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ひとは見かけじゃない

以前勤めていたパート先で起こったことを振り返って思うことをこちらにつらつらと書かせて頂いた。

その時に私もそういえばあんなこと言われたなあと思い出したので、こちらに書こうと思う。

パートとして働いていた頃の休憩は、店内の混雑状況や仕事の捗りくらいで代わる代わる取っていた。
そんな昼休憩の時に唐突にパート仲間に言われたのだ。


今だから言えるんだけど、私最初オラヴちゃんのこと、すっごく怖かったんだよね。
あの研修の時ね。オラヴちゃん、私の隣にすわってたの覚えてる??
心の中でどうして隣にこんな怖い人が座るのーって思ってたんだよ。


思わず箸を落としそうになった。
それを聞いていたもう1人が言った。


それ私も!!
めっちゃ怖かった、オラヴちゃん!!


なんでだ。
怖がらせる要素なんてゼロでしょう。
目が悪いが故に眉間に皺寄せてじーっと見るクセがいけなかったのか。


今はどう?
恐る恐る尋ねると即座に首を振り2人は笑った。
もう今は全然!
あの後まわりの人全員にすっごい話しかけてるオラヴちゃん見て、良い人だと思ったんだよ。
てかなんだったらアホだよね。
アホは余計だと思ったが、それよりも怖い人と思われたのが何よりショックだった。


考えごとすると口角が下がるからか。
ブスッとしているとその昔言われたことがあった。
まだ独身で働いていた頃。
吉田さんという経理のおじさんがいた。
背が小さくてお腹がぽこんと丸く出ていて、禿げ上がった頭のてっぺんがいつも光っていて、銀縁メガネの奥の目がいつも笑っていた定年間近の吉田さん。
その姿は小さな可愛らしい大黒様のようで、吉田さんを担いで入口に置いたらお客さまがたくさんいらっしゃるんじゃないかと皆に親しみを込めてからかわれていた。
そのマスコット人形のような吉田さんがわたしに言ったのだった。



オラヴちゃん、この間ね、新宿駅の構内で見かけたの。オラヴちゃんはまっすぐ前向いて歩いていたからボクとすれ違ってもまったく気がつかなかったみたいだったけど。
その時のオラヴちゃんね、世界中の悩みごとを一身に背負ったような小難しい険しい顔してたよ。
こう口の端が下がっていてね。
こんなふうに。
そう言って自分の唇の端を両方の人差し指で押し下げて見せた。
うわ、ひどい。
怖すぎる。
それを見て自分の顔がそんなふうになっていたことに悲しくなった。


オラヴちゃん。
あなたはね、いつもニコニコ笑っていなさい。
笑っていれば女の子はたいてい可愛いんだから。
そう言って片目をつぶってみせた。


ひとは見かけじゃない。
そのとおりだ。
わたしと娘が車にぶつけられ自転車ごと横倒しになった時に真っ先に声を掛けてきてくれたのはヤンキーあがりのような若い男の子だった。
大声で道路の向こう側からだいじょーぶっすか!?って叫んでくれたっけ。



ひとは見かけじゃない。
空き巣はきちんとした身なりでスーツを着こなし、鞄を下げて堂々と歩きながら侵入する家や経路、留守にしてる時間帯や人通りなどをつぶさに観察していると聞く。
にこやかな笑顔を浮かべ、親切さと善良な自分を全面に出して腹の中で舌を出す。
そんな人もいる。


ひとは見かけじゃない。
口角がさがった女だって見かけほど性格は悪くない。ただ話しかけるのに躊躇させてしまうのは間違いない。
誤解されないように、まずはそこからだ。
マスクの下の口角はだいぶ下がり気味。
スマイルスマイル。
さて、あなたは大丈夫だろうか。



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