恋愛小説? 消しゴム

恋愛小説? 消しゴム


放課後の廊下で

放課後の廊下は夕方近くの光の色。

校庭の運動部の練習の声。音楽室の吹奏楽部の音。だあれもいない廊下に響く。


上履きの音を少しテンポを遅くして。思い出しているのは、あの休み時間の少し終わりかけた時間。君の消しゴムの転がって、私の足元へ転がってきた謎。

これはきっと拾って手渡すのが優しい振る舞いと気がついたのだけれども。なんで私は出来なかったのだろう。探す君への不親切。

チャイムが鳴って、授業のはじまり、君は席に戻った。消しゴムは私の足元にあるままに。

こんな小さな消しゴムに、こんな大きく気をもってかれて。先生の言葉は空中へ消えてゆく。ノートの文字が黒板の文字を追ったのに、追い付かなくて消されてく。

足元の消しゴム。君の消しゴム。

後で拾ってみたけど、放課後の今の今まで返せなくて。とりあえず、君の机の中に放り込めばいいのかなって、やっと気がついた。


廊下を歩く夕方の雰囲気に、少しドキドキとしているのは、私の気が小さすぎるから。

教室の扉はガラガラといい、夕方の色した窓の景色に、夕方の色した教室に、夕方の色した君の席。机の中にそっと消しゴムを入れて立ち去ってゆこう。どうか、誰にも見られませんように。

君の消しゴムの丸っこい小さいのをポケットから取り出して、サッと机に入れて、立ち去った。

なんでこんなにドキドキしているの。なんでこんなに耳が熱いの。なんでこんなに夕方の教室は美しいの。なんでこんなに。



教室の扉で

放課後の廊下は美しい。学校の一番美しい時間だと思う。

僕の上履きの音が響く放課後の廊下。僕は教室へ向かう。


思うのは、今日の休み時間に転がっていった消しゴム。どこを探しても見つかるはずはなかったんだ。だってそれは、君の足元に転がっていってしまったから。

僕はわざと君にもわかるように、あれ~? ないな~? 消しゴム~? と探していたのに。君は何にも気づかない。ボンヤリとして、何にも気がつかなかったみたいだったんだ。

いつか気づいてくれるかな? って待ってみたんだけど、ね。ま、ダメだったみたいだ。

仕方がないから自分で放課後、君が帰ったあとに取りに来たんだ。そんな自分に苦笑しながら。


教室の扉を開けようとすると、誰かの気配があったから、そっとのぞきこんだ。そうしたら。

夕方の美しくあって、夕方に照らされた君の美しくオドオドとしていて、ついじっとみていたら、僕の机の近くで挙動不審。ドキンッとして。僕は見つめていた。

なんでこんなにドキドキしているんだろう。なんでこんなに耳が熱いんだろう。なんでこんなに夕方の教室は美しいんだろう。なんでこんなに。



転がって

放課後の廊下には夕方の光が訪れて。二人の思いは丸っこい小さい消しゴムのようにコロコロと転がりはじめた。



贈り物

数年後。クリスマス。

クリスマスの贈り物は、もう決まっている。ケーキとチキンを食べよう。その後に、小さな箱を渡そう。君は開けたらきっとびっくりするだろうな。とびきり小さい消しゴムを入れておいたから。それで、思い切り笑いあったあとに、渡そうと思う。とびきり小さい指輪だけどね。



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以上、恋愛小説? 消しゴム でした。

どうもありがとうございました!


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