と顔の表情筋が床まで垂れ下がりそうになりながらひたすらに堪えていた。
そこへ、空気も読まずに割って入って来た一人の人間、マイペース氏。
しかし彼のおかけで、表情筋下垂タイムはあっという間に遮られたのだった。
「スミマセン、お話し中に」
(え、今? いやいや全然いいす! ナイスタイミングっす! どどど、)どうされました?????
誰かのマイペースが誰かを救った瞬間だった。
ありがとうございます、マイ☆ペース マイ☆ヒーロー。
いつもすこしイラッとしちゃってゴメンなさい。
あなたみたいな人こそ救世主なのですねきっと、この世界では。
その日ばかりは、氏にそれはそれはたいそう感謝した。(いや、そもそもは上司にやり込められないようにできればいいのだけれど……難しい。)
もしかしたら、実は不穏な空気を読んでわざと割って入ってくれてりした……? なんて、考えられなくもないけれど、きっと違うだろう。
だって本当にマイペースなのだ。「お弁当箱洗いたいんですけど」って急に言われても、スポンジとか洗剤とかここにはないので、マイ弁当箱洗って帰るのがいつものルーティーンなのでしょうけど、今日のところはすみません諦めてください。
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