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同志少女よ、敵を撃て

要約:
第二次世界大戦大戦中、モスクワ近郊の静かな村で暮らす少女、セラフィマ。戦火とは無縁の穏やかな暮らしをしていたが、ある日ドイツ軍に襲われ、家族を含む村民が皆殺しにされる。赤軍に救出されたセラフィマは一流の狙撃兵として女狙撃兵イリーナに育て上げられ、前線へ向かう。

感想(ネタばれあり):
人名や地名が多く、読むのに時間がかかった。訓練や戦況はかなり緻密に描写されていた。日本は沖縄以外地上戦がなかったこともあり、兵士が目の前で戦闘を繰り広げるイメージがわかないところがあったが、目の前で血しぶきが飛び交う地上戦の過酷さや、武力を持たない民間人の女性や子供が巻き込まれる戦争の残酷さがよくわかった。

女性兵士に焦点を当てた作品はなかったので新鮮であった。セラフィマがミハイルと再会した時に、ミハイルが「戦場での女性に対する暴行は、兵士の一体感をもたらしており、加担しないと仲間外れにされる。自分は加担しないと約束する」と話していた。セラフィマはこの時点で、ミハイルも女性暴行にかかわっていたと気が付いていたと思うが、実際にミハイルが、女性に暴行しようとしているところを目撃すると、やはり失望した。生き残るためとはいえ、息を吐くように嘘をつくような人間に変わってしまったこともショックだったように思う。そこでミハイルを撃つという決断をしたセラフィマも悪魔になったと言える。戦争は人を悪魔に変えてしまい、人を傷つける以外何も生み出さないのだということを痛感した。

アガサクリスティ賞とのことでミステリー要素で期待していた。セラフィマがミハイルを射殺するところはある程度予測できてしまい、度肝を抜かれるほどではなかったが、終戦の月であり、ロシアウクライナ情勢が不安定な昨今、この本を読んで「戦争って最低」と思うことができてよかった。

#読書
#同志少女よ敵を撃て