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納得の葬儀を行うために取り入れたい「エシカル思考」とは?

最近話題の「エシカル思考」。かけがえのない今の地球環境を持続可能なものにするために必要な考え方と言われています。自らの倫理観に従ってより良いと思われる物事を選び取るエシカル思考は、納得の葬儀を行うためにも必要です。理想的なお別れ、後悔しない見送りのために取り入れたいエシカル思考について解説します。

エシカル思考とは

エシカルは英語で「ethical」と表記されます。もともとは「倫理的な」「道徳的な」という意味です。自分の良心に従って考えると「正しい」と思える事柄を選択することが「倫理的である」「道徳的である」とされています。

道徳を指す言葉には「モラル」もあることに気づく人もいるかと思われます。モラルのある行動、モラリスト、という言葉の方が、日本人にとってはエシカルよりもなじみがあるかもしれません。エシカルは、モラルと似たような意味であると捉えていいでしょう。

加えて、最近注目されているエシカルは、この「倫理的な」「道徳的な」というシンプルな意味に「持続可能な社会への倫理的な配慮」という解釈が加わっています。地球環境に配慮し、格差のない社会を目指すために必要な考え方とされているのです。

エシカルな行動とは、例えばこんなこと

エシカルな行動の例として、「エシカル消費」があります。地球環境に配慮していることが分かる商品と、そうではない商品があれば、前者を買うといった行動です。減農薬野菜を購入したり、詰め替えができる洗剤を選んだり、再生資材を利用した商品を探したり。つまりエコを意識するということです。

働く人の貧困や病気を生んでいる商品を選ばないことも、エシカル消費の一つです。私たちはどうしても安い商品に飛びつきがちですが、安い商品が生まれる背景には、低賃金や児童労働、化学薬品による働き手の健康被害などが潜んでいる恐れがあります。エシカルな消費のためには、その商品が誰によって、どのように製作されているのかを理解したうえで購入を判断する必要があります。

また、消費の先には「捨てる」という行為があります。捨てるときのことまで考えて商品を購入したり、手放すときにはリサイクルやリユースの工夫をしたり、行政が決めた処分方法にきちんと従ってゴミに出すといったことも、エシカル行動の一つといえます。

今までの葬儀は「エシカル」とはいえない?

さて、それでは葬儀に視点を移してみましょう。
自分の良心に従って考え「正しい」と思える事柄を選択することを「エシカル」であると定義したとき、今までの葬儀は果たして「エシカル」といえるでしょうか。

葬儀で使われる棺や祭壇、骨壺、遺影、ドライアイスなど必要品の多くがまとめてパッケージ化されています。遺族は現物を見ることなく、商品ごとに比較検討する機会も設けられず、プランだけを選ぶことになります。選べるのは、値段だけなのです。

さらにその「値段」ですら、選んだつもりが「選べていない」という事態が少なくありません。プランそのものの価格が80万円でも、返礼品や料理をプラスし、お布施まで含めると200万円を超えてしまう。珍しいことではなく、ごく一般的にあり得るケースです。

愛する身内が亡くなり悲しみが押し寄せる中、とりあえず葬儀だけはしなければならないと、パンフレットで葬儀プランの内容や値段を確認して即決する。他に必要な出費が出てきて費用が倍以上に膨らんだが、「必要な出費だから、仕方ない」と割り切るしかない。そして葬儀そのものの内容や、棺や骨壺などの葬祭品がどんなものだったかは覚えていない……。

商品そのものができた背景を理解し、比較して吟味し、良心に照らし合わせて納得の行くものを選ぶエシカルとは、ほど遠い消費のあり方です。

また、パッケージ商品として購入した棺や骨壺等の葬祭品がどんな風に作られた商品なのか、この買い方では全く分かりません。違法伐採の末に生まれた安価な棺であっても、気づけないのです。

自身や配偶者のために納得のゆく葬儀を準備しよう。そう考えて終活する人の中には、親の葬儀などで一度喪主を経験した人が目立ちます。年齢柄そうなるのも自然なことですが、「1度目の葬儀で味わった後悔を、もう二度と経験したくない」という強い決意を耳にすることがあります。

エシカル思考で葬儀を行うために大事なこと

エシカル思考で葬儀を行うためには、以下の6つの行動が必要です。

・できれば生前から葬儀の準備をする

ゆっくり考える時間がなければ、エシカル思考をまっとうするのは難しいものです。できれば生前の元気なうちに、葬儀の準備に取りかかりましょう。

・葬儀に何が必要で、何が必須でないかを明らかにする

葬儀のため必ず用意しなければならないものは、病院や火葬場への移動手段である「搬送車」と、故人を納める「棺」、そして遺体を冷やすドライアイスです。必須と思われがちな祭壇は、大人数の葬儀であればあったほうがいいですが、10人規模など少人数の葬儀ではとくに必要ありません。
葬儀に何が必要で、何が不要なのかを見極めるため、「自分が望む葬儀とはどんなものか」を深く考えるのがおすすめです。

