「新しいものをつくるだけではない考え方に共感した。」 あいだすインタビューNo.1
あいだす久比に関わり、
共に活動している方々にインタビューしていきたいと思います!
今回インタビューさせていただいたのは、
社会全体の"カカワリカタ”を豊かにし、未来を作る『共創型組織開発支援事業』をされている、株式会社Interaction Proの武井章敏さんと、「FINd YOUr COMPASs」という対話の滞在型プログラムを武井さんと運営し、普段はマツダ株式会社でIT部門の人事をされている結城奈津子さんです。
現在、月に一回ペースで久比に訪れ、あいだすの中にある上本邸の一室を拠点としながら、一緒に改修を進めたり、その度にいろんな方を連れてきて下さっています。
「久比に拠点をつくりたい!」という話になったのも「FINd YOUr COMPASs」がきっかけでした!
普段は東京を拠点にされている武井さんですが、なぜ広島市内からも遠く離れたこの大崎下島にわざわざ来られるのでしょうか。
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地域の人たちと関われる、それが豊かな時間だと思う。
武井:元々は会社で働いていたのですが、独立を考え、今まで自分が何をやってきたのかなと振り返った時に、人と人の関わりをよくしてきたなと。
今、いろんなデジタルツールがあり、それを組織の中に組み込んでいっていますが、それだけでは上手く機能しなくて、それを使う人たちが豊かに関わるためには相互関係が大切だと思っています。
デジタルとアナログ(それを使う人のかけあい)が大切。Interaction Proは、そのアナログの部分をやっています。
そうした活動の中で、元々働いていたマツダのある広島にも何か恩返しがしたいと考えるようになりました。ご縁もできてきた中で、市内にオフィスを構えるよりかは大崎下島に拠点をつくりたいと思ったんです。
今は、月に一回仕事に関係のある方や、ソーシャルに関わっている方々とのつながりができる場にしたいと思い、上本邸の一室をお借りしました。
福崎:豊かさの生まれる瞬間や場所ってどんな場所だと思いますか?
武井:喜びや楽しさが豊かさに直結することもありますが、苦労することを感じられることも生きていく上での豊かさなのではないかなと思っていて、そのバランスをとっていくことが大切だと思っています。
日常の中では仕事と私生活があって、私生活の中には自分一人の時間もあると思うし、家族や友人との時間もある。社会とのつながりとバランスが取れていることが一番良いと思いますが、現代社会では難しいですよね。
だからこそ都会の人たちが、月に一回でも自然と触れる時間が大切だと思っています。その中で自分一人の時間も大切だし、知らない人たちに会って「社会」と交わる時間が必要なんじゃないかと思います。あいだすは、そこに来る様々な人たちとつながることができますよね。
あと、ここにいるメンバーが地域の人たちを紹介してくれたりする。それがすごく豊かな時間だと思うんですよね。その土地の人たちとつながれるのが、ここの魅力です。
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このまま廃れていく場所に可能性を見出してくれている若者が、
仕事でくすぶっている自分に火をつけてくれた。
結城:広島に住んでいても、大崎下島は何があるか分からない場所でした。
そんな場所に、東京から移住してこの島を盛り上げようとしてくれる若者がいる。
自分たちよりも先に広島や、この大崎下島の良さを見出してくれているということ、普通だったらこのまま廃れていく場所に可能性を見出してくれていることにすごく感動しました。
自分が仕事などでくすぶっているところに火をつけてくれました。
大橋:実際に活動してみて、印象は何か変わりましたか?
