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より良い地球を、社会を未来に託す遺贈寄付の方法

「亡くなったら自分の遺産を特定の団体に寄付して、世の中に役立てて欲しい」という願いを叶えるのが、遺贈寄付です。遺言執行者を立て、法的に有効な遺言書に遺贈寄付の意思を記すことで、亡くなった後に寄付が実行されます。遺贈寄付の方法や注意点について解説します。

遺贈寄付とは自分亡き後に遺産を慈善団体などに遺贈すること

遺産の一部、あるいは全部を相続人ではない第三者に継がせることを「遺贈」といいます。遺贈によって公益法人やNPO法人などへ遺産を寄付する方法が「遺贈寄付」です。

遺贈寄付を受け付けている団体は、たくさんあります。森林保護団体、難民や戦争避難民の救済、アフリカの僻地に井戸を堀り安全な水を確保する運動、貧しい学生を支援する運動などなど。もしかしたら、あなたが共鳴し、支援したいと考えている団体も、遺贈寄付を受け付けているかもしれません。

遺贈寄付を検討している人のニーズもさまざまです。例えば独り身の人は、相続人がいなければ遺産は国庫に入ってしまいます。「それよりも自分が支援したい団体へ寄付を」と考える人は少なくないでしょう。また、相続人がいたとしても「遺産の一部だけは、世の中のために使わせて欲しい」と願う人もいます。

遺贈寄付の流れ

遺贈寄付をするには、当然のことながら、その意思をしたため、そして誰かに告げておくことで確実に実行されるようにしておかなければなりません。よって遺贈寄付をするには、「遺言書」と「遺言執行者」の2つが必要になります。遺贈寄付の流れは、以下の通りです。

1. 遺贈寄付をする団体を決める

「ここに寄付したい」と思える団体を探し、遺贈寄付を受け付けているか問い合わせましょう。遺贈寄付を積極的に受け付けている団体の中には、遺言書の作成や遺言執行者の立て方などについてサポートしてくれるところもあります。

2. 遺言執行者を立てる

遺言書に書く内容を確実に実行してくれる、遺言執行者を立てます。遺言執行者については遺言書に記載する必要があるため、遺言書を書く前に特定しなければなりません。相続人がそのまま遺言執行者となるケースが多いですが、相続人がいない、あるいは相続人がきちんと遺贈寄付を実行してくれるか不安な場合は、第三者を立てます。

遺言執行者には、未成年者や破産者でない限り、誰でもなれます。よって友人などを指定しても構いません。ただ、相続手続きは大きな負担を強いる仕事ですから、よほど相続に詳しい人でない限り、知人などには任せない方がよいでしょう。司法書士や弁護士が適任です。

3. 遺言書を作成する

確実に遺贈寄付が実行されるには、法的に有効な遺言書を書き、遺贈寄付についての希望を盛り込む必要があります。主な遺言書の作成方法は2つ。「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

自筆証書遺言は、内容を全て本人の手書きで作成する遺言書です。ただし財産目録だけは、パソコンなどで作成しても良いとされています。紙とペン、印鑑があればいつでも作成でき、費用がかかりません。ただし、法的に有効な遺言書にするためにはいくつかの作法があり、それが守られなければ無効となってしまいます。また、自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所による検認手続きをとらないと開封ができません。

公正証書遺言は、公証役場へ出向いて作成する遺言書です。担当職員が手引きしてくれるため、遺言書についての知識は必要ありません。ただ、一度できた遺言書を修正するには、また公証役場へ行かなければなりません。公証人を立てる必要があるため、どうしても第三者に遺言内容が漏れてしまうという欠点もあります。

メリット、デメリットを比較しつつ、自分に合った方法で遺言書を作成しましょう。

4. 亡くなった後、親族などが遺言執行者に連絡を入れる

本人が亡くなった後、葬儀を行う親族などが遺言執行者に連絡を入れます。よって親族に遺言執行者の連絡先を教えておかないと、遺贈寄付の手続きが遅れてしまう可能性があるため注意しましょう。

ただ、遺言執行者を立てる場合、遺言書にはその連絡先を記載しなければなりません。つまり遅くとも遺言書が開封された時点で、遺言執行人には連絡ができることになります。

5. 遺言執行者が遺贈寄付を執行する

遺言書には、遺贈寄付をしたい団体の名称や連絡先、遺贈金額が書かれています。遺言執行者が団体に連絡を取り、寄付の手続きを行って終了となります。

遺贈寄付の注意点

遺贈寄付を行う際には、以下のことに注意しましょう。

・現金以外の遺贈寄付を受け付けていないところがある

不動産は現金化するために労力が必要ですし、そのまま寄付金として活用できるわけではなく、税金がかかる場合があります。よって遺贈寄付の場合、現金しか受け付けていないとする団体もあります。生前によく問い合わせておきましょう。

・遺贈寄付を実行してくれる人への報酬を遺言書に明記しておく

司法書士や弁護士が遺言執行者となる場合には生前に報酬額が決められるため、あまり問題にはなりません。注意したいのが、相続人や専門家ではない第三者に遺言執行者をお願いした場合です。遺贈寄付の手続きをしてくれたぶんの報酬について、遺言書にきちんと明記しておくと、気持ちよく寄付を実行してくれるでしょう。

・遺言書の存在を家族に知らせておく

遺言執行者の情報はもちろんのこと、遺言書の存在を家族に知らせておかないと、遺贈寄付は叶いません。せっかくの思いを、きちんと伝えておきましょう。

・遺留分を侵害していないか確認する

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保証されている、最低限の遺産分割分です。この遺留分が侵害されると、法定相続人は足りない分の金額を請求することができます。例えば、「遺産の全てを○○団体に遺贈する」という遺言を残したとしても、遺留分を主張できる配偶者や子どもなどの法定相続人がいれば、寄付先とトラブルになってしまう恐れがあります。遺留分を侵害するような遺言書は作成しないでおきましょう。

・特定遺贈のほうがトラブルは少ない

遺贈には、「遺産の一切を遺贈する」あるいは「全遺産の5分の1を遺贈する」といった書き方があります。このような書き方は「包括遺贈」とされ、包括遺贈を受けた者は相続人と同じ権利義務を持つことになります。すると、遺産ばかりではなく、借金がある場合は、それも受け継ぐことになります。善意で遺贈寄付をしたいと考えていても、寄付先に面倒ごとを抱えさせてしまうリスクがあるのです。
なお、「遺産のうち1000万円を遺贈する」といった特定の遺産を指定する書き方は「特定遺贈」と呼ばれ、特定遺贈を受けた者は書かれた財産だけを引き継ぎ、相続人と同様の義務は生じません。遺贈したい財産については、なるべく具体的に書いた方がトラブルを生まないでしょう。

遺贈寄付をしたいなら、そのことを家族にアピールしておくのも大事

以上、遺贈寄付の方法について解説しました。自分の死後、希望通りに寄付が行われるかを見張ることは不可能です。よって、家族にはせめて遺言書があること、遺言執行者を決めていることなどを伝えておきましょう。

また、日頃から「自分が亡くなったら、○○万円をこの団体に寄付したい」と家族に告げておくのも大事です。遺言書や遺言執行者のことを告げ忘れても、家族があなたの発言を思い出し、遺産の中から寄付してくれるかもしれません。生前からその団体に少額を寄付するなど、少しでもつながっておくと、遺品の中から家族が感謝状などの手がかりを見つけてくれる可能性もあります。


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