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オノマトペピアノ(毎週ショートショートnote)

娘は生涯、ぼくたちの言葉を話すことはなかった。何回誕生日を迎えても生まれたばかりの赤ん坊のような声を発するだけだった。
たくさん本を読んで聞かせ、ピアノを買って弾いてみせても、どんなに歌を歌っても、娘は赤ん坊の精神のまま歳をとっていった。


ドーはドーナツのドー、レーはレモンのレー。
娘はドレミの歌が好きなようだった。
歌声に合わせて娘はパッパフーやダーダーとよく声を上げた。それは機嫌が良い印だった。


今、部屋にはピアノとベッドがある。
ベッドの横に時々娘を座らせていた揺り椅子がぽつんと置かれたままだ。
無力で何もできない赤ん坊のようだった娘がここに居ないだけで、なんていう空っぽだ。


鍵盤に指を置き、いつものように弾いてみる。
ドーはドーナツのドー、レーはレモンのレー。でももう娘はいない。
あのバーバーパッ、プフウという声は聞くことはできない。 


ああ、娘は歌っていたのか。
歌声はもう聴こえない。
ぼくがもうピアノを弾くことはない。



本当にひさしぶりに書きました。
たらはかにさん、ありがとうございます💕
それにしても最近のお題は難しい…😅エヘヘ

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