見出し画像

熊本旅行 2023.3.27(月)

3/27(月)から30(木)に熊本旅行に出かけた。
仕事を辞めてまとまった時間があるのでどこかに旅行に行こうとおもったとき、ちょうど熊本で坂口恭平さんの展覧会がやっており、行ってみたいと思ったからだ。
記録もかねて書いておきたい。

去年の5月にはお母さんと叔母さんと三人で金沢に旅行したけど、一人旅は久しぶりだ。コロナの前の秋だからもう三年半前。旅行の前の晩はいつもよく眠れず、今回も寝不足のまま羽田から飛行機に乗った。

たまたま数日前にテレビで『ハッピーフライト』を観ていて、航空機事故寸前、みたいな内容だったので少しドキドキしていた。万が一の事故が自分の身にふりかかるのではないか、と割といつも思っている質なのだ。こっそり指を組み祈る。「大きく揺れても飛行の安全性には支障ありません」とアナウンスがあり少し安心した。建物がジオラマのように小さくなっていき、いつも見上げていた雲を横目に上昇していく。筒状の金属の中に数百人が乗り込んで空中に浮かんでいるところ、この足の下に地面まで何キロもの空間が広がっていること、想像しようとするけど上手く実感がわいてこない。少し後ろの席では赤ちゃんが終始泣いていた。離陸時や気流でガタガタしているときに大きく泣いているみたいだ。言葉も分からないのにこの状況がヤバいということはわかるんだ。そんなことを思いながら耳栓をして眠りについた。

目を覚ましたらちょうど窓の外に大きな山並みが広がっていた。きっと阿蘇山だ。急いで写真を撮る。いつもならすぐにTwitterに投稿するけど、我慢。まもなく熊本空港に無事着陸して、ほっとした。Twitterに投稿。
後から知ったけれど熊本空港はつい数日前にリニューアルオープンしたばかりらしく、とても綺麗だった。熊本市内へのバスが出ており、すぐに乗り込む。田園地帯を超えて一時間ほどで到着だ。バスターミナルがある建物も新しく、熊本駅周辺よりもこのあたりが中心街という感じだ。大きなくまモンが顔をのぞかせている。”SAKURA MACHI Kumamoto”という名前の施設なのだけど、ちょうど桜が満開。良いタイミングで来たみたいだ。

ホテルに荷物を置いてちょうどお昼時。さっそく坂口恭平さんお気に入りのスリランカカレーのお店Janiに行った。この日は展示をじっくり見たいと思っていたけど、その前に土地になじむための助走のような感じ。二種類カレーが選べたのでダルカレーとチキンカレーにした。おいしい!それに綺麗だ。あまり外食しないのでたまにこういう個人のお店でご飯を食べるとありがたみがある。ごちそうさまでした。

さて本題の展覧会「坂口恭平日記」へ。
いくつかのアーケード通りを抜けて熊本市現代美術館についた。デパートのように街中に建っていて、大きく展覧会のタイトルが掲げられている。
荷物をロッカーに入れて準備万端入っていこうとしたとき、ちょうど坂口さんが会場に現れたところだった。(なんて幸運なんだ!)手ぶらで、係の人に少しだけ会釈して、ふらっという感じで。
少しすると坂口さんが会場でパステルを描き始めたので、ちょこちょこそれを覗きつつ、展示されているパステルをみて回った。
会場自体は大きくないのだけど、膨大な数のパステル画が展示されている(たしか700点?)。作品にはタイトルがなく、制作した順番に番号が付けられている。ほんの初期の作品は今のような風景画ではなく、最初から今の形で描かれていたのではないことがわかる。Twitterで日々の制作のようすを垣間見ていたのもあり、その積み重ねの厚みのようなものを感じた。Twitterでみているよりも実物はもっと鮮やかでのびのびとしていた。特に水面の絵が好きだった。光があたってキリっとしているところと、滑らかなうねりのウルっとしていることろ。離れてみても近づいてみてもずっとみていても飽きない。阿蘇のかわいい色合いの絵も好みだ。水辺は気持ちよさそうで、田舎の道沿いの何気ない風景は帰省して地元を散歩しているような切ない気持ちにさせる。本当に沢山の作品があって惜しまずドンドンみることができる。それら一つ一つもそれぞれ良いけど、なにより日々の生活の中で作られてきた作品群をこの土地でみれるのが嬉しかった。展覧会と熊本の街をみながら、坂口さんの存在自体をみに来ているような気がする。

その間にも坂口さんはどんどん描き進めていく。
平日なのでそれほど混雑はしていないものの、20人くらいの人が注視している。みんな技を盗んでやろうとかそういうのじゃない。じゃあなぜずっと見ているのか。坂口さんと一緒に居たい、時間を共有したい、ということではないかと思う。面と向かってなにか話すことがあるわけじゃない。一緒にご飯を食べるわけでも、散歩するわけでもない。でも坂口さんが絵を描いてそれを間近にみる、というのは何のつながりもない人たちがその場と時間を共有できる方法なのだ。そんな気がした。

描き終わって、たぶん「江津湖の好きな場所です…」みたいに言って、描いたばかりの絵をテーブルに置いた。みんな話しかけて良いものかどうか、みたいな感じ。ふらふらしていたら、手を洗って戻ってきた坂口さんとしばし一対一で目が合った。とっさに何も言えることがなく、ぺこりとしつつ無言で小さく音のない拍手を送った。「ありがとうございます」と返してもらった。


展示を見終わった後、熊本城のお堀周りを歩いた。桜が満開だ。
「イエス・キリスト」というバッジをつけた外国の男子学生2人がカメラを持って「お!」という感じの表情だったので「写真撮りましょうか?」のジェスチャーをしたら、違ったみたいだった。でも数秒後に「やっぱり撮って」ということで、シャッターを切った。その瞬間一人がもう一人の頭にピースをのっけていてかわいかった。
加藤清正公像の所まで行くと、とてもいい感じのギターの曲が流れていた(路上で演奏している人がいた)。春の晴れた午後、桜の中を歩く人々。何とも気持ちのいい時間だった。

そのままこちらも坂口さんがよく行かれるという橙書店へ。
素敵なお店だ。『私の生活改善運動』という本を買った。

夕飯はホテルの近くの居酒屋へ。注文はスマホからするような大きなお店だだ。コロナの関係で地元で使えるクーポンがあり、それが使えるお店。旅にはおいしい料理が欠かせないというプレッシャーがあるけど、私は食べ物の優先順位は高くない。無理しないことにした。からし蓮根や馬刺しといった郷土料理の盛り合わせと日本酒。疲れていて一発で酔いそうだ。

ホテルに帰ってぐったりと眠った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?