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ドラマ感想文│『ジャック・ライアン』シーズン3

現時点で完結している最後の『ジャック・リーチャー』の視聴を終えた。疲れた。

本作は良かった。どのキャラクターもカッコ良かった。ロシア内部でのクーデターによって、アメリカとロシアは戦争状態に突入してしまうのか…という展開も良かった。

中盤では中弛みや妙に長く感じるシーン、また意味ありげなだけで何でもないカメラワークの多用など見られたが、それらも最終話の静かに怒れる男たちが全て吹き飛ばしてくれた。

特にロシア諜報員(最終的にそう言われていた)のルカ・ゴチャロフは良かった。というよりも、最初から最後まで彼の物語であり、本シーズンの主役は間違いなく彼だろう。だからこそラストは涙を誘う。冒頭から意味ありげに吸っていた煙草もきちんと役割を果たしてくれて、良いスパイスになっていた。

これまでジャックの相棒として活躍していたグリーアは健康になったんだかなってないんだか良くわからなくて、活躍の機会もあまり多くなかった。それでも重要な場面で重要な役割を果たす、役者に似合ったキャラクターとなっていたように思える。トニーの再登場も嬉しかった。アイツはワルだけど良いヤツだ。

マイクは今回も渋々参加している風な振る舞いをしながらノリノリであり、相変わらずの良いキャラクターとなっており、最前線でもキッチリその存在感を出していた。大統領への売り込みも欠かさない抜け目の無さが素敵だ。

そしてチェコ大統領であるコヴァクもまた、非常にカッコ良い女性として活躍していた。だからどんな策謀を巡らせて如何なる狡猾な立ち回りを見せたとしても、その父親はヘタレにしか見えない。彼については回想を観てもどんな人物なのかわかりづらく、とても纏まりのないキャラクターだったように思える。そういう設定なのかも知れないが…。

そういう意味では最終的に長官となるエリザベスも、そんなに役に立ったっけ?という印象が残ってしまい、どうも最後まで良くわからない人物だった。前任の方がまだわかりやすい。

しかし何よりジャックの存在感は薄かった。どんな場面でも脇役感が立ち上っており、どの人物もカッコ良く描かれている最終話でさえ、艦長に冷たくされてアワアワしてるオジサンになっているのが何だか気の毒だった。ほらね?みたいな顔されても…。

それに比べて少ししか出番のないデルタ・チームのムチムチなオジサン(名前あるの…?)なんかは大きな存在感と安心感を残していた。マティスが存命ならば、きっと彼が出てきたのだろう…と思うと尚のこと目が離せない。ジャックをヘリから突き落とすというファインプレーで強引に乗艦させる作戦も見事だった。ヘラヘラしながら去ってゆく姿も粋ではないか。

とにかく最終話の緊迫感と興奮が際立っており、多少退屈ではあっても、そこに向けて静かに展開してゆく物語と徐々に増してゆく緊張感はラストで見事に爆発してくれた。大規模なトンネルの爆発なんてメじゃないぜ!

ミサイル一発で…いや、もっと言えばそのハッチが開いただけで、戦艦が港を立っただけで戦争状態に突入しかねないという事実を充分なリアリティで知らしめてくれるストーリーだったし、権力の虚しさや命令というものの理不尽さ、唯一それに立ち向かえる個人の意思、それでも最終的には闇に葬られてしまう儚さ…。実に味の濃いシーズンだった。

実際にウクライナへと侵攻し今なお先行きの見えない情勢を対岸の火事として眺めることしかできない日本人にとっては、教材ともなり得る話ではないだろうか。少なくとも私にとってはそうだった。

ところでシーズン1で唐突に脱いだ上でジャックの妻ともなりえたあの女性はどうなったのだろうか。無かったことになったの?

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