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春の朝、ラットが走る!!

通勤バスを降り、会社までは徒歩5分ちょっと。いつものように歩いていたら、数メートル先に、向こうの道路から走って渡ってきた茶色とも灰色ともつかない塊が目に入った。

ん?
なんだ??

その塊はどこからか風で飛んできた何か、ではなかった。
小さい体。長いしっぽ。細長い顔。
そして灰色っぽい褐色の毛。


いや〜あぶなかった。
轢かれるかと思ったぜ。


という声が聞こえてきそうな焦り気味の様子だ。遠目にも心なしかハアハアと肩で息をしているように見えた。
肩がどのあたりかは定かではないが。


ピーターラビットの絵本に出てくるようなそれは多分間違いなく、ザ・ラット。
ネズミだ🐀
怖いとかいうよりも、この街中で交通量も多く人通りのあるこんな所をチョコチョコと走ってくるなんて。
ハツカネズミだろうか。
体の大きさからしてドブネズミではない。
モルモットでもない。

飼われていたのか、それとも春の陽気に誘われて朝の散歩と洒落込んだのか。
道路を渡り切って呼吸を整えたように見えたそれはわたしが近づいてくるのを見計らったように細い横道へと駆け出していき、そのまま見えなくなってしまった。


昔、母が仕掛けておいた罠にかかったネズミをそのまま水の入ったバケツに沈めて駆除したことがあった。
子供心にもなんて残酷なことをするんだろうと思い、それを見ないようにしていた。
2階の天井裏では時々、トタトタトタッと軽い足音が聞こえてきたりした。
それがあまりにもうるさくなると、父が柄の長い竹箒で天井をドンと突いた。するとあちらからこちらへと走り回っていた動きがたちまち止むのだった。
ネズミの運動会だね、と笑ったものだ。


ネズミもあの当時と現代とでは、人々の生活様式も大きく変わり、住みやすさも変わったのだろうか。
昔の適当な、不便な生活を送っていた適当な衛生環境の方が彼らものんびり生きていられたのかもしれない。


春の朝、駆けて行った1匹のネズ。
もう出てきてはダメだよ。
この世界には危険がいっぱいだから。


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