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最も力が入っているポイントが「萌え絵潰し」という意味不明な大阪・男女共同参画ガイドライン

大阪府の男女共同参画ガイドラインが激アツ

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今年3月に作られた大阪府の『男女共同参画社会の実現をめざす表現ガイドライン』が今になって発掘され、そのあまりと言えばあまりな内容に注目が集まっている。

『大阪府・男女共同参画社会の実現をめざす表現ガイドライン』原文
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/29145/00387499/guideline.pdf
※pdfファイルが開きます

これは 「大阪府がPR活動する上でのガイドライン」 という事なので、pdf中にもあるように民間企業などに強制力を持つ物ではない。

だが、大阪府の名前でこれを出したという事は、大阪府としてはこう考えているという圧力にはなり得る。またフェミ団体などが「大阪ではこうだ!」と、錦の御旗にする事も考えられる。

この行政による圧力はバカにならず、例えるならば東京都などが度々発している飲食店への時短営業の要請だとか、酒の提供の禁止だとかも、突き詰めれば圧力である。法的にそれをやったら違法だ逮捕だという話ではないのに、何故か言う事を聞かねば村八分にされてしまう。
こうした忖度や魔女狩り(言い方を変えると民衆の分断)を巻き起こすのが、行政による圧力の恐ろしさだ。

「あくまでガイドラインだから」と言いつつも、そんな強制力のないフワフワしたものがどれだけ怖いか、我々はコロナ禍で嫌というほど学んだはず。

では、そんな危険を孕んだガイドラインの内容がいかなるものかチェックしてみよう。

男女共同参画と萌え絵潰しって関係あるのか?

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https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/29145/00387499/guideline.pdf

心を無にしてこのガイドラインを読んでみたところ、最初に抱いた感想は「無難にまとまっている」だった。間違っても完璧な物だとは言わないけれども、過去に世に出た数々の "この手の物件" の酷さと比べると、まだ自制が効いている。必死に「男女差を無くそう」という主張で統一しようとした努力が見られ、中々頑張ったなと感じてしまったのだ。

しかし、それでもやはり「それはねえよ」というチャームポイントを残すのが大阪人の芸人根性である。裏でどんな思想の人間が大暴れしたのかバレバレだ。

『萌え絵を狙い撃ちしている事の違和感』

全てはこれな。

そもそも、このガイドラインに書かれている「男女差が出ないように」だとか「言葉の言い換え」に関しては、現時点ですでにある程度達成し終えている案件だ。言うなれば "過去形" である。

人によっては、こうした配慮をつまらない言葉狩りだと切って捨てたくなるかもしれないが、私は「○○婦」だとか「○○マン」といった名称からして性別を固定するような言い方は、可能ならば避けた方がいいだろうと思う。

こうした時代に合わせた言葉の使い方を「長く使ってきた言葉だから」で頑なになるのは、人としての進化を否定するも同じだ(大げさだけど本気で言ってます)。文句があるなら独りで勝手に平安時代辺りの言語で喋っとけ。

だがしかし、このガイドラインにはそんな思想を持つ私ですら猛烈な違和感を感じる箇所がある。それが一箇所だけ妙に浮いている「萌え絵潰し」だ。

他は悪く言えば「いまさら」な、良く言えば「すでに世間に根付きつつある」事柄について書かれているのに、なぜその中にシレっと萌え絵潰しなんていう「ごく一部の人間の偏った価値観を押し付けるような項目」が紛れ込んでいるのだろうか。

私はこれを見て「ああ、このガイドラインの主目的はココなんだな」と受け取った。先にも書いたように、他は過去形で語っても違和感のない内容なのに、その中にどうして萌え絵潰しなんていう現在進行系かつ世間から白い目で見られ始めている「失敗事案」が紛れ込んでいるのか。

結論を申し上げると、性別の固定やイメージの押し付けといった部分は刺身のツマみたいなもので、このガイドラインは「萌え絵の使用に対して圧力をかけたい」という目的のために作られたのである(断定してみる)。

