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ギャルとマブダチに

マイバリカンで頭を刈って出かけたら、会った人から刈り残しを指摘された。慌てて確認するとたしかに前髪の一部分だけが長いまま残ってしまっている。これは恥ずかしい。髪を一部分だけ伸ばすのは基本的に恥ずかしい行為だ(少なくとも僕にとっては)。嫌だなあ、これは恥ずかしいぞ。

そこまで長さの差があるわけではないのでぱっと見はわからない。しかし、一度気づくともうそこにしか目がいかなかった。若い女性の絵が一度老婆の横顔に見えるとそうとしか見えなくなる騙し絵みたいなものだ。まさに前頭部に老婆の横顔状態である。まさに、というあれでもないけれども。

恥ずかしくて、丸刈りの人間には一生理解できないと思われていた「今日前髪が決まらなくて最悪なんだけど〜」というギャルの気持ちが少しわかったような気がした。だからなんだという話だが、普段は交わらない者同士の相互理解が進んだと思えば意義深い。あとはギャルに一旦丸刈りにしてもらって、タオルで頭を拭くとマジックテープの要領で綿埃が付着してしまう、という感覚を理解してもらえば完璧だ。我々はもう理解不能な他者ではなくマブダチである。

「てかウチだけ髪刈ったのおかしくね!?」とギャルにキレられて「バレましたか?」と返して一緒に笑う。「アンタも髪伸ばしなよ!」と言われ「嫌だよ!」と返しまた笑う。そんな仲になれるはずだ。マクドナルドのナゲットとかをつまみながら馬鹿みたいに笑い合える、そんな仲に。

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