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コロナで変わった見送りの形

2010年代、日本人が選ぶ葬儀の形は「一般葬」から「家族葬」へと様変わりしていきました。2020年、コロナ禍が訪れると、お葬式はますます小規模化し、内容も省略化されていきます。コロナで見送りがどう変わったのかを解説したうえで、今後、どうなっていくのかを考察します。

「密閉」「密集」「密接」ついでに会食もある、葬儀という場

葬儀は、葬儀専用式場という空間にたくさんの人が集い、間を詰めて並べられた椅子に座って参列するものです。コロナ禍において避けなければならない「3密」が生じやすい状況にあり、通夜振る舞いや精進落としなどの会食もあります。いつ集団感染が起きても、おかしくない状況といえます。

しかし、他のイベントと違い、葬儀はコロナだからといって延期することができません。火葬しなければ、故人の体は傷んでいきます。「せめてクラスターを避けたい」という遺族の気持ちや葬儀社の配慮から、3密を避ける数々の工夫がなされるようになりました。

家族葬の規模が小さくなった

コロナ禍が訪れる前から、葬儀は小規模化していました。親族の他、ご近所関係、友人関係、会社関係が訪れる「一般葬」の人気がなくなり、義理での参列を廃し親族中心で行う「家族葬」がスタンダードになっていきます。その背景には、人間関係が希薄化したこと、高齢化が進んだことで故人となったときには社縁や地縁が断絶していることなどがありました。

密集を避けるには、集まる人数を減らすのが一番簡単で有効です。家族葬の人数は平均して40人程度といわれています。この人数が、コロナを機にぐっと減少しました。20人規模、ときには10人ほどの家族葬も当たり前になってきています。

ただ「参列者の人数を減らしましょう」という提案は、葬儀社の方からは、なかなかできることではありません。故人の顔を見てお別れできる機会は一度だけだからです。遺族のほうが参列者を絞り、参列できない人へは「コロナで密集を避けるため、葬儀は身内だけで行います」とお詫びします。

親族の中でも、コロナに感染すると重篤になるかもしれない高齢者や、遠方の人は参列者から外される傾向にあります。

一日葬が選ばれるようになった

一日葬とは、お通夜を行わず葬儀だけを行う見送りの形です。とくに家族葬がブームになってからは、お通夜と葬儀の顔ぶれが同じことから、一日葬を選ぶ人が珍しくありませんでした。コロナ禍においては、人が集まる機会を減らす手段として、この一日葬を選ぶ人が増えました。

ちなみに、一日葬でお通夜を省略したからといって葬儀費用がぐんと節約できるわけではありません。葬儀を午前中から行うとすると、棺の安置や祭壇づくりは前日から行われます。すると通夜を行わなくても式場の貸出料を2日分支払うことになるため、大幅な節約にはつながらないのです。

会食は仕出し弁当や食べ物ギフトに

通夜振る舞いにおいては、故人を囲んで食事をすることが供養になるといわれてきました。しかし、コロナ禍においては、大人数で食卓を囲む機会を避けなければなりません。よって葬儀につきものである通夜振る舞いや精進落としなどの会食は、省略される傾向にあります。

会食を省略する代わりに選ばれているのが、仕出し弁当をお土産に持たせることや、香典返しに食べ物ギフトを添えることです。食べ物ギフトには、お菓子やジュースといったもののほか、カタログギフトが選ばれています。

時差参列が全国で当たり前に

葬儀自体の参列者を制限する代わりに、葬儀参列者以外の人には式前に焼香を終わらせ退席してもらう形式の葬儀が増えています。いわゆる「時差参列」です。

葬儀には出ず、式前もしくは式の後に会場へ訪れ、受付と焼香、遺族への挨拶を済ませたらそのまま帰る。このような参列形式は、近隣のお付き合いが色濃い地方で長く採用されてきました。

例えば「自治会内で葬儀が発生したら、必ず一定額の香典を出す」という取り決めを持つ地域があります。しかし自治会内の皆が葬儀に参列したら、式場はパンクしてしまいます。そこで「義理だから香典を出すが、そこまでの付き合いでもない」人たちは、焼香したらそのまま帰るという時差参列が採用されるようになったのです。

コロナ禍の今、葬儀の人数は制限しても、参列できない人たちの厚意を受け入れる方法として、時差参列は全国的に行われるようになっています。

今後、葬儀はどうなる?

今後、コロナが収束したとしても、葬儀の小規模化は止まらないだろうというのが葬儀業界の見立てです。少人数の葬儀が当たり前になると、「身内以外の人の死には、ほとんど触れたことがない」という人が増えてくることでしょう。ただでさえ少ない葬儀の機会が、もっと少なくなります。葬儀に出るのは「15年に1度」という人も珍しくなくなるでしょう。

すると、どういうことが起こるか。すぐに変化が起きそうなのは、喪服です。15年に1度しか着る機会のない高価な服を、買う勇気はあるでしょうか。15年も経てば、保存状態が悪くて服がカビる、体型が変わって着られない、デザインが若くて気恥ずかしいといったことは容易に起こります。レンタル喪服が一般的になったり、平服指定の葬儀が増えたりすることでしょう。

また、香典辞退の葬儀も増えると思われます。香典のやりとりは、お付き合いの証。人付き合いが希薄となった現代、コロナでますます人と出会う機会が失われています。加えて、人が集まる数少ない機会である葬儀すら身内だけで済ませるのであれば、香典のやりとりはどんどん少なくなるでしょう。「香典を出す」ことがスタンダードではなくなり、そもそも「香典は受け付けません」とする葬儀が増えてくる。そんな流れが見えます。

一方で、身内の葬儀をより特別に、丁寧に行おうという意識が高まるのではないかとも考えられます。一般的な流れに沿った、進行は葬儀社に全てお任せの葬儀から、よりオリジナル性を重視し、遺族が関わりを持てる葬儀が重視されるようになるのではないでしょうか。


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