結婚式に演歌を【告白雨雲】(毎週ショートショートnote)

今日わたし達は式を挙げる。
予報どおり、陽が燦々と降り注ぎ、青い空が突き抜けるような日になった。
沢山のお祝いの言葉と余興にわたし達は笑ったり泣いたりと忙しかった。


実家の隣に住む仲良しのおばちゃんが立ち上がるのが見えた。そしてマイクを持った。
あれ?そんなの聞いてない。


ナオコちゃん、今日はおめでとう。
サプライズゲストをお連れしました。
なによりもナオコちゃんの花嫁姿を見たかった人です。


そして突然、歌が流れてきた。
よ〜め〜にくる日が〜こなけりゃいいと〜
ほろ酔いの気持ち良さげに演歌を歌う人。
亡くなった父の懐かしい声。


ナオコちゃん、お父さんは酔うといつもこの歌を歌っていました。
そして最後はいつも泣いていました。
父親はダメだなあって言っていました。
もし花嫁姿が見られなかったらこの歌を流してほしいって。
この告白にわたしもその場にいた全員がくしゃくしゃになって大粒の涙を流した。



おめでとう、ナオコ。
ありがとう、お父さん。



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