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神様探し【神様時計】(毎週ショートショートnote)



ハローワークで見つけた求人は奇妙なものだった。
"神探し村祭どんと来い 求む男手 要体力 学力知力不問"
入社した会社を半年でリタイアし、次を探していた僕は23だし、力はある。
無いのは学力と知力。
うってつけだ。


そこは、こんな風景があったのかと感心するくらい見事に何もない村だった。
ここで30年に一度、神様を探すという神事があるという。村のはずれに馬鹿でかい大桜があり、そのてっぺんに神様しか鳴らすことのできない大時計を置くのだという。



古い蔵からずしっと重いそれを抱えての木登りは至難だ。
汗だくで抱える腕や肩がきしむ。てっぺんの枝の間にそれを置き、ずるずると下に降りる。



村人達が代わる代わる木の幹に手を当てる。
時計はうんともすんとも言わない。
諦めかけたとき、ひとりの赤ん坊がよちよちと桜の木に向かって這っていく。
皆がその姿を見つめる。
小さな手が幹に着く。


リリリーン。リリリーン。
時計が高らかに歌い出す。
神様はいたのだ。

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