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メルカリ決算 希望と不安が入り混じり

メルカリの決算発表がありました。
「勝負の年」として望んだFY2020決算。
その結果はいかに?

1.決算概要

まずは決算概要からみていきましょう。

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売上高は762億円(YoY+48%)、営業利益は-193億円(YoY-71億円)となりました。
成長のために積極的に投資をした結果、狙いどおり売上高は大幅増で過去最高。
一方営業利益は赤字のままでした。

ただこの数値は通期の数値です。
これを直近4Qのみの数値でみてみると黒字化を達成しています。

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この黒字化の要因をもう少し深掘りしてみましょう。
下のスライドは黒字化の要因を表したものですが、注目すべきは「広告宣伝費の削片」です。

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メルカリは「成長を最優先とした投資」をこれまで継続してきました。
ただこの4-6月は新型コロナによる緊急事態宣言発令などで先行きが不透明なため、投資抑制・広告宣伝費等を一時的に削減しました。
その結果黒字化になったということです。

これは裏を返せば「投資を抑制すればいつでも黒字化できる」ということです。
今回の4Qの数値でメルカリの隠れ黒字体質が見えたのではないでしょうか。

2.メルカリJP

次に個別の事業別についてみていきましょう。

メルカリの事業は3つ「メルカリJP・メルペイ・メルカリUS」があります。
まずはこの3つの中での中心的柱となっているメルカリJPからみていきます。

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GMV(流通総額)はYoYで+28%の6,259億円となっています。
またMAU(月間アクティブユーザー)もYoYで+28%と大幅に増加しています。

ここ4年間の増加率をみてみるとGMVは+270%、MAUは200%となっており成長を最優先にして投資を継続している効果が見て取れます。

調整後営業利益に関しても着実に増加していて、YoYで+32%の185億円となりました。この事業で稼いだキャッシュで投資を進めている状況です。

またメルカリでの購入者より出品者の増加に目を向けた施策に取り組んでいます。
売ることのハードル下げると言いますか「売ることを空気に」というキャッチフレーズで取り組んでいます。

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具体的な施策としては「メルカリ教室」「つつメルすぽっと」「オリジナル梱包資材の販売」があります。

メルカリ教室は全国50箇所・業務提携しているドコモショップ34店舗で実施しています。ここではメルカリの使い方を学べて参加者の約8割が受講後7日以内にメルカリで出品を経験しています。
まさにメルカリの狙いとおりの結果となっています。

つつメルすぽっとは一部の郵便局内に無償梱包資材を備えた梱包コーナーを設けて、出品することへのハードルを低くできるようにしています。
ただこのサービスは2020年3月末をもって終了となりました。
もともと期間限定でのサービスで多くの人にメルカリで出品する体験をしてもらうことが目的だったので、その狙いは果たせたということではないでしょうか。

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オリジナル梱包資材の販売に関しては大手コンビニ3社の約3万店舗でメルカリのオリジナル梱包資材の販売を開始しました。
このサービスはメルカリのコンビニでの宣伝効果も兼ねているので、メルカリとしては一石二鳥の効果でしょう。

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3.メルペイ

次はメルペイについてみていきましょう。

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メルペイの利用者数は700万人を突破しており前年度の200万人から大幅に利用者数を伸ばしました。
これには2020年2月のオリガミペイの買収による利用者の統合分も含まれているものと考えられます。

このオリガミペイ買収によって地方の信用金庫とのネットワークを手に入れ、地方での利用者数増加への足掛かりにできるかがポイントになると思います。

メルペイにとってこのFY2020はメルカリとのシナジーに注力するフェーズとされていました。経緯はどうあれ実際の利用者数自体は大幅に増加しました。
これからの収益化に向けたフェーズの土台作りは進んだのではないかと思います。

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4.メルカリUS

次はメルカリUSについてみていきましょう。

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GMVは$681M (YoY+88%)、MAUは420万人超(YoY+112%)で過去最高となりました。目標としていた$100M GMV /月も達成できたので、先行投資を継続してきた成果が現れてきたものと考えられます。

メルカリUSの成長が現れなければ今後の事業打ち切りも検討されたかもしれませんが、今回の結果を受けて今後の収益化への道筋が見えたきたことで事業継続の決定がされたようです。

5.BSの不安

これまではメルカリの事業内容をもとに成長状況などをみてきました。
ここではその事業を続けてきた結果のBSの状況をみてみましょう。

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このBS、結構ヤバイです。
何かがヤバイかというと債務超過の危険があることです。

FY2020末時点での純資産合計は353億円です。
一方これまで赤字続きだったため利益剰余金は-518億円となっています。
FY2020の当期純損失は227億円だったので、このペースで後2年赤字が続くと債務超過になる計算です。

もちろんそんなことはメルカリもわかっていることで、そのために各事業の収益状況改善に向けて色々な施策をしていることだと思います。

ただその成果がこれからの2年以内に出て且つ通期で黒字化に辿り着けるかと言えば少し厳しいかもしれません。

そうなると債務超過を避けるために何か手を打つ必要が出てきます。
手としては増資かDES(債務と株式の交換)が考えられます。
債務超過の危険に直面した時はおそらく増資の道を選ぶのではないかと思います。

各事業の収益状況は上向いているけど黒字化が間に合わないために増資するような場合はメルカリ株の買いチャンスかもしれません。

6.メルカリ今後の成長と第4の事業

最後にメルカリの今後の成長についてみていきます。

これまでみてきたようにメルカリには3事業あって黒字化している事業はメルカリJPの1事業のみです。
現状ではこのメルカリJPで稼いだキャッシュを他の事業の成長につぎ込んでいる状況です。

正直なところメルペイでは大きな黒字は見込めないかと思います。
良くてプラマイゼロくらいを考えているのではないでしょうか。

そうなると今後の成長のカギを握るのはやはりメルカリUSでしょう。
実際にFY2021の事業方針としてGMVのYoYの成長率を50%以上と考えているようです。

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この目標が達成できれば単体事業での黒字化も達成できるかもしれません。
そうなれば債務超過の危険も回避できそうです。
この1年はUS注力の年になりそうです。

あと少し先を見据えた話をすると、将来的にはメルカリは第4の事業としてEC事業へ参入するのではないかと考えています。

タイミング的にはUS事業が黒字化してメルカリ全体でキャッシュを稼ぐ力がついた頃ではないかと思います。

というのもフリマ事業だけではどうしても市場のパイは限られてきます。
その点EC事業であれば確かに競合は多いですが市場の大きさは桁違いです。
またメルカリはすでにメルペイという決済機能を備えているのでECでの支払いに関しても問題ないでしょう。

「メルカリで出品・売上金獲得→ECでお買い物→メルペイで決済」
という流れにユーザーを誘導できればかなり面白くなりそうです。

メルカリの将来が楽しみです。

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