結城:最初はとにかく驚いていて、何かプロジェクトを持ち込まないといけないのかな?と思っていました。でも、プレゼンをしている人もいればのんびりしている人もいたり、自分もここにいていいんだと包み込んでくれる感覚に安心しました。
関わっている中で、会社員とかそういう立ち位置を超えて、新しいことをやろうとしているけどみんな似たようなことで悩んでいるんだなとか、自分たちも共感できることがあって、親近感を感じることがありました。
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豊かな暮らしを取り戻すというのは、
ある意味、余計なものを手放すってことだと思う。
武井:何回か通ってみて、今は拠点を持つことが目的ではなくて、ここに暮らしている人たちと、来る人たちとの関わりが豊かになっていくといいなと思っています。
それまでは拠点を持てばつながりができると思っていたのですが、そうではなかった。拠点を持つこととつながりを持つことは必ずしも同じ意味ではなくて、むしろつながりを持つことに力を使っていきたいですね。
地域の人の家に連れて行ってもらって、このお家の人はこんな人なんですって聞いたりして。つながっていく中で結果として拠点が見つかればいいなと思っています。
大橋:私たちも実際に上本邸を使ってもらうことで、みなさんが来るまでに少しでも変化をもたらしておきたいと思うようになりました。そういった月一で来る方達のことがモチベーションになってその場所の改修が進んだり、片付けができています。
武井:そうですね。泊まってくれた人が、自分で掃除用具などを買って綺麗にして帰ったりしていて。そういうのって嬉しいですよね。
観光のために来て、ご飯を作ってもらうとかシーツを用意してもらうとかではなく、一緒にやる。自分で整えたりする。みんなでお互い協力することが暮らしの豊かさだと思います。
これから来る人が少しずつでも上本邸やあいだすを綺麗にして行ってくれると嬉しいですね。
福崎:今の話を聞いていて思ったのですが、美術作品ってものによっては触れたり、触れられなかったりするじゃないですか。でも観光地って触れているようで実は触れていないんじゃないかなって。
久比は不便で手を加えられるものがあるからこそ、触れられる地域だなと思って聞いていました。眺めるだけじゃない良さがあるなって。
武井:人生50年過ぎると、悩みも解決するものも、手放す必要があるかもしれないって感じることがあります。それって得るのと同じくらい価値があると思うんです。
豊かな暮らしを取り戻すというのは、ある意味余計なものを手放すということだと思います。
「何があるんですか?」とか「何が得られるんですか?」って得ることを考えている人が多いですが、そうではなくて、今あるものを手放したりすることも大切だと思いますね。
結城:家にいると、家事って終わりがないから、気づいたらやりたいことができずに家事で一日終わることもあって。でも久比に来ることで家のことが強制的にできなくなるじゃないですか。
別の場所に行くことで、家にいる間に最低限の家事をすませる。それって今言ってた手放すってことをやってきたんだなって。
武井:結城さんは真面目だからね。笑
結城:10年ぶりくらいに魚を捌いたり、そういうことがあったりするんですよね。普段考えないことを考える機会がうまれたり。
得ることではなく、そこで過ごすこと自体に意味を見出す。ただ行くことが、普段の何かを手放すことになる。そんな人が増えていったら良いなと思います。
ここにあるものでなんとかするという中で、人と関わり合いながらできることをすると、自分もできるんだって、生きる自信が来るたびに紙一枚分くらい増えていく感覚があります。「何もなくても暮らせるじゃん」みたいな。
都会では会社の中でしか生きる術がないって思っている人が、これ得意だったんだとかこれなら役に立てるかもしれないということが見つかる気がしました。
今回子供たちも連れてきて、普段は家の手伝いを全くしないのに、障子の枠から古い障子紙をはがす作業を一緒にして、楽しかった、またやりたいと言っていて。最初のころは「することがない」「つまらない」と言ってたんですが、ここを訪れるたびに、人との関わりの中で彼らなりの過ごし方や楽しみ方を見つけているようです。
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なんもない、でもなんもないのがええんよ。
結城:あいだすに来るきっかけにもなった「FINd YOUr COMPASs」の滞在プログラムには会社員の人がたくさん参加してくれました。
ここにいる人と関わる中で、プログラム以外のところでも参加者の人たちに気づきがあるんじゃないかと思っていました。自分自身に気づきがあったからこそ、ここでやることに意義があると確信していたんです。
武井:最初「FINd YOUr COMPASs」は、広島県の宮島でやろうとしていたんですが、結城さんが「宮島はいつでもいけるけ、そんなところでやらんで大崎下島でやろう!」と言い出して、全く候補になかった大崎下島になったんです。笑
