カップヌードル・クライシス
皆さんは見たことがあるだろうか。
電車の座席の前に、お湯が入っていたと思しきカップ麺が盛大にこぼされている光景を。
———昨日の朝、わたしが実際に目にした光景である。
普段は空席がないどころか、一度乗ったら何駅も降りない人がほとんどで席が全くと言っていいほど空かないその路線。
乗った時から空席があるどころか、3つ連続で空いているなんて珍しいにも程があると思っていたら、一番端の席の前がとんでもないことになっていた。
電車でカップ麺を食べるというだけでも充分訳がわからないのに、あまつさえそれをこぼすとは。
世の中には本当にいろいろな人がいるものだ。
一体どういう状況なんだと思いつつ、わたしは端から2つ目の席に座った。
そこであれば、かろうじて散乱した麺やお湯を踏まなくて済むのが確認できたためだ。
こぼされたカップ麺をそのままに、走り続ける電車。
乗り込んでくる人は皆、カップ麺をよけるようにして歩いていた。
そりゃそうだよね。誰だってカップ麺の残骸なんて踏みたくないよね。
そう思いながら座っていた矢先、わたしはさらに驚くべき光景を目にする。
何でもないようにカップ麺を器用によけ、端の席に1人の男性が座ったのだ。
カップ麺が目の前にこぼれている座席に。
………強い。
世の中には本当にいろいろな人がいるものだ(2回目)。
そうこうしながら電車は走り続け、ある駅で停まってドアが開くと、ほうきとちりとりを持った駅員さんが入ってきた。
どうやら報告してくれた人がいたようだ。
駅員さんは、慣れた手つきでちりとりを床に向けて傾ける。
すると、中から大量のおがくずが出てきた。
初めて目にする作業の様子に、目を奪われずにいられなかった。
見事におがくずに絡め取られたカップ麺は、あっという間にちりとりへと吸い込まれていく。
作業を続けつつ、腕時計をスッと見て時間を確認することも忘れない駅員さん。
日本の交通機関の時間の正確さは、こういう方々の丁寧な仕事によって形作られているのだなと感じた。
そうして、発車時刻を遅らせることもなく、汚れた床を綺麗にした駅員さんは降りていった。
後にも先にも経験がないであろう、びっくりすること満載な通勤時間となった。
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