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【神公演】浅草ロック座2023年6月公演『REBIRTH』 レビュー


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前回はジオラマの出来に興奮してそこばかり早口で語りたいひとになってしまったので、今回は心を落ち着けて公演内容のレビューをしたいと思う。


このnoteでストリップの演目についてあれこれ語るなんてした事がなかったように思うが、黙っていられないほど素晴らしい公演だった。

悲しいことに6月いっぱいまでしか観られないので、マジで騙されたと思って浅草へGO!

問題なのが今公演は30日(金)までなので、土日になったら別の公演に切り替わってしまっていることである……。


1景 橋下まこ 『ハートの女王』

オープニングを飾るのは橋下まこ。演じるのはふしぎの国のアリスに登場したハートの女王だ。過去にも色々な踊り子さんが演じて来た役柄だが、橋下まこバージョンの特徴は "ピーキー"。美しさとヒステリックさが伝わって来て、少しでも機嫌を損ねたら即座にキーーー!となりそうな恐ろしさを醸し出している。

それでいてイタズラっぽい仕草を入れて来たり、指で可愛くハートマークを作ってみたりと、どれがこの子の本性なのか分からないという転がされている感があった。

実は彼女にはあるスポーツ新聞の取材で2019年にインタビューしているのだが、その際に何度もネガティブ発言を繰り返していた。

「私はダンスが下手だから、ベッドショー(花道を進んで来て円形ステージで決めポーズをするパート)をもっと上手にできるようになりたい」とか、「動きがダメな分、衣装をキラキラにして誤魔化してます」とか。

あれから3年半ほど経っているが、同じ人間とは思えないほど動きに緩急を付けられるようになっていて、表現の幅も広がっていて、地道に努力をし続けたんだなと感じ取れる化け方をしていた。

19年の時点では「静と動を繋げるような滑らかな動きがどうしても出来なくて、パキパキ動けるテンションの高い演目の方が誤魔化せて好きなんです」なんて言っていたが、23年の橋下まこはパキパキ動きながらも滑らかで、表情やほんの少しの仕草で客を虜にする踊り子になっておりました。

なんせこの公演の1番バッターを任させれたんだから、それが何よりの評価だと思う。

2景 白鳥すわん 『酒吞童子』

かと思うと続く白鳥すわんの酒吞童子も凄い内容で、最初から圧倒されっぱなし。まずストリップの舞台とは思えぬほど殺陣がしっかりしている。
前半の群舞パートはほぼ切った張ったの殺陣が占めていて、そこからどうベッドショー(脱ぎパート)に繋げるのだろうかと思っていたら、まさかの「お色気要素を排除してまで狂い続ける」という展開に。

実は白鳥さんはまだデビュー間もなく、ストリップデビューは22年6月とちょうど一周年。これまではそのルックスを活かしたカワイイ系の役どころが多かったように思うのだが、いきなりの酒吞童子。しかもそれを見事に化け物として演じ切る白鳥すわんの秘められたポテンシャル。

ベッドショーの時は裸をキレイに見せる、色っぽく見せるのが普通なのだけれども、この酒吞のベッドショーは慟哭とかのたうち回るなんて表現がぴったりで、色っぽく見せようという雰囲気が一切ない(笑)

この表現をやり切れるのは凄いなあ。キャリア1年でこれなら、将来どんな踊り子に化けるんだろうか。


3景 ののか 『銀河鉄道の夜』

3景の銀河鉄道の夜は、絶対に選ばれるだろうなと予想していた演目。ジョバンニとカンパネルラの2人が登場する、ファンタジーかつ儚い内容。

基本はののかの朗読で話が進んで行くのだが、上から音声を被せるのではなく、舞台中を動き回りながらマイクでリアルタイムに声を出すという超絶アナログかつののかの能力に頼り切った手法(笑)

バレエダンサーのように飛んで回って激しく動いているのに、声がブレないというのは、なにか特殊な訓練でも積んでいるのだろうか。

今回の演目の中でも、特に「これは浅草だからこそだ」と思わせる内容で、照明機材と音響、それと踊り子の三位一体にならないと表現できない。ある意味でストリップビギナーが観て一番驚くのがこの景かもしれない。「え?ストリップってこういうのなの?」って。


