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3歳児のゲシュタルト崩壊

登園の準備をしている子供達(5歳と3歳)が楽しそうに会話をしていた。会話の内容はよくわからなかったが、上の子が発した「たからばこ」という単語が耳に残ったのだろう。下の子はそれを「タカラボコ」みたいな感じで復唱した。

上の子はそれを気にも留めずに話を続けていたが、下の子はその単語を正しく発声できていないと感じたのだろう。上の子の話はそっちのけで(子供達の会話は大体一方通行だ)、自分なりにキャリブレーションして「タカロボコ…」と呟いた。そのあたりで本人なりに納得いったのだろう。「タカボロコ」なる、最初よりもズレた着地点で会話を続けていた。

面白いので本人たちの邪魔をしないよう黙って聴いていた私は、取り敢えず1日頑張るための活力を得ることができた。


このような現象のことを「ゲシュタルト崩壊」というのだと思っていたが、実は少し違うらしい。

《「ゲシュタルト」は形態・姿の意》全体性が失われ、各部分に切り離された状態で認識されるようになる現象。→ゲシュタルト

[補説]文字の認識などでも見られる。例えば、一つの漢字を注視しているとパーツごとにばらけて見え始め、ひとかたまりの文字として認識することが難しくなったり、よく知っているはずの文字の形に疑問をもち始めたりするなど。

出典:デジタル大辞泉

似たような現象ではあるものの、「ゲシュタルト崩壊」は主に視覚的な認識の変化についてのものであり、広く言えば今回のケースも当てはまるものの、厳密には異なるようだ。

では3歳児が発した「タカボロコ」は一体何なのか。「タカボロコ現象」で良いのだろうか。当然良くない。調べてみれば「音位転倒」または「音位転換」というのが相応しいようだ。

一つの語の中の音素が入れ替わる現象。音位転換。メタテシス。

[補説]幼児が「とうもろこし」を「とうもころし」とする誤りなどにみられるが、「あらたし」から「あたらし(あたらしい)」のように、変化した語が定着する例もある。

出典:デジタル大辞泉

調べても曖昧にしか理解できなかったものの、「ゲシュタルト崩壊」については多少詳しくなれたし、これまで単に「いいまちがい」としか言えなかった現象については正しく認識することができた。

1日の活力に加え、知的好奇心と知識、そしてnoteのネタをもたらしてくれた我が子には、きちんと感謝しなくてはならない。少なくとも肩車くらいはしてあげよう。

3歳児が発した5文字の単語は、父にとっての「タカボロコ」だった。

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