その主目的を、さも「そうしなければいけないかのように偽装するため」に、それ以外の言葉の言い換えだとか、表現方法に関する気遣いなど、達成済のご尤もな事案と並べているのだ。

早い話が、萌え絵潰しの前後にあるそれ以外の文面は、全て「萌え絵潰しにかかるバフ」なのである。

そう考えると、このガイドラインの構成に納得が行く。そういう目的があるなら、確かにこういう工作をするしかないわな。

「男女差を無くそう」なんて心にもない建前を入れなきゃいいのに……

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さて、このガイドラインの主目的が分かったところで次に進もう。実はこのガイドラインには、まだまだ問題点が隠れている。

その最たる物は、度々出て来る「男であっても同様だ」といった注釈だ。この一文は、おそらく女性についてだけツベコベ言っていると「男女平等じゃねえだろ」とツッコミが入るので、それを回避するために入れた言い訳だと思うのだが、この一言のせいで余計に酷い話になってしまっている。

例えば萌え絵潰しの項目にはこうある。

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/29145/00387499/guideline.pdf
※pdfの8ページ目

女性を描くときは外見(若さや性的側面など)のみを切り離さずに、人格を持った多様な姿で描くようにしましょう。安易に女性をアイキャッチャー(※)として起用するのではなく、「伝えたい内容が何か」を考え、広報内容にあった表現方法を心がけましょう。これらのことは、男性の起用に関しても同じことが言えます。
※アイキャッチャー・・・広告に注目させるための視覚的要素のこと。広告手法のひとつ

女性の若さや性的側面をアイキャッチに使ってはいけないとの事なのだが、男性も同様との事なので、男性が持つ特徴を抜き出す描写もまかりならんのだそうだ。

これにより、タレントを起用して「交通安全!」なんてPRをする事はほぼ不可能になる。街を歩いていると、交通安全のPRポスターに女性タレントが使われている場面をよく見かける。少し前にはももクロが、最近では生見愛瑠が使われているが、このガイドラインで言えばそれらは厳禁という事になる。何故なら、ももクロもめるるも交通安全に何の関係性もないからだ。

また、これは男女の差はないそうなので、男性タレントもよっぽどの理由がない限り、この手のポスターには起用できなくなる。


しかも、この萌え絵潰しの項目にはまだまだおかしな点がある。これまで散々「萌え絵潰し」と表現しておいて、何故めるるやももクロの話になるのか自分でも不思議なのだが、それはこのガイドラインの文面自体が二次元を指すのか三次元を指すのか不明だからだ。

具体的に指摘すると……

・女性を描くときは
・男性の起用に関しても

冒頭のこの2箇所がすでにおかしい。「描く」というのは、この場合はイラストなどを指すと思われる。すぐ下にある萌え絵風のイラストに✕が付いている事からも、これは絵の話なんだなと解釈するはず。

だが、その下の「男性の起用」という点については、これは実在するタレントを指す言葉ではないだろうか。絵師にイラストを発注するのに「起用」とは言わんだろう。

また、ガイドラインの同じページの下部がトドメを刺している。

『PR動画やポスターなどの「炎上」』という枠の中で「体の線や胸などが強調された描写(いわゆる「萌えキャラ」)と、名指しで萌えキャラが非難されているのである。

タレントの起用について文句を言いたいのか、それとも萌え絵を叩きたいのか、何だかもう話が捻れまくっていて理解できないのだ。伝わって来るのは「何かお気に召さないらしい」という事だけである。

このように、大阪府が言い訳がましく「男も対象です」と付け加えてしまったがために、性別のあるキャラクターのイラストや、広義に捉えればタレントの起用も出来なくなるのだが、今後大阪で許されるのは風景写真や動物の写真だけになるだろう。

こんないい加減なガイドラインに沿って内容を判断するなんて不可能だから、だったら最初から犬猫を載せとけとか、海や山や花の写真にしとけという話になってしまう。

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もう大阪府のPRポスターは全部Nice boat.でいいわ。

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