4景 ゆきな 『狐の嫁入り』

前回もちょっと触れたけれども、デラべっぴんRの記事で取り上げたゆきなちゃんが登場する景。

インタビューで彼女はこの演目を与えられた事に運命を感じると言っていたが、これが見事なハマり役。亜人感ハンパない。
南まゆや徳永しおりの同演目も素晴らしかったが、ゆきなの狐の嫁入りは亜人というか妖しというか、この世ならざる何かという雰囲気があって、それでいてキュートでもあるという良いバランスに仕上がっていた。

気付けば7年目でベテランの域に入りつつあるし、その割に幼く見えるし、この子にはこれから黄金期が来るんだろうなと予感できた。

バックダンサーと最小限の小道具(提灯)だけでこの世界観が生み出せるというのが浅草ロック座ならではといったところ。


5景 桜庭うれあ 『TalkingFlower』

休憩明け一発目は桜庭うれあさんの魅力溢れる純粋なセクシー路線の演目。正直これが最もストリップショーとしてストレートで落ち着けた(笑)。

ウィッグや衣装のせいなのか、海外のショーのイメージが非常に強い反面、昭和の時代のキャバレーショーってこんな感じだったよなと、レトロさも感じさせる。

そうかと思うと浅草ロック座が誇る億単位の予算がかかっていると噂の照明機材が大活躍しており、踊り子が持つ小道具の傘にそれぞれ別の絵が映し出されるなど、この劇場でしか出来ない映像・照明演出がふんだんに盛り込まれている。

で、桜庭さんもだいぶ前にインタビューしたよなあとPCのお仕事フォルダを漁ってみたところ、2019年に東スポの取材をしておりました。そうだそうだ、2016年デビューで3周年公演に合わせてインタビューを申し込んだんだ。

そこで彼女は「シャイ過ぎて郵便配達のひとが来るだけで隠れるような子供だった」と語ってくれたのだけれども、今ではそんな要素など一欠片も見えないほど堂々たる存在。派手な照明にも負けないほど、立っているだけでゴージャスに見える、とにかくモデル力の高い方である。

元々は舞台役者を目指していたというだけあって、仕草や表情でお客さんをドキドキさせる技術に関しては一級品。そもそもが美人さんで、なおかつスレンダーでほどよく筋肉のついた素晴らしい肉体美を持っているのだから、言ってみれば踊り子になるべくしてなったという存在である。おそらく女性ファンも相当多いんじゃないかなあ。


6景 空まこと 『チャップリンの演説』

そしてこの公演で最も「これが選ばれたのか!」と驚きつつ納得もしたのが20年選手である空まこと姐さんの『チャップリンの演説』。このタイトルを聞いてピンと来る方も多いと思うが、名作『独裁者』のあの演説である。

チャップリンが無声を捨ててまで世界に届けた歴史的なメッセージに合わせて空まことが踊り狂うという、今公演の中で最もアーティスティックな演目。

これは猛者の集まる浅草ロック座の中でも特に際立ったダンス職人である空さんだからこその表現。これまた浅草に初めて来たお客さんが驚きそうな内容だけれども、絶対にひとつはこういうアーティスティック枠を混ぜて来るのが浅草の流儀である。

また、ベッドショーに移る際に空さんがまとっていた衣装が、カラフル……というかヒッピーっぽい感じで、反戦ヒッピー全盛期のサイケデザインを思い出させるような言葉にし難い物だった。それも含めてメッセージ色が強い演目だったなあ。

過去には香山蘭さんとか、沢村れいかさんとか、ピンで舞台に立たされても存在感を出せる人がやっていた記憶があるんだけれども、空さんは見事に自分の物にしていた。さすが。


7景 真白希美 『巴』

トリを務めるのは年内引退が発表されているロック座の至宝・真白希美さん。演じるは巴御前。

真白さんというのは実にストイックというか、ロック座の踊り子がどういうものかを体現した存在というか、至宝と呼ばれるに相応しい方である。
何度か取材もさせて頂いているけれど、話をしてみるとお姐さんっぽくもあり、可愛らしくもあり、本当に魅力的な方なのだが、年内引退かあ……。

