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安川電機の決算内容を3分で解説!

今回は安川電機の決算内容について見ていきましょう。
産業用ロボット業界でファナックとともに世界トップ3に入るこの会社、その決算内容はどうでしょうか?


1.PLの状況

まず最初にPLの状況について見ていきましょう。
売上収益は前年比+3.5%の5,757億円と過去最高を更新しました。
営業利益は前年比△3%の662億円、当期純利益は△2.1%の507億円と利益面では減益となりました。

サプライチェーンの混乱により遅れていた生産が正常化し、受注残の消化が進んだことで売上収益を増進し、過去最高を更新しました。
一方利益面では、高騰した原材料費などの価格転嫁やシステムエンジニアリングにおける事業構造改革の進展などがプラスに寄与しましたが、 前年度に一時的に発生した退職年金制度の変更や遊休不動産の売却などに伴うその他の収益がなくなった影響などにより減益となりました。

出所:決算説明資料

ではセグメント別に内容を見ていきましょう。
セグメントとしては3つ、「モーションコントロール」「ロボット」「システムエンジニアリング」があります。
モーションコントロールが売上収益・営業利益ともに一番の稼ぎ頭となっています。

出所:決算説明資料

◇モーションコントロール
売上収益は前年比+3.1%の2,600億円、営業利益は+5.5%の382億円と増収増益となり堅調に推移しました。

ACサーボは半導体・電子部品向けの需要低迷や在庫調整の長期化の影響を受け減収となりましたが、インバータは生産の正常化によりグローバルで売上が拡大しました。
また米国のオイル・ガス関連およびアセアン各国やインドにおけるインフラ関連の需要も堅調に推移し大幅に伸長しました。
地域別の売上収益を見ると、日本国内は26%で他は海外売上収益となっています。特に米州が34%と一番売上収益の大きい地域となっています。

利益面に関しては、価格転嫁による採算性の改善や新製品への切替効果など が上手く進み増益となりました。

出所:決算説明資料

◇ロボット
売上収益は前年比+4.8%の2,347億円、営業利益は△3.7%の251億円と増収減益となりました。

般産業分野において中国では投資が低迷した一方、 欧米で人件費高騰・労働力不足を背景とした生産の 高度化・自動化の投資が底堅く推移しました。また韓国でのEVを中心とした自動車市場における塗装関連の大口案件の売上収益も増収に寄与しました。
地域別の売上収益では中国が27%と一番大きく、その後に欧州・米国、そして日本国内と続いています。

利益面に関しては、価格転嫁の取組みがプラスに寄与しましたが、間接費の増加をカバーしきれず減益となりました。

出所:決算説明資料

◇システムエンジニアリング
売上収益は前年比+8.5%の555億円、営業利益は+119%の56億円と大幅な増益となりました。

太陽光発電用パワーコンディショナや 海外の港湾クレーン関連の販売が堅調に推移し増収となりました。
地域別の売上収益では日本国内が64%を占めており、他の2事業とは真逆の傾向となっています。

利益面に関しては、大型風力発電関連の子会社の株式売却を行うなど、事業構造改革を進めた結果、大幅な増益となりました。

出所:決算説明資料

◇2024年度見通し
では2024年度の見通しに関しても概要を見ておきましょう。
売上収益は前年比+0.8%の5,800億円と微増ながら過去最高を更新する見通しです。
営業利益に関しても+5.7%の700億円と増益の見通しとなります。
半導体・電子部品市場の投資再開や製造業における自動化・省力化投資の回復にともなう需要を的確に捉えることで増収増益となる見通しです。

出所:決算説明資料

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。
資産全体としては前年末から+492億円増加しました。
流動資産では+252億円増加しましたが、そのうち現預金では△19億円の減少がありました。この点に関しては後のCFの状況で見ていきます。
あとは棚卸資産で+256億円の増加がありましたので、これが流動資産の増加の主要因となります。
棚卸資産の増加により「棚卸資産回転月数」が長くなっており良い傾向ではありませんので、この点は注意が必要です。

出所:決算説明資料

非流動資産に関しては+240億円増加しましたが、そのうち有形固定資産で+153億円の増加が見られました。
これは設備投資の金額が前年に比べて+100億円程度増加しているためと考えられます。

出所:決算説明資料

負債に関しては△37億円減少しましたが、そのうち社債・借入金で△51億円の減少が見られました。

出所:決算短信

資本に関しては+529億円増加しましたが、内容としては包括利益の+704億円の増加と剰余金の配当△170億円が主な内容となります。
それ以外で特別大きな動きはありませんでした。

出所:決算短信

では各種指標に関しも記載があるので少し見てみましょう。
財務健全性の指標の一つである「D/Eレシオ(負債÷自己資本)」は目安の1を切って0.24と全く問題ありません。
前年と比較しても、社債・借入金が減少している影響もあり、数値としては良くなっています。

また資本効率の指標であるROEに関しては目安の10%を上回って13.6%なので問題ないレベルではありますが、前年が16.2%だったので数値としては悪くなっています。

出所:決算説明資料

このあたりを意識してか、2024年度の配当金は4円増配して68円/株を予定しているとのことです。

出所:決算説明資料

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。
CF全体としては前年末から△19億円減少しました。
内訳は営業CFで+546億円、投資CFで△293億円、財務CFで△294億円という内容です。

営業CFは税引前利益で+690億円としっかり稼げているので問題ありませんが、BSの状況で触れた棚卸資産の増加影響で△177億円ありますので、この点は注意が必要です。

出所:決算短信

投資CFに関しては有形固定資産への投資で△310億円の支出がありました。
有形固定資産への投資金額前年より100億円程度増加しており、更に2024年は今回より100億円程度増加する計画です。

財務CFに関しては、借入金の返済が進んだことにより減少しています。
ただ今後の投資金額の増加も予定されてるので、追加の資金調達が発生する可能性はあるかと考えます。

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?

マサキタカオ

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