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見立て・つもりが広がるとき

巧技台で遊んでいました。
3歳児のAくんが「これデコボコにしてよ」と訴えてきました。
普段凸型で組んでいる太鼓橋(商品名「丸型はしご」)を逆向きアーチの凹型にしてくれというのです。この表現も面白いですね。デコをボコにする。凸を凹にする。と考えると「デコボコにして」というのは理にかなった表現ですよね。

リクエストに応えてハシゴをひっくり返して設定しました。そうすると、低い段から高い段へ向けて逆アーチがかかるわけで、y=(xの二乗)のような登るほど角度が急になるアーチがかかりました。

さっそく登りはじめたAくん。
登っていきながら「するするとはしごをのばしてうえからみずをかけたり…」と唱えています。ピンと来る方はいらっしゃるでしょうか?絵本『しょうぼうじどうしゃ じぷた』の中ではしご車の「のっぽくん」の活躍を描写した文章です。角度が急になることでぐいっぐいっと高く登っていく感覚があったのでしょうね。
「あー!ホントだ。はしご車ののっぽくんみたいだね!」と思わず声が出ました。Aくん「うん、しょうぼうしさんなんだー」と笑顔になって「しゅつどうだ!」と気分が盛り上がってきます。
そのやり取りを他の子達も、すぐにこのイメージに共鳴。みんなが消防士さんになり、「シューー!(放水)」
「はやく!しゅつどうしてください!」
「あっ!あっちが火事です!」
「消火器がない!」
とまあ、賑やかなことになりました。

そして、そのまま小一時間ずっと消防士さんのつもりになって遊びこんでいました。

これまで何度か逆アーチに設定して遊んでいたのですがこういうイメージは出てきていませんでした。僕自身もそんな見立てが子どもから出てくるとは予想もしていませんでした。
それでも、ひとりの子のたったひとことから、その場にいた子達みんながひとつのイメージを共有して同じイメージの中で「見立て・つもり」の遊びが広がった瞬間はとてもドラマチックでした。

このエピソードが出てくるまでにはたくさんの背景があって、子ども達の育ちと保育士の意図やねらいが様々に複雑に絡みあった結果なのですが、その部分を説明していこうとすると大変な文章量になってしまいそうです。
ここまでの経過や子ども達の姿、僕や同僚の思いやねらいなどについては追々また文章化していこうと思います。

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