結城:その結果、宮島に行きたかった遠方の人はほとんどキャンセルになりました。笑
でも広島の人は大崎下島の方が珍しかったみたいです。
武井:最初運営メンバーからも「大崎下島に何があるん?」と聞かれたんです。「なんもない、でもなんもないのがええんよ。」って答えて。海があって、そよ風が吹いて、みかんがあってええじゃんそれで。
自分達は他の地域にも拠点があるんですけど、やっぱりきてみないと分からない良さってありますね。あんまり言葉にしない方が良いこともあって、それは説明的になってしまうからだと思います。
結城:そもそも「FINd YOUr COMPASs」を久比でやることになったのは、県庁時代にまめなの理事の方とつながったご縁で、久比に遊びに行ったことがきっかけです。
柑橘を収穫したり、夜ご飯をみんなで囲んでいろんな話をしたり、「なんだここは!」と思いました。そんな体験もあって、宮島でやろうと言われた時に「それはない!」と思ったんです。
暮らしの営みをやっていくという上で、土地やそこにいる人たちとの関わりが重要だと思い、それでピンときたんです。
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自分が主体的になっている感じがする、
何かしてもらおうとか何か得たいとかじゃなくて、自分が何かしたい。
武井:久比のことを知る前に、はじめて車できた時は通り過ぎただけで、何もないねで終わったんですよ。笑
自分は「まずは自然から奪うんじゃなくて、受け取るということを大切にしよう。」と考えていて。ただ、そこにいることで陽がさしたり土の匂いがしたり、猫が歩いて行ったり、おばあちゃんに話しかけられたり、それって自分にとってどういう意味があるんだろうと思うことが大切だと思っています。
6月から定期的に来るようになりましたが、あいだすに来ると、自分が主体的になっている感じがするんですよね。何かしてもらおうとか何か得たいとかではなくて、自分が何かしたいって思うんです。人を呼びたいとか、おばあちゃんと話したいとか。
自分たちが利用している、上本邸をもう少し住み心地よくしたいとか、いろんな人にきてほしいなという思いがあります。自分の息子もきてくれたし。
あいだすにいったことがある人、知っている人が毎回増えていくことがなんか嬉しいですね。
「期待してないけど、何かが起こったりする」なにか起こったら面白いし、楽しみなんです。
これがここに来る理由ですね。
結城:毎回誰か連れてくるだけで、それぞれのタイミングで何かが起こる。ここに来ると何かが開くのかもしれないですね。
大橋:「FINd YOUr COMPASs」に参加してくださった方も、たまたまと言いつつ、一緒に活動してくれている人を連れてきて、久比を案内してくれました。あのプログラムとメンバーとの時間があったから、また人を呼んでくれたんだろうなと思います。
武井:明確なビジネスが起きなくても、ここでインサイトだったり何か気づきがあるということは大事で、そういうことが少しでもあると日常や仕事が上手く行くと思うんですよね。
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何かを変えて行くとか新しいものをつくるだけではなく、あるものを大切にしよう。そんな考え方に共感したんです。
福崎:いろんな場所に行っている武井さんですが、久比に拠点をつくると決めた理由はなんだったんですか?
武井:うーんなんでだろうね。ある意味言葉にならない部分なのかな。
第六感ってすごく大切なものだと思っていて、なぜなら、第六感がひらいているということは、五感がひらいていることだと。
なんだか分からないけど、ここいいなという気持ちです。例えば仕事でも誰かに褒められるからやるとか、儲かるからやるんじゃなくて、やってみたいという感覚でやることって大切じゃないですか。そういうものが久比にはあったんじゃないかと思います。
でもあえて言葉にしてみると、自分の成長に合わせて、お世話になったマツダに恩返しがしたいとか、自然や何かが起こっている場所とこれから関わっていきたいという気持ちがあって、
それだったら別に久比以外でもいいと思われるかもしれないですが、
あいだすの考え方、何かを変えて行くとか新しいものをつくるだけではなく、あるものを大切にしようとか、豊かなくらしを取り戻そうとか、そんな考え方に共感したんですよね。
あとはここにいるメンバーや久比という地域のウェルカムさですね。どこに行っても話しかけられる心地よさ、向かい入れてくれる心地良さがあるんだと思います。
INTERACTION PRO.について
https://www.interaction-pro.co.jp/
FINd YOUr COMPASsについて
https://findyourcompass.me/
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インタビュー:大橋・福崎
編集:大橋
撮影:福崎
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