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読書記録:ふわりと夢の中で旅に出る~「旅の断片」若菜晃子~

本屋でぶらぶらしていると、ピンと来る本があった。それは薄いピンク色で、ごくシンプルな絵が描かれていた。タイトルは「旅の断片」。思わず衝動買いしてしまった。

家に帰り、コーヒーが入ったカップを抱えながら読む。内容は、作者の若菜さんの(ものと思われる)旅行記だった。ただし、「断片」という言葉にふさわしく、旅が細分化されている。

1から10まで描かないこと。これは素敵だ。言葉として表現されていない余白に何があるのかと、じっくり考えこんでしまう。

詳細に描かれた外国の風景に、描かれることのない旅の始まり。もしくは終わり。決して鮮やかではないが、セピア色をした旅の記録。現実なのに、現実ではないような不思議な雰囲気がある。

一気に読むのはもったいなく感じて、数日に分けてじっくり読んだ。傍らには常にコーヒーを置いていた。異国の匂いを感じる何かが傍にあると、書かれていない余白部分に心を飛ばせる気がしたからだ。

最後の「断片」を読んだその日、夢を見た。夢の中で私は、一度も訪れたことの無いはずのスペインやギリシャの街並みを眺めていた。それはやはり、セピア色だった。

読んでいただき、ありがとうございます! サポートしていただいた分は、見ること、読むことなどの勉強に使い、有意義なものにしたいと考えています。