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映画みたいなシーン

同期の芸人と夜の公園でネタの練習をしていると、カップルが現れてフリスビーを始めた。暗闇の中をピンクのフリスビーがふわふわと行ったり来たりするたび、二人は楽しそうに笑い合っている。その様子を見て「なんか映画みたいなシーンだな!」と思った。

しかし、「映画みたいなシーン」とは一体何なのだろうか。世の中のは無数の映画が存在しており、大概の場面は何かしらの映画ですでに描かれているような気がする。何せ「何気ない日常を描いた」と謳う映画があるくらいなのだ。そう考えると、この世に映画みたいじゃないシーンなど存在しないとも言えるのではないか。

それこそ、夜の公園でネタの練習をしている我々も見ようによっては映画みたいだろうし、そんな我々とフリスビーカップルが同じ公園にいる様子も映画みたいである。それをマンションの部屋の窓から老人が眺めていればそれもまた映画みたいだし、その老人が大家に内緒で飼っている猫がねこじゃらしをガン無視して箸置きで遊んでいるのも映画みたいだ。そんな猫の存在を実は知っていながら黙認している大家が八百屋で茗荷を買うのも映画みたいなら、その茗荷を作っている農家の息子が友人と「ザ・ハンバーグステーキズ」というバンドを始めるのも映画みたいである。そして、そのバンドのライブに来たOLが演奏の途中でライブハウスを出るのも映画みたいだし、その帰り道に商店街のモスバーガーからカーネルサンダース似の紳士が出てくるのも映画みたいなのである。

そして今、眠れない夜に布団の中でこの限りなく内容の薄い文章を読んで「なんだこりゃ!時間の無駄じゃねーか!ふざけるな!」という気持ちになっているあなた。

いいですね。非常に映画みたいですよ。

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