・自分で用意できるものは、なるべく用意しておく

遺影は自作したり、写真館で撮影してもらったりして用意しておくことができます。自分で用意できるものをあらかじめ準備しておくと、納得のいく葬儀に近づきます。

・実際に使用する商品を比較検討させてくれる葬儀社を選ぶ

葬儀社選びの際には、パンフレット上だけでなく、実際に商品を見せてくれる葬儀社を選びましょう。実物は、写真で見る印象とは違うこともあります。並べて比較すれば検討もしやすくなります。

・商品知識のある葬儀社を選ぶ

商品の製造元や製造方法を尋ねたとき、しっかり答えてくれる葬儀社を選びましょう。エシカルな葬儀のため、最も必要なことといっても過言ではありません。

エシカルな葬儀とは、例えばこんなこと

シカルな葬儀とは具体的にどんなものなのか、ピンとこない人も多いでしょう。例えば、以下のような葬儀が「エシカルである」といえるのではないでしょうか。

・義理で参列する人は呼ばず、最低限の人数で行う

参列者が多くなるほど、大きな会場や祭壇が必要です。料理や返礼品の数も多くなります。たくさんの費用がかかるうえ、大量の食べ残しやゴミが発生する可能性があります。遺族が「ぜひとも参列してほしい」と感じる人だけを招待すると、費用も環境負荷も抑えられます。

・装飾をシンプルにする

前述したように、少人数であれば祭壇を使わずに葬儀ができます。棺のまわりにお花を飾るだけでも十分、お別れのスペースが作れます。このように葬儀の装飾をシンプルにすることで、環境負荷が抑えられます。

・環境負荷の少ない棺を選ぶ

安価な棺の中には、違法伐採の末に生まれたものが少なくありません。製造過程が確かな国産品を選んだり、燃焼時のCO2を抑制する段ボール製の棺を選んだりすると、エシカル思考に沿っていることになります。

・香典の一部を寄付し、香典返しとする

香典返しは、いただいた金額の半額相当の品物をお返しするのがマナーとされています。しかし最近では、香典の一部あるいは全部を慈善団体や福祉団体に寄付し、香典返しとして寄付団体からのお礼状を渡すケースもみられます。故人がお世話になった団体へ寄付する人もいます。

・廃棄を最小限にする

無宗教葬やキリスト教式の献花に使われる花は、祭壇に捧げた後に捨てられてしまうのが一般的です。献花は祭壇に捧げず棺の中へ置く、献花ではなくロウソクに火をともす献灯を選ぶなどの工夫により、お花の廃棄量を減らせます。
他にも、料理が余りがちになる精進落としを行わずグルメギフトを配る、お清め塩は希望する人だけが受け取る、祭壇に飾られた花をお見送り時に参列者へプレゼントするといった工夫で、廃棄を減らせます。

・葬儀後も使える葬祭品を選ぶ

日本には、葬儀に使ったものを「縁起が悪い」と一回限りで捨ててしまう文化がありました。しかし現代では、死者の穢れや縁起を気にする人はむしろ少数派になってきています。葬祭品を選ぶときは、「長く使えるもの」という視点で選んでみるのがおすすめです。
例えば骨壺。最近流行になっている樹木葬は、墓石の代わりに樹木を祈りの対象にするお墓です。樹木葬では骨壺から遺骨を取り出し、土の中へじかに遺骨を納めて自然に還すのが一般的です。すると骨壺は埋葬の時点で役目を終えてしまいます。せっかくなので美しいデザインの骨壺を選び、役目を終えた後もインテリアとして飾ったり、花を生けたりと利用するのはいかがでしょうか。
また、自宅で骨壺や遺影を安置するための「後飾り壇」という段ボール製の祭壇があります。後飾り壇は納骨後、役目を終えるため、捨てられてしまうのが一般的です。しかし、祭壇以外の用途にも使えるシンプルな後飾り壇ならどうでしょう。納骨後も、家にそのまま置いておくことが可能です。

シンプルかつスタイリッシュな後飾り壇

このようにシンプルかつスタイリッシュな後飾り壇なら、どんなインテリアにもなじむでしょう。供養のために使うほか、飾り棚などとしても活用できます。

まずは葬儀を知ることから始めてみよう

エシカル思考を支えるのは知識です。エシカルな葬儀をしたいなら、まずは葬儀のことをよく学び、知識を蓄えなければなりません。地域によって違いのある葬儀の流れを確認したり、利用できる葬儀社のなかから数社を選び、事前見学を行ったりすることで、葬儀について少しずつ知っていきましょう。


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