UUUM財務面の強化が成長のカギか?
数多くの有名YouTuberが所属するUUUMの通期決算が発表されました。
新型コロナの影響もありましたが通期では売上高を順調に伸ばしています。
そんなUUUMの決算資料を見ていきましょう。
決算概要
まずは決算概要です。
売上高は224億円で前年比+27億円(+14%)、また営業利益は10億円で前年比△2億円(△20%)となりました。
増収減益ですね。
ただ粗利ベースで見ると前年比+8億円(+15%)となっていて売上高の増加に比例して増益しています。
しかし販管費が10億円増加したので営業利益ベースで見ると減益になっています。
では販管費はなぜ増えたの?という点ですが、この1年間で従業員数が98名増加したので人件費が約7億円増加しています。
業務委託費や広告宣伝費も増加していますが、やはり人件費増加の影響が一番大きいと考えられます。
UUUMのビジネスモデルって?
では次にUUUMはどうやって稼いでいるの?という点について見ていきます。
UUUMのサービスとしてはアドセンス・広告・クリエイターサポート・自社サービスの4つがあります。
その中で一番の稼ぎ頭はアドセンスで売上全体の約60%を占めています。
一番の稼ぎ頭であるアドセンスについてもう少し見ていきましょう。
アドセンスは所属するYouTuberの動画制作サポートから契約関連まで多岐にわたる面をサポートすることで、YouTuberがGoogleから得る広告収入の20%を受け取るものです。
つまり所属するYouTuberが稼げば稼ぐ程UUUMも稼ぐことができるわけです。
実際に年間動画再生回数は前年の425億回から482億回と約13%増加していて売上高もそれに比例して増加しています。
それにしても年間482億回ってスゴいですよね。1日平均約1.3億回なので日本人全員が1日に1回は動画を視聴していることになります。
またチャンネル数も着実に伸びていて、この1年間で30%以上増加しています。
ちなみにUUUM所属のチャンネルは登録チャンネルTOP10のうち4チャンネルを占めています。
このことからもUUUMの国内における強さがうかがえます。
特別損失の内容
ここからは少しネガティブな内容です。
今回は特別損失が3.7億円計上されていて内訳は以下の3点です。
・本社移転費用 1.2億円
・新型コロナ関連損失 0.4億円
・投資有価証券評価損 2.1億円
本社移転はもともと計画されていたもので、2020年3月23日に東京ミッドタウンへ移転しました。
新型コロナ関連損失は予定していたイベント中止に伴うチケットの払戻し等による損失なので、避けられない部分が大きいと思います。
問題なのは投資有価証券評価損です。
2Qと4Qにそれぞれ約1億円ずつ減損による評価損を計上しています。
決算資料にこれ以上の記載がないので銘柄等の詳細は不明ですが、期末時点の投資有価証券の簿価が5億円なので、インパクトは決して小さくありません。
株主に対してもう少し詳細な情報開示が必要ではないかな?と思うポイントです。
財務状況
これまで見た内容で売上増加という規模拡大の面ではUUUMは順調に成長していることはわかると思います。
ではその成長を支える財務面はどうなっているか?この点について見ていきます。
期末時点の手許資金は43億円あり月商の2ヶ月ちょいなのでまずまずの水準です。
ただそれは自己資金ではなく借入金によって賄われたものです。
負債の部の内容を見てみましょう。
BSの負債の部にあるように短期借入金と長期借入金が大きく増加しています。
短期で15億円、長期で15億円で合計30億円借入金が増加しています。
短期借入金に関しては三井住友銀行から10億円、みずほ銀行から5億円を当座借越契約で調達しています。
ただここで引っかかる点があります。
三井住友銀行からの10億円の借入金では返済期限が2020年4月30日となっていますが、カッコ書きで(以降更新し、最長2021年2月26日)と記載があります。
ということは実質的には短期借入ではなく長期借入と見た方が適切でしょう。
長期借入金の15億円に関しては決算資料に記載がないので詳細は不明ですが、キャッシュフローを見ると投資活動によるキャッシュフローで約15億円の支出があるのでその分の補填としての借入ではないかと思います。
フリーキャッシュフローもマイナスが続いているので、純粋にキャッシュを稼ぐ力が不足しているのかもしれません。
中期経営計画の実現性
中期経営計画についても見ていきましょう。
UUUMは中期経営計画として3年後の2023年5月期には売上高390億円、営業利益20億円の数値目標を示しています。
今回の決算と比較すると営業利益は倍増となっていて野心的な目標ではありますが、売上拡大に向けて吉本興業と業務提携をするなど準備は進めているようです。
ただ目標達成するためにはアドセンスによる収入だけではなく企業とのタイアップによる広告収入も伸ばしていく必要があると思います。
UUUMもその点は意識しているようで2021年5月期の見通しでは広告収入の増加率を+58%と大きく見込んでいます。
中期経営計画達成のカギを握るのはこの広告収入ではないかと考えます。
おかしな定款変更
今回の株主総会決議事項で英語表記の商号の変更がありました。
お分かりですよね?
本来は「l」とするところを「1」と登録してしまったようです。
アソビゴコロなのか本気で間違えたのか真相はわかりませんが、いずれにしてもなんだかほっこりしますね。
今後の成長のカギ
最後に今後の成長のカギは何か?という点について見ていきます。
今回の決算資料から新型コロナ影響はあったものの売上は着実に増加していることがわかりました。
また今後売上拡大していくために吉本興業との業務提携など戦略的な動きも見せています。
ただいい話ばかりではありません。
大物YouTuberの木下ゆうかさんや他のYouTuberのUUUM退所がここ最近目立ってきました。
そんなこともあってかUUUMとしてもこれまで以上にクリエイターへのサポートを充実させたりクリエイターの活躍の場を多方面にわたって提供できるような動きを考えています。
もしかすると他社との業務提携に留まらずM&Aなどの戦略投資を仕掛けてくるかもしれません。
そうした投資案件を実現するためには「財務面の強化」、ここがUUUMの今後の成長を支えるカギになってくるのではないかと考えています。
UUUMが今後どのように成長していくか、非常に楽しみです。
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