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全ての現代人に必須のデジタル終活って?ネット上の情報が遺品になる前にやっておきたいこと【前編】まずはデジタル終活の「ギリギリ合格」を目指す!たったの1分で作業は終了!?

シニア層のスマホ利用率が上昇している今、親も子世代も知っておきたいのが「デジタル終活」。いざ自分が亡くなったときスマホの中にある連絡帳やSNSアカウントなどの個人情報を開示できるようにしておくことで、「訃報を出したいのに知人の連絡先がわからない」「故人のSNSを閉じたいけどアカウントがわからない」といった遺族の困りごとを減らせます。
デジタル終活について教えてくれるのは、端末やネット上に残る故人の痕跡「デジタル遺品」について複数の著書がある古田雄介さんです。IT系の雑誌記者をしていた経験を活かし、13年にわたり故人とインターネット、遺品とデジタルの関係性を調査してきました。
古田さんによれば、最低限のデジタル終活はものの1分とかからずできてしまうとか!前編となる今回は、デジタル終活を評価する「優・良・可」のうち、ギリギリ合格となる「可」のラインについて教えていただきます。


《お話を伺う前に……デジタル終活をしないとどうなるの?》

デジタル終活をしておかないと、スマホの中身やネット上の個人的な情報が、いつかは全てアクセス不可能なデジタル遺品になってしまいます。すると、いざ自分が亡くなったときどんなことが起こるでしょうか。いくつか具体例を挙げてみましょう。


葬儀参列者の連絡先がわからない

親族や知人の連絡先がスマホの連絡帳にしかない場合、遺族がスマホを開けなければ葬儀のお知らせができません

亡くなったことを知らない人からLINEが届き続ける

届いた全てのメッセージが未読スルーになり、相手を心配させてしまいます。遺族は故人のスマホに届く通知を見るたびに「返信してあげたい」と思うかもしれませんが、パスワードがわからなければできません。

月額サービスが課金され続ける

U-NEXT、Huruといった動画配信系などのサブスクリプションサービスを使っている人は多いでしょう。故人のクレジットカードや銀行口座を解約すれば引き落としは止まりますが、サービスそのものの解約に難航すると、請求自体はされ続けます。詳しくは、下で古田さんが解説してくれています。 

SNSのアカウントが放置される

故人がFacebookやInstagramを使っていた場合、アカウントがそのまま放置され、ときには悪用されてしまうリスクもあります。

ネット銀行や証券の口座を見つけてもらえない

インターネット上だけで取引を行うネット銀行やネット証券の口座は、遺族に気づいてもらえない可能性があります。せっかくの遺産が放置されてしまうのはもったいないことです。後で多額の残高が発覚した場合、相続のやり直しが生じることもあります。


どれもなかなか恐ろしい事態です。しかし、古田さんは「ほんの少しのデジタル終活で、面倒な事態をある程度防ぐことができる」といいます。早速、教えていただきましょう!

たった1分の対策で、デジタル終活としては合格ラインの「可」

たった1分の対策で、デジタル終活としては合格ラインの「可」

――最も大事なのは、遺族がスマホのパスワードを知る手段を残しておくことです。なぜなら、葬儀参列者の連絡先からお金関係のことまで、遺族が知りたいことが詰まっているのがスマホだから。スマホが開ければさまざまなアカウントを把握できますし、パスワードがわからなくても自動入力されて管理画面にアクセスできるケースがみられます。

しかしスマホのセキュリティはすごく厳重で、パスワードがわからない場合はほぼ開くことができません。いわばポケットに入る地下金庫のようなものです。そこで提案したいのが、スマホの合鍵となるカードを作ること。作り方は至って簡単で、カードと油性ペン、修正テープさえあればものの1分で終わります。

まず、ご自身の名刺など、余っているカード状の厚紙を用意します。厚紙に「iPhone」など機種名を書いた上で、パスワードと記入日を書き込みます。書き込んだら、パスワード部分に修正テープを2~3回重ねて終了。

この「スマホのスペアキー®」を金庫や重要書類が入った引き出しの中に入れておくだけで、遺族が見つけてくれやすくなります。修正テープ部分は、コインで削ることが可能です。

修正ペンは何度も塗りつけるとキレイな仕上がりになりにくいため、修正テープの方がおすすめ。また、コインで削ったとき文字まで削れてしまわないよう、一般的な名刺に使われるような光沢ある厚紙が理想的。

2023年4月発表の「消費者動向調査」によると、スマホの買い換え期間は平均して4.4年です。ここ数年は大体これくらいの期間で推移しているので、スマホを買い、パスワードを設定したらこのカードを作るだけで、4~5年間有効なデジタル終活ができるというわけです。コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスともに優れた終活方法といえるでしょう。デジタル終活分野では、これさえできればもう合格。優・良・可の三段階なら、「可」はクリアしています。

※「スマホのスペアキー®」は古田さんの登録商標です。上の写真にあるようなデザインテンプレートが古田さんのHPより入手可能。無料ダウンロードできます。
https://www.ysk-furuta.com/download

【前編まとめ】

デジタル遺品に関わるさまざまな面倒ごとを回避するための対策が、たったの1分でできてしまうとは驚きです。後編では、さらに「良」や「優」を目指す人のためのデジタル終活について、引き続き古田さんに教えていただきます。また、デジタル終活をするうえで最も大事なことについても伺います。

後編はこちら↓


【古田雄介さんプロフィール】

古田雄介さん

1977年生まれ。ライター・ジャーナリスト、「デジタル遺品を考える会」代表。葬儀社勤務、IT関連雑誌の記者などを経て2007年からフリーのライターとして独立。故人とインターネット、遺品とデジタルの関係性の調査をライフワークとしている。著書に『ネットで故人の声を聴け』(光文社新書)や『デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた』(日本加除出版/伊勢田篤史氏との共著)などがある。


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