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アスクル過去最高売上から見える今後の戦略

事業会社に勤めた方であればきっと何度かお世話になったことがあるアスクル。
その2020年5月期決算が発表されました。
売上高は過去最高の4000億円超えとなり何だか調子がいいみたいです。
その好調の原因や今後の戦略などについて見ていきたいと思います。

【決算概要】

ではまずは決算の概要から見ていきましょう。

売上高は4003億円で前年度比+129億円(+3.3%)で過去最高を更新しました。
営業利益も88億円で前年度比+43億円(+95%)となり大幅増益となりました。
この流れで経常利益、当期純利益も大幅増益となりました。

ちなみに当期純利益の補足としては、昨年度は倉庫火災に関して31億円の減損損失を計上しています。
その関係で前年度比では異常な増加幅となっています。

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あとこれは地味にスゴいことなんですが、売上から営業利益までの予想比の精度が抜群に良いです。売上の誤差は0.9%で営業利益に関しては0.2%です。
立案〜予実管理までの社内管理がしっかりしている点が見てとれます。

【セグメント別】

次にセグメント別の状況をみていきます。
セグメントとしては大きく3つあります。
BtoB事業、BtoC事業、ロジスティクス事業他です。

◇BtoB事業

まずはBtoB事業です。
この事業はアスクルの現在の屋台ぶねで売上は全体の約80%を占めています。
営業利益に関しては唯一の黒字事業でまさしくここで稼いでいる状況です。
BtoB様々ですね。

今回の決算では4Qで新型コロナの影響を受けはしましたが、3Qまでの貯金もあり通期としては前年比+4.2%の3290億円となりました。
また営業利益も増加しており前年比+8.7%の154億円という状況です。

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売上が好調な理由は、「オリジナル商品の拡大」と「ロングテール商品の拡大」の2点です。

売上高に占めるオリジナル商品の割合は34%超となっていて高水準です。
これは定期配送サービスの拡大がオリジナル商品の拡大につながったと考えられます。
またロングテール商品も毎年売上を伸ばしていて、現時点で約745万アイテムの品揃えをしています。今後さらに品揃えを強化していくようです。

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◇BtoC事業

次はBtoC事業です。
この事業は今後アスクルの成長のカギを握る重要な事業です。

個人向けサービスLOHACOが中心で現在はヤフーと業務提携しています。
ただ昨年は両者間でいざこざがあり「業務提携解消」になってもおかしくない状況でした。最終的には和解して今後も連携を強化していくことで方針が定まったようです。前置きが長くなりましたが今回の決算状況を見ていきましょう。

やはり新型コロナの影響が大きく売上高は633億円となり前年比△19億円(△3%)となりました。
また営業利益は依然として赤字ですが大幅に改善して△62億円となり前年比+29億円となりました。

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売上の状況をもう少し見ていきましょう。
新型コロナの影響で受注自体は増加しましたが、急激な物流量の増加となったため、LOHACO本店では3月に一時受注停止措置をとる状況まで至りました。
また在庫商品アイテムの約2割が中国製ということもあり供給が不安定な状況となっていました。
このような状況が影響し「受注はあるけど売上が伸びなかった」という結果につながってしまったと考えられます。

営業利益についても見ていきましょう。
営業利益はマイナス値ながら前年比+29億円と大幅に改善されました。
要因としては「固定費と変動費率の大幅改善」が挙げられます。

固定費に関してはPayPayモール店でのシェア拡大で広告宣伝費・販売促進費を大幅に削減できました。
また今後はヤフーのシステム基盤を活用してサイト運営することで更なる固定費削減を目指しています。

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変動費に関しては「配送バー改定(送料無料になる金額の引上げ)」と「ひと箱eco(対称飲料商品18kgまで送料無料)」の効果が着実に現れて一箱あたりの売上単価が向上しました。
その結果変動比率の改善へとつながりました。

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今後の戦略

最後に今後の戦略について見ていきます。

アスクルが今後さらに大きく成長していくにはやはりBtoC事業が大きなカギを握ると思います。
今はまだ赤字事業ですが、23年5月期までには黒字化を目指しています。
そのためにはヤフーとの提携によてPayPayモール店での売上増加やヤフーのシステム基盤活用による固定削減などが必要になってくると思います。
一時はヤフーとの業務提携も危機を迎えましたが、今はそれを乗り越えて更なる強化に向かっています。

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23年5月期を迎えたとき目標とするBtoC事業が黒字化しているか、非常に楽しみです。

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