10年日記【ふりかえるとよみがえる】(毎週ショートショートnote)
おばあちゃんは昔から『筆まめ』だった。
手紙でも詩でもただの落書きみたいなものでもなんでも書いていた。
そんなのを筆まめだというんだよと教えてくれた。
こうやってその時思ったこととか、頭の上からひらひら〜って落ちてくるのを急いで掴んで書いておかないとすぐに忘れちゃうからね。
そう言ってたよね、おばあちゃん。
分厚い10年日記にはレシートやチラシの裏に走り書きされたレシピやらいっぱい貼ってある。
いわゆる雑記帳だ。
わたしはおばあちゃんの日記を読むのが好きだ。
10年前のわたしが生まれた日の頁にはただ紙いっぱいに菜穂子誕生とだけ書いてあった。
他の頁はびっしりいろんなこと書いてあったのに、その日だけは私の名前と誕生とだけしかない。
たったそれだけ?
どうしてなんだろう。
書いたものを振り返ってみると、その時のことがまるで昨日のようによみがえってくるんだよね。
ねえ、おばあちゃん。
いつかこの頁のことがわかるようになるかな。
そうだといいな。
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