見出し画像

旭化成の決算内容を3分で解説!

今回は旭化成の決算内容について見ていきましょう。
総合科学メーカーとして業界第3位に位置するこの会社、なかなか厳しい決算内容となりました。

1.PLの状況

まず最初にPLの状況について見ていきましょう。

売上高は前年比+10.8%の2兆7,265億円と過去最高を更新しました。
一方営業利益は前年比△36.7%の1,284億円の大幅減益、当期純利益は△913億円と20年ぶりに赤字に転落してしまいました。

出所:決算説明資料

営業利益の減益要因としては、やはり原材料価格の高騰が大きく影響しています。売上原価率を見てみると、昨年の68.7%から+2.9%上昇して71.6%となっています。
この売上原価率の悪化による営業利益への影響額は△791億円と推測されるので、営業利益の悪化要因の大半を占めることになります。

当期純利益に関しては、特別損失2,252億円が大きく影響しています。
この特別損失の内訳で「減損損失1,894億円」があり、これが主な要因となっています。

出所:決算説明資料

では減損損失の内容は何か?という点についてですが、これはPolyporeという連結子会社ののれんと無形固定資産に対する減損損失となります。

Polyporeはバッテリーセパレータ事業に関連しており、今後の環境対応車市場の動向と、それに向けた各事業の事業戦略から将来キャッシュ・フローを算出した結果、減損損失を計上する結論に至りました。

出所:決算短信

自動車業界は「100年に1度の変革期」にあると言われるほど難しい時期に差し掛かっています。
そうなると当然今回の様な減損損失が発生するリスクは高まってきます。

それではセグメント別に詳細を見ていきましょう。
セグメントとしては3つ「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」があります。規模感としては売上高はマテリアルが一番大きな規模です。
営業利益で見てもマテリアルが一番の規模でしたが、今回の決算でマテリアルは大幅な減益となりました。

出所:決算説明資料

◇マテリアル
売上高は前年比+8.8%の1兆3,166億円、営業利益は△61.3%の410億円の増収減益となりました。

円安の為替影響や石化製品市況高騰分を価格転嫁したことにより売上高は増収となりました。
一方営業利益に関しては、原材料・燃料価格の高騰に加えセパレータやエンジニアリング樹脂の販売数量減少や操業度低下したこと、基盤マテリアル事業の交易条件悪化などの要因で大幅な減益となりました。

出所:決算説明資料

全体のPLの状況で触れました「減損損失」に関する事業が「セパレータ事業」で今回の大幅減益の主要因となります。
セパレータ事業失速の要因は、2021年後半からの続いている自動車減産影響や中国の景気後退が主な要因と考えられます。
ただ2023年の見通しては状況は改善して需要は回復してくる見通しです。

出所:決算説明資料

◇住宅
売上高は前年比+9.3%の8,990億円、営業利益は+4.3%の760億円の増収増益となりました。

建築請負部門で物件の大型化・高付加価値化により売上高は堅調に推移しました。また営業利益に関しては、資材価格高騰の影響があったものの売上高の増加がその分をカバーして増益となりました。

出所:決算説明資料

また建設請負部門の受注高・受注戸数に関しては前年比で減少しています。
受注高で前年比△7.5%、受注戸数で△20.5%減少となっています。
ただ2023年は受注高で+10%、受注戸数で+7.1%と改善する見通しです。

出所:決算説明資料

◇ヘルスケア
売上高は前年比+19.5%の4,969億円、営業利益は△19.7%の419億円の増収減益となりました。

医薬・医療事業で主力製品が販売を伸ばした影響で売上高は増収となりました。一方営業利益に関しては、前年の新型コロナ対応による人工呼吸器特需がなくなったことや部材調達難の影響を受けて減益となりました。

出所:決算説明資料

◇2023年業績予想
売上高は前年比+5.1%の2兆8,650億円、営業利益は+24.7%の1,600億円の増収増益の見通しです。
また2022年度では赤字転落となった当期純利益でも1,000億円の黒字を見込んでいます。

出所:決算説明資料

セグメント別に見ても全ての事業で増収増益の見通しとなっています。
2022年度では大ブレーキとなったマテリアルでも、自動車内装材等の需要増加を見込んでおり業績の回復が期待されます。

出所:決算説明資料

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。
総資産全体としては前年末から+1,055億円増加しました。

出所:決算説明資料

流動資産は+1,540億円増加しましたが、そのうち棚卸資産が+1,023億円増加と大部分を占めています。
円安影響や原燃料価格高騰により棚卸資産価格が上昇したことが要因と考えられています。

固定資産に関しては△485億円減少しましたが、そのうちPolyporeの減損計上によるのれん△632億円減少が大きく影響しています。

出所:決算短信

負債に関しては+1,283億円増加しましたが、主な増加要因は有利子負債の増加+1,732億円によるものです。
その中でも長期借入金は+1,556億円と大幅に増加しています。
2022年度の設備投資金額自体は前年比較すると減少していますが、今後の設備投資計画を見据えての長期借入金増加ではないかと推測されます。

出所:決算説明資料

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。

CF全体としては前年末から+47億円増加しました。
内訳としては営業CFで+908億円、投資CFで△2,136億円、財務CFで+1,118億円という内容です。

出所:決算説明資料

営業CFは税引前利益が△619億円とマイナスだったことが大きく影響しています。
投資CFは投資規模がほぼ前年並みの2,000億円程度だったため、フリーCFで
見ると△1,228億円と大きくマイナスとなりました。

財務CFに関しては、BSの状況でも触れたように長期借入金の増加があった影響でプラスとなりました。
また今後の24〜25年にかけて設備投資案件が計画されているので、今後も借入金が増加していく可能性は高いです。

出所:決算説明資料

株主配当に関しては配当性向30〜40%を目安に決定しています。
2022年度は36円/1株となっており、2023年度も先行きが読めない部分が多い中据え置きの36円/1株を予想しています。

出所:決算説明資料

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?

マサキタカオ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?