見出し画像

1966年後半よりアメリカのロック・シーンで生じたサイケデリック・ミュージック・ムーヴメント。その嚆矢は、ビートルズなのか、ドノヴァンなのか。再度考える

えーと、またその話かい?  と言うなかれ。正直どちらでもいいし、いまさら100%証拠立てて論じるなんて難しいし、逆に、あの時代の混沌としたアメリカなら、ほかのバンドやアーティストという結論もあるんじゃないの?  などとも言うなかれ(苦笑)。

引き続き自分はこだわりたい。以下は某ブログ記事より。

あるイギリスの雑誌のサイケデリック名盤(アルバム)ランキングにおいては、1位はザ・ビートルズの『リボルバー』。2位はドノヴァンの『サンシャイン・スーパーマン』となっている模様。


イギリスの場合は、ザ・ビートルズの『リボルバー』(1966年8月)で異論はない。いや、時系列で考えると、ザ・ヤードバーズの『ロジャー・ジ・エンジニア』(1966年7月)があるか。こちらも捨てがたいが、まあ、『リボルバー』でよい。

じゃあ、アメリカは? 再び、くだんのブログ記事より。

ザ・バーズらしい。「霧の8マイル」はシングルであり、同曲収録のアルバム『フィフス・ディメンション(霧の5次元)』の発売は1966年7月。

1966年7月発売は、前述のザ・ヤードバーズと一緒。うむ、アメリカもイギリスも鳥がサイケの先導だったか(あ、yardbirdは鳥に関係ない)。

いやいや。アメリカの音楽評論家のジョン・ブッシュなる方はこう言っている由。

これですね。アメリカにおける『サンシャイン・スーパーマン』(次作にして続・サイケ名盤と呼ぶべき『メロー・イエロー』に至る流れ含め)の当時の反響は破格で絶大だった。

そして、ここで重要なのが、「オリジナルのアメリカ盤」という事情。60年代ロックのファンならご存じのとおり、当時、イギリス(いや、アメリカ以外の国全て)のバンドやシンガーのアルバムはアメリカ仕様で曲目曲順が勝手にいじられ、最悪タイトルも変えられて、どんどん出されていた。

ゆえに、同じイギリスのザ・ビートルズとドノヴァンが同じ1966年8月にリリースした
アルバム『リボルバー』と『サンシャイン・スーパーマン』も純然たるアメリカ仕様。ことに重要なのは、アメリカ盤『リボルバー』の内容であり、ビートルズ・ファンなら周知のとおり、ジョンの『アイム・オンリー・スリーピング』、『ドクター・ロバート』、『アンド・ユア・バード・キャン・シング』の3曲が省かれる結果に。

サイケ盤の評価として『アイム・オンリー・スリーピング』や『ドクター・ロバート』が抜けている意味は大きい。甚大すぎる。『リボルバー』のポールの曲は、どれもサイケには縁遠いものであり(いや、キ■れば気持ちいい曲はある)、ジョンの曲の喪失は、サイケ支持サイドから評価すると、かなりのマイナスと言うしかない。

一方のドノヴァンのアメリカ盤は、サイケ・サウンドのオンパレード。そりゃ、ドノヴァンに軍配が上がって、致し方ない。

前述のザ・バーズ、ザ・ヤードバーズは、1966年夏のアメリカにおいて、ザ・ビートルズやドノヴァンほどセールスはよくなく、影響面から考えるに、答えは自ずと出てくる。

「いくらサイケ色が薄まったとしても『リボルバー』と『サンシャイン・スーパーマン』を同列に扱うのは無理ありすぎ。セールスを考えたら、ビートルズの売上げはドノヴァンの比じゃないだろ」

というビートルズ・ファンの声が聞こえてきそうだが、サイケ・サウンドに特化した影響を考えると、先のジョージ・ブッシュ、ならぬジョン・ブッシュ氏が述べるようにドノヴァンのシーン先導・扇動説は正しい気がする。

ちなみに、ザ・ビーチボーイズの名盤『ペット・サウンズ』(1966年5月リリース)をどう位置づけるかについては、

確かにあのアルバムはサイケの要素が満載だが、正当に評価されるようになったのはかなり後年のこと。ドノヴァンの『サンシャイン・スーパーマン』の軍配で問題ないだろう。

翌年1967年、極上サイケ・アルバムをリリースしたジェファーソン・エアプレインヴェルヴェット・アンダーグラウンドあたりのサウンドへの影響を考えると、やはり、嚆矢はザ・ビートルズではなしに、ドノヴァンでいいと思われる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?