大丈夫って言って欲しかっただけなんだ。
今日の朝は1個も食べなかった。なんだよ。
昨日散歩してる時、すれ違った2人組の女性がお話ししてた会話の破片。
多分どちらとも50代手前。
「私ね母親に大丈夫って言って欲しかっただけなんだって思うんだ」
「・・・。」
「大丈夫だよぉって」
その言葉の前の会話も聞いていなかったし、その後の会話もそこで終わった。
通り過ぎて行ったから。
なのに、彼女の「大丈夫だよぉって」って言った言葉の音の響きと余韻が、私をちょっと切なくさせた。
そして私の妄想癖に引っかかって、絶対に答えの出ないどうしてをぐるぐる考える羽目になった。
寂しそうだった。
でも、今はそうやって口にできるほど、吹っ切れたって感じでもあった。
お母さん、どうして大丈夫って言ってあげなかったの?
言えない何かがあったの?
その時の彼女の状態は、お母さんから見て大丈夫じゃなかったの?
考え考え歩きながら、心がちょっと痛くなった。
まあ、でも、今の彼女はその事をお友達に話しながら、元気に通り過ぎて行ったんだから、自分で大丈夫を捕まえたんだね。きっと。
ありがたい事に、ある程度好き勝手に生きていられるのも、お母さんのおかげだ。
どんな時でも(例えば私がしでかしたとしても)必ず理由を聞いてくれて、話してくれて、最後には、絶対にお母さんは私の味方だから大丈夫だって思わせてくれた。
味方とか敵とか子供じみてるけれど、子供の頃はそれが大切だった。
「好きにしたらいいわ。何かあったらお母さんがいるから」
今考えると、なんてありがたかったんだろう。
でも、少しだけ私もいい子の部分があって、好きにしていいよって言われると、私が好きなようにしても、お母さんにかけるかもしれない迷惑が、最小限、もしくは全くないといいなと、やりたい事とか、したい事に関するあれこれを、自分なりに真剣に考えてから行動するようになった。
おかげで取り返しのつかない失敗をして、お母さんの手に負えないような結果になった事はない。って書くと、なんてお利口さんって感じだけど、お母さんの懐が大きかっただけで、本当はやらかしてるのかも。
お母さんに怒られた事は、2回しかない。
すごいでしょ?
すごいというのは怒られた回数の少なさではなくて、たった2回しかないからはっきりと詳細に記憶してるって事と、自分で言うのもなんだけど、よく2回くらいしか怒らせないで済んだなって事。
一度は、自分の部屋に鍵を取り付けた時。
小学校4年生。
いつも弟が私の部屋に勝手に入ってきて、私のものをいじるのが嫌で、出入りの業者さんに自分で言って鍵をつけてもらった。
特に本棚の本を元あった場所に戻さないのが、気に入らなかった。
百歩譲って読んでもいいとしても、どうして元の場所に戻さないのかが腹立たしかった。
何回言っても出来ないやつだった。
おまけに子供の頃は、街の本屋さんと文具屋さんは、月末にお母さんがまとめて支払いをするシステムになっていたから、読みたい本があったら本屋さんに言えばいいだけの事なのに、どうして私の本をわざわざ持ち出す必要があるんだ。
あいつ、自分の事はものすごく几帳面だから、今考えるとわざとかもしれない。
おまけにもっとまずい事に、本当はお母さんは怒ったんじゃなくて、ものすごく悲しそうにちょびっと泣いた。そして
「鍵をかけてまで、家族から何かを守る必要があるの?」と言った。
なんて事だと思った。ただ単に弟に侵入されないためのいい作戦を思いついたと思って、自分としては「してやったり」と思って行動しただけだったのに。
お母さんを、泣かせちゃった。おまけに
「どんな理由があったとしても、お母さんを泣かせるような真似だけは、お父さんが許さない」
と、お父さんまで参入してきて、極悪人の私はそんな2人を前に、ダイニングテーブルの前に立ったまま固まっていた。
たかが本の事くらいで、私ったら最悪の人間だ。とまで思った。何が何だかわからないけれど、ものすごく反省してすぐに鍵を取り外してもらった。
今思うと、悪いのは弟じゃないのか?
まあいい、そういう小さいことは言うまい。
お母さんは、そういう系の事を大事にする人だったから、今度からはそこをつかないようにしなくてはと、心に刻んだ。
ここで、怒られたもう一つの出来事を書くと長くなるし、今まで生きて来てたった2回しか怒ったことのないお母さんを怒らせちゃった事を、1日にふたつも思い出すとシュンとしちゃうから、今日はひとつにしておこう。
昨日の彼女も、お母さんに言って欲しかった時に「大丈夫だよぉって」言ってもらえれば良かったね。
だけど「大丈夫って言って欲しかっただけなんだ」って、その時の事をサバっと言えてるって事は、きっとお母さんは、そのくらいの事、私が大丈夫よなんて言わなくてもあなたならできるでしょ?って、彼女の事を信じてくれてたんだと思う。
さて、朝ごはんを食べなかったバチスカフとひと勝負して、その後、自分の夜ご飯だ。