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怖い夢

(カウンセリング実習0.5回目)
私が取っている心理学講座で、カウンセラ-として、相手のお話を聞く、という実習があった。時間は一時間。目標はなるべく、自分は口をはさまず、クライアントさんである、相手の話をひたすら聞く、という練習だった。

私がクライアント役になった時、何が怖いって、私の中では夢ほど怖いものはないんです、という話をさせてもらった。なぜかというと、夢の中では、昼間抑えている感情がそのまま出てきて、それを感じた私はあまりの生々しさにのたうってしまうのだけれど、逃げようがない、だって夢の中だから。目を覚ましたくても、今見ている夢が終わるまで、目が覚めることはできないのである。

私が見る夢は、奇妙な、または怖い夢がダントツで、楽しい夢はほとんど見たことがない。幼い頃は戦争、特に空襲の夢。成人してからは逃げる夢、追いかけてくるのは幽霊、ゾンビ。一度これ以上逃げられない、ならいっそ捕まって死んでしまえば(幽霊に触れられると死んでしまうのである)、何も感じなくなって夢もゲ-ムオ-バ-だろう、と思い、逃げるのをやめて捕まってみた。そうしたら私は死に、幽霊に抱きかかえられたのだが、その冷たかったこと。私は死んでいるにもかかわらず、意識はしっかりあって、でも動けない、そしてその痛いくらいの冷たさに悲鳴を上げた。アドバイスのしようのない話で申し訳ないんですけれど、とにかく怖いんです、ということを言い、その場は終わった。その会話が私の中で何かの蓋を開けてしまったことも知らず...

そのあと一週間ぐらいして、ある晩、夢を覚えているだけで一晩で4つ見た。そのうちのひとつ目が、またこわい夢だった。出だしは忘れてしまったけれど、途中で私は自宅のピアノの椅子を床にたたきつけていた。何度も何度も。足と背の部分が赤茶色の木で出来ていて、クッション部分がワイン色。私はその椅子を床にたたきつけながら、声を、叫び声を出そうとしていたのだけれど、なぜか声が出ない。苦しい。怒りを込めて力いっぱい叩きつけ、何度目かにやっと少し声が絞り出せた、そのあと何回かして、とうとう肺の奥から大きな叫び声が出た!

と思ったら目が覚めて、ベッドの上に起き上がっていた。横で掛布団がざわざわと変な動きがあって、まるで猫のしっぽを踏んずけたときのような感じだわ、と思ってみたら、すくみ上った顔の私のパ-トナ-がいた。あれ、今日って出張じゃなったんだ、と思い出す私。彼はじっと私の方を見ている、かわいそうだったかな。私はおもむろに起き上がってトイレに行きながら、きまり悪いし、なかったことにしちゃおうかな-とも思ったが、戻ってきて、もう一回見ると、彼はきちんと目が覚めてしまったようなので、ごめんね、と小さな声で言ってみる。彼は「すげー。びっくりしたぞー」と言うと、ちょっと息を吐いて、それからようやくホッとしたように小さな声で笑った、まだ真夜中だったので。

朝になって目が覚めたときに、はっとわかった、それは一番最初の怖い夢で感じた怒りの感情は、一時期、兄へ感じていた気持ちだったということ。ず-っと昔だけれど、彼は自分の中で閉じこもってしまった時期があった。私にとっては、大好きで何でも話せて理解しあえて、家族の中で一番身近に感じていた存在が、突然遠くに行ってしまった感覚だった。腫れ物に触るような感じ。家にいるのにまるでいないかのようにふるまわないといけない雰囲気が、怖くて仕方がなかった。悲しくて仕方がなかった。受け入れられなかった私。戸惑っていた私。何もできないふがいない自分。行動したい解決したいのに、何もしないのが一番良い、という両親が出した結論が受け入れられなかった。でもそれに従わないといけない私。

怒り、たぶんこれが怖い夢シリ-ズ、の正体の一部。怖いの下に怒りの感情が潜んでいるなんて。今は兄も回復して何年も経つので、まさか夢の中でうなされるほど私の中でトラウマになっているなんて知らず、本当にびっくりした。さすがカウンセラ-さん、私の中のトラウマになっていた件を見つけるお手伝いをして下さった。

この夢にはおちがあって、朝食の時、彼に昨晩のことをもう一回謝ると、「あれ?それっていつのこと?ず-っと前のことでしょ?おととしくらいの泥棒の夢のことかな?」ちがうちがう、それとも私叫んだの、夢の中だけだったのかな?でも今喉がすごく痛いし、身体の節々も痛むんですけど?でもまあ、いいや、彼が覚えてないのなら。


最後までお読みくださいましてありがとうございました。芦邊春香でした。

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