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『あなたの事が気になっています。』 第2回「FMラジオ番組に山下達郎クリスマス・イブをリクエストした埼玉県男性50代の方」

 ラジオが好きでよく聴きます。普段から時間帯問わず、とりあえず付けちゃう感じで聴いてます。今回は数年前にFMラジオを聴いていて、ふと気になってしまって未だにあれこれ考えてしまう、あるリクエストメールの話です。



数年前、12月のある日のお昼帯にやっていたFM番組を何となく聴き始めました。爽やかな番組テーマ曲と共に、女性DJの方が『今週末はいよいよクリスマスですね』というオープニングトークをし、『皆さんの”思い出のクリスマスソング”リクエストメール、お待ちしています』と募集をしていました。

そのままCMとかを挟み、色んなトークが続いた後、

『では、早速、皆さんから届いたリクエストメールを紹介していきましょう。今日のテーマは”思い出のクリスマスソング”。いつもより多く、沢山の方からメールを頂いています。まずは埼玉県・P.N ◯◯さん、50代男性の方から頂きました。「クリスマスといえば、まず思い出すのはこの曲。毎年、この曲が聞こえてくるとクリスマスが来たな〜と感じます。」確かにこの曲でクリスマスの訪れを感じる方も多いんじゃないでしょうか。では、今日お届けする1曲目、〇〇さんからのリクエスト…山下達郎で「クリスマス・イブ」』

女性DJの方はイントロから歌い出しピッタリまで澱みないトークをし、一方、ラジオを聴いている私も「確かにこの曲を聴くとクリスマス感じますね」と感じていました。



一見、全く違和感のない、普通の流れです。番組が紹介するメール1通目としても非常に当たり障りがなく、曲もメジャーな上に文面も短く「ああ、こんな感じでリクエスト送ればいいのね」という、これからリクエストを送ろうと思ってる人のハードルを下げる役割まで果たしている、素晴らしく機能的な1通目の紹介メールです。


が、です。
ふと、頭に生じた疑問と言うほどでもない小さな疑問。
自分でもこの時はまだよく解っていない、何がというほどの事もないほどの何かが引っかかりました。


リクエストメールを送った埼玉県50代男性目線で考えます。本当にこの埼玉県・50代男性の方が聴きたかったクリスマスソングは『クリスマス・イブ』だったのでしょうか?本当の本当の所で、本当にそうだったのでしょうか?

気がつくと私は曲そっちのけであれこれ考え出していました。



少なからず50回、クリスマスを経験した上で「ラジオにリクエストする」という、自分のエピソードが全国に向けて読まれるかもしれない特別な場面に、自分が最も推したい「思い出のクリスマスソング」が何故『クリスマス・イブ』だったのか。

山下達郎を聴くと確かに誰もが「ああ、クリスマスだな」と思います。つまりは誰もが「ああ、クリスマスだな」と思う、クリスマスで真っ先に思いつく曲、それが『クリスマス・イブ』です。

つまり、たまたま読まれたから良かったものの、リクエストが採用される競争率が最も高い曲のはず。それが簡単に予想できるのになぜあんなにも短く弱いリクエストの文面で「イケる!」と思ったのか。

例えば、”実は昔こんな出来事があって、かれこれこういう思入れがあり、ベタなこの曲も私にとっては特別な曲なんです”的な「エピソード重視」の文面ならわかります。特段、そういうのもないのにこの曲をなぜわざわざリクエストしたのか。



いえ、もちろん曲を聴くのに理由なんてなくてもいいと思います。ただなんとなく聴きたいという事はあります。しかし「敢えてリクエストする理由は特にないけど良い曲なんだから聴きたい」のなら私のようにボーッとラジオを聴いてればどうせこの時期かかるメジャー曲なんだし、それこそ他の人がリクエストするだろうし、なんなら街で勝手に聴こえてくる曲です。何がこんなに急いでわざわざリクエストまでさせたのでしょうか。

いえ、分かってるんです。この埼玉県・50代男性を責めたいわけでもないし違うんです。恐らく「リクエストを送るまでの速度で勝負した1通目採用狙いのメール」だったろうし、実際読まれたわけだし、ラジオにメールを送るそのものの楽しみも、採用されるかな?のワクワクもわかるので、考え進めると標的はそこではなく、


今回、私が最も気になったポイントは「じゃあ、曲リクエストを募集してこのメールを受け取った番組制作側は、なぜこの50代男性からの薄いメール」を選んだのだろう?という所です。

番組として1曲目は誰もが知ってる『クリスマス・イブ』をかけたかった思惑はあるでしょう。そこは想像出来ます。

しかし「いつもよりメールが沢山来ている」事も言ってたし、山下達郎『クリスマス・イブ』のリクエストなんて重複して何通も来てたはず。

仮に例えばですが、同じ『クリスマス・イブ』のリクエストとして「米国育ち8歳女子」からもメールが来ていたとして、”発売当時にまだ産まれてもいない、なんなら山下達郎も知らないはずなのに年代・世代を超えて今も聴かれているなんて凄い!”というプラスαがある、絶対にこっちを採用するはずです。

では、何故この薄メールが採用されたのか。



想像ですが、そこには事情があったのかもしれません。実際にはもしかしたらスタッフさんが届いたメールを読んでDJに原稿として渡すまでの間に、放送上は長いので赤ペンでビーっと線を引いてカットした文面、

「埼玉県50代男性です。20年間孤島に監禁されていて久しぶりに日本に戻ってのクリスマスといえば思い出すのは絶対この曲。この曲が流れるとクリスマスが来たな〜と感じます。」だとか

「宇宙飛行士で今も宇宙なんですが、クリスマスといえば、まず思い出すのはこの曲。毎年、この曲が聞こえてくるとクリスマスが来たな〜と感じます。ただそれどころじゃなく今、ジェットエンジンから異音がします。」とかという強いメールだったならば。

そうならば確かにエピソードが昼のFMには突飛すぎて要らないし、その部分は放送上カット、ただ曲チョイスは良いし、心意気も伝わるメールだから採用はするけど!という流れになりそうです。それなら何故あのメールが選ばれたか、ようやく合点がいきます。いかない気もします。


どうしてその曲をリクエストし、どうしてそれを採用し、どうして私は『クリスマス・イブ』を聴く事になったのか。毎年クリスマスになると思い出す、あのリクエストの事が未だに気になっています。

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※この文章は2010年3月号〜11月号に掲載用に
自主的に書いたものに大幅に加筆修正したものです。

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