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講演会「絵語りポトゥアの歌世界」@国立民族学博物館 | 大人の学び

2024年10月5日(土)、第553回友の会講演会「絵語りポトゥアの歌世界」に行ってきました。

みんぱく創設50周年記念特別展「吟遊詩人の世界」関連の内容で、
講師は、岡田 恵美 国立民族学博物館 准教授です。
講演後には、特別展の会場に移動して先生が担当された展示について説明していただきました。


講義の概要は、

インド・西ベンガル州の田園地帯にある、ノヤ村。そこには絵語りを生業としてきたポトゥアが250人ほど暮らしています。ポトゥアはイスラーム教徒でありながら、ヒンドゥー神話や地母神の物語を自らが描いた巻絵「ポト絵」を使って歌で紡ぎ、かつては近隣のヒンドゥー教徒の村々を巡りました。その時々の社会問題もポト絵に取り入れ、巧みに生きてきたポトゥアの暮らしと歌世界を映像を用いて紹介します。

国立民族学博物館友の会の講演会案内ページ
https://www.senri-f.or.jp/553tomo/2024/08/20/より

…というものでした。


上の要約から省かれた点を補足すると、

・調査対象としたノヤ(Naya)村は、インド東部バングラデシュとの国境に近い位置にある。

西ベンガル州西メディニプル県ピングラにあるノヤ村の位置

・この村が位置する西ベンガル州の宗教は、約7割がヒンズー教、3割弱がイスラム教(2011年時点 https://web.archive.org/web/20160910125228/http://www.thestatesman.com/news/opinion/bengal-s-topsy-turvy-population-growth/93152.html)。

・ポトゥアは、職能カーストで、絵師であり絵語りをする人々。

・以前、文化人類学者 金基淑氏が1988年〜1991年に調査を行った。この調査時と2022年に岡田氏が行った調査の結果を比較して、その変化「連続性」と「不連続性」を明らかにする研究を行った。

◉私なりにその変化をまとめると…

・男性が農閑期に近隣の村を回って絵語りを行い、返礼に米や野菜、少額の現金を受け取っていた。

・娯楽の中心がテレビやインターネットとなったため、他の村を回ることがなくなった。
・女性解放の活動として、女性が経済的に自立する方法として女性集団での絵画教室や集団歌謡が興隆し、女性ポトゥアが増加。歌唱は女性の集団歌唱が中心になる。

・夫婦でポトゥアの例多く、絵師専業は男性が多い
・民俗芸能として作品を国内の賞に出品したり、絵巻物ではなくデザインを額装用の絵画や雑貨にして商品化し、村の祭りや都会で販売したりする。
・絵の技術を芸能祭開催に活用されることも。

・販売にはGoogle Payなどの電子決済を利用するのでスマートフォンは必需品。
・ビジネスの相手がヒンズー教徒のため、ムスリムとしての名前の他にヒンズー教徒によく使われる名前も使う。
・賞への出品のためにコロナワクチンの接種を促す絵など現代的な題材も扱う。


◾️講義を振り返って

自分たちの集団が持つ技能を、世の中やその変化に合わせてうまく生活の糧にしているしたたかさが見えました。

また、女性が家事労働だけに縛り付けられていたのをなんとか解決しようと動いた夫婦の存在のおかげで(最初は風当たりが強かったようです)、担い手が女性にも広がったという事実も印象的でした。

この研究も、今の社会に生きる我々に貢献する民族学/文化人類学研究だと思います。


【参考資料】

・ポトゥアや彼らが描いた絵・巻物、集団歌唱の様子をみんぱく特別展示館で見られます。日本の盲目の吟遊詩人、瞽女(ごぜ)についての展示もありました。(2024年12月10日まで)↓

・ポトゥアについての説明や彼らによる絵や歌い語りをしている様子を紹介しているページを見つけました。↓

おまけ

万博記念公園からの帰り道に撮った写真です。 影が長くなってきました。


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