土に還れる。森の再生に貢献できる。新しく誕生した環境配慮型の埋葬法、「循環葬®」
最近話題の樹木葬は、自然の中で眠れるイメージから人気が高まっています。でも、さまざまなタイプの樹木葬があり、なかには遺骨が土に還らないケースも多いことをご存じでしょうか。
「自然に還りたい、環境保護に貢献したいと願う人のための埋葬法を」と「循環葬」を立ち上げたアットフォレスト株式会社のCOO・正木雄太さんに、循環葬のサービスやお墓づくりに携わったきっかけについて伺いました。
遺骨が土に還り、森をつくってゆく循環葬
循環葬は、広大な森の中に遺骨を埋葬するサービスです。埋葬場所は、兵庫県、大阪府、京都府にまたがる妙見山。山全体が信仰の対象である静謐な森で、遺骨を骨壺からあけ、より土に還りやすいようパウダー状にして土中へ埋葬します。
「枯れた木が倒れ、やがて森の栄養となるように。自然の一部である人の死も同じように、循環の輪の中へ取り込んでいく」。循環葬のサイトにある言葉です。生物のひとつとして、大いなる自然のサイクルに還っていきたいと感じている人に最適の埋葬法といえるでしょう。
「埋葬の選択肢を増やしたい」正木さんの思い
循環葬を立ち上げたきっかけについて、正木さんは次のように話します。
「大学を卒業してから教育や福祉分野で働いてきて、人の死と接する機会があったのと、母が早くに亡くなりまして。生前に母は『石のお墓に入りたくない』『ペットと一緒に眠りたい』『自然に還るのがいい』と言っていました。しかし私の実家の周囲は慣習を大事にする地域のため、望みを叶えてあげることができませんでした」
お母様の希望に沿って埋葬できなかったことが、しこりとなっていた正木さん。お母様の死から約15年が過ぎ、のちに循環葬を一緒に立ち上げることになる小池友紀さん(at FORESTの現CEO)のお墓に関する悩みを聞いたとき、ある疑問が湧き起こりました。
「小池さんのご両親が墓じまいされることになり、私の母と同じように自然な埋葬法を希望されていると聞きました。『木が枯れるように人間も自然に還っていくのがいいよね』とおっしゃっていて。でも、調べてみたら本当に土へ還れる埋葬法がなかなか見当たらない。母の希望をふまえて情報を集めた15年前とあまり変わっていないことに驚きました。
『樹木葬』の人気は出てきていましたが、今の一般化された樹木葬は芝生の上にプレートがあって、カロートの中に骨壺を納める形式が多く、遺骨は自然に還りません。ネーミングとのギャップを感じました」
本当に自然へ還ることができるような埋葬の選択肢を増やしたい――。正木さんが海外の埋葬法についても調べてみると、広大な山を最低限の整備で霊園とし、木の下に埋葬、あるいは散骨するような方法が見つかりました。
遺体を堆肥にする「コンポスト葬」などにもヒントを得て、人が土に還り、自然の循環へ取り込まれてゆく埋葬サービスを構想。土壌学の専門家にアドバイスを受けながら準備を進め、2023年6月に循環葬をスタートさせました。
循環葬は「樹木葬」とどう違う?
自然とともに眠る埋葬法といえば、やはり樹木葬がイメージされます。気になるのが、樹木葬と循環葬との違いです。
「日本で初めての樹木葬(※岩手県知勝院、1999年)は、循環葬と似たコンセプトだと思います。ですから自然に還るというイメージにより近かった。しかし今は、様相が違ってきています」と正木さん。
正木さんのお話を伺いながら、ohmyso編集部が現在の樹木葬と循環葬の比較表をまとめました。
自然に還ることができ、後継者がいらず、未来の森林に貢献したいと考える人に循環葬は最適ですが、現代の樹木葬はそうともいえないようです。
「こういうのをずっと探していた」
循環葬には、スタートしてからわずか4ヶ月間で、アクセスがよいとはいえない山中にもかかわらず約100名もの見学者が訪れています。「見学者のおよそ9割が、さまざまな樹木葬を検討して理想のお墓に出合えなかった方々です。契約してくださる方は『こういうのをずっと探していた』とおっしゃる方が多いです」と正木さん。
かつて正木さんが樹木葬について調べたとき感じたイメージのギャップを、同じように味わった人が見学に訪れるのでしょう。森の中には、森林浴をしながら本を読んだり、お昼寝したりできる空間も設けられています。
ここに注意!循環葬に向かない人もいる
自然のサイクルへ還っていきたい人にぴったりの循環葬ですが、注意点もあるようです。
「循環葬には、墓石はおろか名前が刻まれたプレートすらありません。埋骨したところに樹木を植えるといったことも、森林全体のバランスをよくしたいという観点から行っていません。
よって、埋葬のしるしがほしい人には向いていないかもしれません。遺骨が循環してゆく森全体を供養の対象として見ていただけるとありがたいです」
また、お墓参りは予約制というのも、気をつけたいポイントです。
選択肢の一つとして。まずは森を見に来てほしい
「循環葬は環境にも人にも優しい、新しいお墓の形です。いろいろなお墓を見学されて、違和感を覚えた人はぜひ一度森を見学に来てみてください。きっと新しい発見があるかと思います」
見学の際は予約必須。最寄り駅から森まではスタッフが車で送迎してくれるので、車の運転ができない人も安心です。
【プロフィール】
正木雄太:at FOREST株式会社COO。英国・サセックス大学にて社会学を学び卒業後、日本の対人支援の世界へ。2014年に福祉事業所を設立し、社会福祉士として活動。死後の選択肢を増やすべくRETURN TO NATUREを共同設立し、「循環葬®」を立ち上げる。
(取材・文:奥山晶子、PHOTO:at FOREST株式会社提供)
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