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ボロボロの三角定規(もしくは美術資料集)

出かけたついでに普段はあまり行かないスーパーに寄った。いつもと違う景色にちょっとテンションが上がる。ちょっとテンションが上がったので、香薫(いいウインナー)とか偽赤福とか、いつもは買わないものも買ってしまった。このスーパーは有料のレジ袋が、2円のめちゃくちゃ小さいやつか、5円のめちゃくちゃでっかいやつのどちらかしかない。東京03さんの強盗のコントを思い出す。僕はマイバッグを持ってきていない大馬鹿者なので、仕方なく5円払った。

盗まれるかもな、と思って傘立てに入れていたビニール傘が盗まれていなかったので、嬉しくなって家まで歩くことにした。途中、歯の形のイラストの中に「は」とひらがなで一文字だけ書いてある歯医者の看板を見かけて、「は?」と思った。漢字は偉大だ。

高校の近くを通る。剣道場から威勢のいい掛け声と竹刀を打ち付ける音が響いてくるが、もし僕が「剣道」というものを知らなかったら、かなり怖いだろうな、と思う。謎の奇声と何かを激しく叩く音。嫌な想像が膨らみ、早足に通り過ぎるだろう。

逆に、僕が剣道部の稽古だと思っているだけで、実際は違う可能性もある。数学教師が使うでっかい三角定規を床に叩きつける「定規投げ部」の練習かもしれないし、買わされたもののほとんど使わない美術資料集を壁に投げつける「壁資料部」が大会前の追い込みに入っているのかもしれない。中を見れないので本当のところはわからないが、何をしているにせよ、生徒たちが流した汗だけは本物だ。ボロボロの三角定規(もしくは美術資料集)はきっと一生の宝物になる。

なんだか熱い気持ちになってきた。明日の朝は早起きして香薫(いいウインナー)をパンに挟んで食べよう。僕はそう決意して家路を急いだ。

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