鞘師やまーちゃんが卒業発表した時のハロオタの皆さんってこんな気持ちだったんだろうかとか、悲しすぎて色々と錯乱してしまう。

さあそんな真白さんの巴御前は凛とした気高さが色々な属性に突き刺さる至極のハマり役。元々バトントワリングをやっていた事もあり、薙刀さばきは圧巻のひとこと。

桜吹雪にまみれながら力強い殺陣を演じたかと思いきや、グルングルン薙刀を回しながらのけぞってみたり、このひとにしか作れないシーンが次から次へと。

そして何より、実は真白さん自身がこの巴御前役に対して並々ならぬ想いを持っていた事を知っていたので、感慨もひとしおだった。
2019年に東スポのWEB記事の取材でインタビューしたのだが、そこで彼女はこんな事を言っていたのだ。

過去の公演でもう一度やりたいなとか、思い出深いものはありますか?

「浅草でやった薙刀の演目が印象深いです。2017年5月の『秘すれば花』という公演で巴御前をやらせていただいたんですが、その時は1年くらい浅草に上がる機会がなかった時期で、久しぶりの浅草だった事もあって強く記憶に残っています」


ストリップをやっていて一番嬉しい時ってどんな時でしょう?

「これは毎公演の事なんですが、やはり自分の演目を評価して貰えると嬉しいです。あの時のあの演目が良かったとか、観に来て良かったとか、あの役はアナタにしか出来ないとか、お客様の評価を聞くとストリップを続けてて良かったなと思います。浅草では与えられた役を悩みながら作り込んで行きますし、川崎や横浜などではセルフプロデュースで衣装から内容から演目を作り込みますし、そういう苦労が報われるのはお客様が喜んでくださった時です」

今回の公演を観た人間ならみんな同じことを言うと思うけれども、間違いなく「あの巴御前は真白希美にしか出来ない」。美人でスタイルが良くてダンスが上手という踊り子はロック座に何人もいるけれども、あの気高いオーラをまとえる人間となるとなあ……。

真白さんってキレイもカワイイもカッコイイも切ないも、場合によっては怖いも、何から何まで踊り子として全部持ってるひとだと思うの。どんなに難しそうな役どころでも、とりあえず真白希美にやらせてみると何とかなる的な、いわゆる絶対的エースだった。

いやあ惜しい。切ない。
真白さんのステージがあと半年しか観られないだなんて。

ちなみにこれは真白さんが言っている何年か前の「秘すれば花」の中の巴御前。ストリップである以上最後は裸になるのに、こういう衣装や小道具を作ってしまうのが浅草ロック座である。

真白さんが後何回ロック座に上がってくれるか分からないけれども、また浅草で「これぞ真白希美」というハマり役を観たいなあ。


フィナーレ

浅草の公演である意味で最も大事なのがフィナーレだと思う。ここで華やかに盛り上がって終わるというのが、昭和の時代からのショー劇場のお約束である。

が、今は群舞でワ~っと踊れる劇場が激減してしまったので、ストリップ劇場でこういう豪華なフィナーレがやれるのは浅草くらいしかない気がする。

踊り子さん総出演でタンバリンを叩きまくってフィニッシュ。パっと明かりがついて、非日常から日常へ戻されるも、ロック座は一度入場してしまえば何度でも何時間でも公演を観ていられるので、そのまま休憩時間を挟んで次の回を1景から見直すなんてことも可。

あまりに完成度の高い公演だったので、思わずまた橋下さんのハートの女王からリピートしてやろうかと思った……が、家族のためにご飯を作らねばならないので泣く泣く帰宅。

やはり千穐楽が近付いて踊り子さん達もそれぞれ役が板に付いて来ているので、前回観た時よりも数段レベルが上がっていた。

6月30日までなのでチャンスはもう残り少ないけど、ストリップに興味があるなら是非この公演は観て欲しいなあ。

通常料金だと6,000円するけれども、シニア・学生・女性だと4,000円。男性でも20時以降(最終回のみの観覧)だと4,000円になるので、浅草飲みのついでにぜひどうぞ。


浅草ロック座2023年6月公演『REBIRTH』
6/11~6/30まで

[店名] 浅草ロック座
[所在地] 東京都台東区浅草2-10-12
[TEL] 03-3844-0693
[営業時間] 
一回目公演 : 14:00 - 15:50
二回目公演 : 16:10 - 18:00
三回目公演 : 18:20 - 20:10
四回目公演 : 20:30 - 22:20
[定休日] 大晦日のみ


※ 本文ここまで
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