見出し画像

Tくんの活躍

保育士おへそのごま の保育エッセイ(15)

「Tくんの活躍」

‪ 体を動かすことは好きだけど、疲れやすい5歳児のTくん。最近は室内でブロックの大作を作ることに凝っていることもあって、外遊びをするよりは「もうお部屋入りたい…」と訴えてくることが増えています。‬

‪ 我が園では、自由保育として子ども達の意志や、したい遊びを保障することを大切にしていますが、担当としてはもう少し体幹を鍛えてしっかりとした体をつくることで基礎体力をつけて、疲れにくい体になってほしい。そうすることで、小学校へ行ってもしっかりと座っていられるし授業にも集中できるようになるはず。という願いを持っていて、本人の思いと大人の願いとの間で、どこまでを求めるか悩ましいことも時としてあるのです。‬

‪ 今日も運動会に向けての活動に取り組んだ後、年長さんを中心に久しぶりにタッチラグビーをしようよ、という声があがりました。(本式のタッチラグビーではなく、子ども達が楽しめるようにすごーく簡略化したなんちゃってタッチラグビーです。これも解説すると長くなりますが、意図とねらいを持って設定し、今年楽しんでいる遊びです)‬
‪「Tくんも一緒にやろうぜー」とあえて少しラフな雰囲気で誘いかけてみましたが、「いい。お部屋入る」と2階の保育室へ上がって行ってしまいました。まあ今日は運動会に向けての取り組みもあったしな…と深追いせずに他の子と盛り上がっていると。‬
‪ 少しして「やっぱやる!」と再び園庭へ。どうやら2階から見ていて楽しそうな様子に気持ちが動いたようです。それでも、今日はいつものように自らボールを持って走り回るほどの気力はないのか、ボールを手にするとゴール近くの味方にロングパス!なんとこれが大成功で、次々にTくんのパスから得点が入ります。「Tくんのパスすげー!やるなぁ、上手い作戦だ」と認めるとニンマリ。周りの子からも賞賛され、どんどんTくんにボールが集まるようになり、大活躍でした。‬

‪ 後から、「ほら、先にお部屋入っちゃわないで良かったじゃん。楽しかったねー」とこの経験が次につながって少々の疲れよりも楽しむことを選んでくれるようになるといいなと思い、振り返りの言葉をかけると、嬉しそうに何度も頷いていました。‬

‪ 言われてやるのではなく、自分から「やる!」と動いた結果、とても嬉しい経験になったことは、Tくんにとって、きっと大きな財産になるでしょう。自由保育には様々な課題や難しさもありますが、子どもが「自分で決める」ことを保障することは大きな意義があると考えています。‬

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?