宇宙SF4:廃墟宇宙の果て

第一話

こちらの続きです。

突然の爆発から、命からがら逃げて来た、ユートとヒミカと犬のボス。百年前の伝説の施設を発見し、中に入ることができた。

古ぼけたデスクの上には資料がある。日付は2023年2月9日(木)。

「ねえ、この日って……」
「ああ。あの百年前のあの日だ」

百年前のあの日、ごくごく平和なこの国のごくごく普通のビルディングの群れが、突然謎の宇宙船の群れとなったのだった。

宇宙船は街を破壊した。宇宙船が暴れた場所は、惨劇となった。

市民は驚き逃げ惑い、国は手をこまねいているばかりでついには重要人物は海外へと移動して、なにも手立てのない市民だけが取り残された。

その後、宇宙船は手当り次第の市民を連れ去り、宇宙へと飛び去ったという。

「このビルって、まさか……」
「ああ、まだ、眠っていたんだ。百年の時をずっと眠っているんだ」

「危ないよ、逃げないと」
「逃げるって、何処へさ?」
「それは……」

ワンワン!

愛犬のボスがなにかに吠えた。
「ボス? どうした?」

見ると、ただのキャビネットだ。
「ボス、キャビネットが気になるのかい?」
ワンワン!

とりあえず、キャビネットを眺めてみる。
古ぼけたキャビネット。資料は、何だろう。何かの仕様書のようだけど……?

「大昔は、こんな仕事をしてたんだよね」
と、パラパラめくる。

ユートがキャビネットによりかかると、ギシィと鳴った。

ワンワン!
「あっ!」

キャビネットの隙間から、光が溢れた。二人は顔を見合わせて、頷いた。二人でキャビネットを押してみると。

ギギ、ギシィー!

「あ!!!」
ワンワン!

そこには、光の灯された狭く、天井の高い廊下があった。

ワンワン!

ボスが駆け出した。

「よし、行ってみよう!」
「そうしよう!」

廊下は長く続いた。階段をいくつか上下した。そして廊下の先は、宇宙船のコントロールするらしきスペースへと繋がっていた。

自動で照明がつき、画面が浮かんだ。

それは、ビルディング、宇宙船、宇宙空間、人々、などが映し出されていた。それは、かつて百年前のビルディングの群れの現在の様子であった

「な、なんてこった……!」

なんてこった。ここは、宇宙船というよりも、百年前のあの日の宇宙船の群れをコントロールしていた管制室だったのだ。

「不思議ね。ここにはだあれも、ひとっこひとりいないし……」

ワン!

ボスの方を見ると、一つの画面が砂嵐になっていた。

「何だろう?」

二人と一匹は、砂嵐をじっと見つめていた。

やがて砂嵐の中から、地上の惨劇が映し出された。

「これが、百年前の……」
「違うわ! 見て!」

それは、見慣れた二人の近所の商店街だった。

「ま、まさか……!」
ワンワン!

「助けないと!」
「で、でも。どうしたらいいの……?」
「……」


ワンワン!

「ボス?!」

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