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伊藤園の決算内容を3分で解説!

今回は伊藤園の決算内容について見ていきましょう。
代表商品の「お~いお茶」の累計販売本数が400億本を突破するなど、根強いファンに支えられています。決算内容はどうでしょうか?

1.PLの状況

まず最初はPLの状況について見ていきましょう。
売上高は前年比+7.7%の4,316億円の増収となりました。
営業利益は前年比+4.2%の195億円、当期純利益は△0.3%の128億円と営業利益ベースでは増益、当期純利益ベースでは減益となりました。

特別損失の固定資産除却損や減損損失などで6億円の損失が計上された影響で、当期純利益ベースではマイナスとなりましたが、本業の営業利益ベースでは小幅ながら成長を示しています。

出所:決算説明資料

ではセグメント情報にも触れながらもう少し詳細を見ていきましょう。

セグメントとしては2つ「リーフ・ドリンク関連事業」「飲食関連事業」があります。
事業の規模感としては「リーフ・ドリンク関連事業」が売上高・営業利益共に全体の約9割を占めています。

出所:決算短信

「リーフ・ドリンク関連事業」について見ていくにあたりまずは国内飲料市場の動向を見てみましょう。

2022年度の国内飲料市場の市場規模は3兆5千億円でした。
また市場のピークは2015年度の3兆6千億円で、そこからコロナ禍などの影響で一旦市場は落ち込みました。
その後徐々に市場は回復傾向にあり、2023年度市場見通しとしては3兆7千億円と2015年のピークを上回る数値となります。

出所:決算説明資料

また市場の中の商品構成としては、近年の傾向志向の高まりもあり2020年度以降は「無糖飲料」が全体の50%以上を占めています。
伊藤園の主力商品「お~いお茶」はもちろんこの無糖飲料のカテゴリーに入りますので、市場動向が追い風になっている側面があります。

では次に緑茶飲料の動向について見てみましょう。
現在の市場規模としては2005年に4,470億円とピークを迎え、その後は大きな増減はなく4,000億円前後を推移しています。
2023年度の見通しでは2005年のピークを抜いて4,570億円の見込みです。

また伊藤園の市場に占めるシェアとしては35%前後で推移しています。
2022年度実績では35%でしたが、2023年度も同率のシェアの見込みです。

出所:決算説明資料

今後の緑茶飲料市場での戦略としていくつかありますが、外せない戦略に「若者世代へ新提案」があります。
これは若者世代をターゲットにした新商品を開発・販売する試みです。
また新商品だけではなく、若者向けの各種イベンを開催することで「若者と緑茶の接点強化」を図る計画です。
ここで若者世代を確かに顧客に組み込むことができれば、今後の成長への大きな布石となります。

出所:決算説明資料

その他の戦略に「緑茶リーフ市場の商機」があります。
これは緑茶リーフ市場で伊藤園のシェアを伸ばすための施策として「簡便性リーフ商品」を伸ばしていこうと試みです。
緑茶市場の中で簡便性リーフ商品の割合がどんどん伸びています。
2009年は全体の15%程度でしたが、2022年はその場合以上の37%まで伸びています。
その簡便性リーフ商品の中でも「高価格帯商品」が伸びており、この商品をマイボトルで飲むことでエコも意識した消費行動へ繋がっています。

またティーバッグ製品の需要増に対応するために、埼玉県熊谷市にティーバッグ包装工場を新設予定です。
2023年10月稼働予定で建設を進めている段階です。

出所:決算説明資料

飲食関連事業に関しても少し触れておきましょう。
この事業の主役は「タリーズコーヒージャパン」です。
店舗数は着実に増加していて、2022年度は6店舗増加して766店舗までになりました。
また2023年度は更に+20店舗出店する計画を立てています。
ただ単純に店舗を増やすだけではなく「新しい店舗形態」を展開する予定です。それは「スタンドタイプ」のタリーズコーヒーです。
スタンドタイプにすることで、座椅子などの店舗備品も少なく抑えることができる点やお客の回転数も上げることができる点など、店舗運営の効率化を図ることができる利点が考えられます。

このような新たな試みにチャレンジすることで「タリーズのブランド価値向上」を目指していく計画です。

出所:決算説明資料

では2024年4月期の計画についても少し触れておきましょう。
売上高は前年比+1.9%の4,400億円、営業利益は+7.2%の210億円と増収増益の見通しです。
先ほど触れた各種の新たな試みが成果として表れるとこの計画値は確実に達成できるのではないでしょうか。

出所:決算説明資料

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。
総資産全体としては前年末から+104億円増加しました。

出所:決算説明資料

流動資産は+111億円増加しましたが、そのうち現預金で+76億円の増加が見られました。この点に関しては後のCFの状況で触れていきます。
あと売掛金と棚卸資産等で+55億円の増加がありました。

固定資産に関しては△7億円減少しました。
72億円程度の設備投資がありましたが、一方で減価償却費75億円が計上されましたので、固定資産全体としては減少要因となります。
リース資産に関しては途中解約した資産もあり、△21億円減少しました。

負債に関しては流動負債で+124億円増加しましたが、固定負債は△111億円減少したので負債全体では+13億円増加となりました。
流動負債の増加は、未払費用で+25億円の増加や賞与引当金で+7億円の増加が主な要因です。
あと前年は固定負債に分類されていた社債100億円の償還期限が1年未満となったため、今回は流動負債に分類されました。

出所:決算短信

純資産に関しては剰余金の配当で△51億円減少がありましたが、当期純利益+128億円がありましたので、総額としては+91億円の増加となりました。

出所:決算短信

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。
CF全体としては前年末から+64億円増加しました。
内訳としては営業CFで+237億円、投資CFで△86億円、財務CF△91億円という内容です。
また過去4年間のフリーCFの推移を見てみると、営業CFで常に200億円稼いでおり、投資CFは△100億円以内で推移しているのでフリーCFとしては常に100億円以上プラスとなっています。

出所:決算説明資料

今回のCFは、営業CFと投資CFは前年とほぼ同水準で推移しました。
財務CFに関しても、リース債務の支払いや配当金支払いなどは前年並の金額でした。
長期借入金返済に関しては、前年は返済期限が到来した借入金が多く△234億円の支出がありましたが、今回は長期借入金の返済が△14億円と少なめだったため支出が抑えられました。

出所:決算短信

全体的には良くも悪くも大きな変化がないためCFの状態としては安定しています。フリーCFが常に100億円以上プラスであるので、もう少しこのキャッシュを将来の成長投資など有効に使えれば良いのではないかと考えます。

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?

マサキタカオ

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