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雨の日の二人

雨の中歩いていると、何やら話しているお婆さん二人組を見かけた。片方は傘をさしていて、もう片方は折り畳み傘を開きかけ(もしくは閉じかけ)の状態で持っている。おそらく友人同士だろう。何となく気にしながらそばを通りすぎると、その瞬間少しだけ会話の内容が聞き取れた。

「あんた、早く、傘さしなさい!」
「めんどくさいんよ、これが!」
「さしなさいて!」
「めんどくさい!」

二人は傘をさすささないで揉めていた。傘をさすように助言する友人に対して、折り畳み傘を開くのがめんどくさいとごねているようだ。傘をさしていないお婆さんは、友人の言葉に耳を貸す気はない様子だが、開きかけ(もしくは閉じかけ)の状態をキープしているということは、助言を受け入れるか突っぱねるのか決めかねているのだろう。

部外者からすれば普通にさせばいいじゃないか、と思うけど、そこは二人にしかわからない関係性があるに違いない。一つわかるのは、あの歳になっても傘をさすささないで揉められる友人がいるというのは、とても幸せなことだということだ。

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