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YouTuber ヒカルはなぜTVに出られないのか。
YouTuberとして活躍するヒカルのYouTubeチャンネル登録数が400万人を突破しました。
400万人以上のチャンネル登録者数を有するYouTuberは日本においては、10名程度しかおらず、グループではなく、ソロで活動するYouTuberとしては、まさにトップYouTuberの一人といっても過言では無いでしょう。100万回再生越えの動画を次々と量産しています。
彼の名前を聞いたことがなくても、お祭りの屋台で販売しているくじでアタリが出るまで引いてみた動画はどこかで見たことがあるのではないでしょうか?
現時点で4,200万回再生以上を記録しているこの動画は、ヒカルの代表作となり、一気に人気YouTuberの仲間入りを果たしました。
ビッグマウス、金にモノを言わせた過激な言動、そして、2017年に巻き起こしたVALU騒動による活動休止。炎上系YouTuberというイメージがあるのではないでしょうか。実際、僕自身もそうでした。
しかし、ここ最近彼の取り組みを見て衝撃を受けました。これまでのヒカルから2年半の時を経て、大きく進化していました。まるで執念のような鉄の意志を持って彼は、新しいチャレンジに取り組んでいます。
一方で、ヒカキンやはじめしゃちょーと異なり、彼は地上波テレビにほとんど出演していません。国内でトップの人気を誇るYouTuberにも関わらず、なぜ、彼はテレビに出られないのか。本記事では、ヒカルが復活を遂げるためにとった戦略、そして、テレビに出られない理由をテレビ局の目線も加えながら、考察していきます。
過激系YouTuberから脱却したヒカル
過激な動画で話題を集めたヒカルは、元々、ゲーム実況系YouTuberです。2013年に「ヒカルGames」というゲーム実況チャンネルを立ち上げたヒカルは、ゲーム実況で人気を集めると、今度は「ヒカルチャンネル」をスタートさせ、ヒット動画を連発させます。
ところが2017年8月に「VALU」にまつわる騒動を引き起こし尋常ではないくらいの炎上を経験し、YouTuberとしての活動を一定期間休止。その後、復活を遂げました。
活動再開後、ヒカルは大きなふたつの戦略変更を行います。僕が「変わった」という印象を受けた理由もこの戦略変更によるものです。
ひとつめの戦略が過激派路線からの脱却です。これまでのテキ屋企画をはじめとする「物議を醸し出す炎上動画」の投稿を止め「話題にはなるが炎上しない」動画を生み出すようになりました。
料理動画、自社スタッフとのトーク動画、ヒカルがドッキリを仕掛ける/ドッキリを仕掛けられる動画、YouTuberとのコラボ動画(主にトークやデート企画がメイン)、一ヶ月3,000万円生活などのお金を使った動画 などが主流となっています。
お金を使った企画では、高い寿司を食べていたり、家具を大人買いしたりと、タイトルやコンセプトこそセンセーショナルなものの、内容はクリーンなものばかり。自粛期間中である2020年3〜4月に至っては大金を使った動画もほとんど無く、トークや料理といった日常的な動画が中心となっています。
ヒカル自身は「過激な動画はどんどんリスナーの要求がエスカレートしていき、限度がなくなる」「カロリーが高すぎる」と発言しており、動画制作の効率化と再現性の高い動画を生み出す方向に舵を切ったのでしょう。
また、ラファエルとの対談でも「YouTubeのガイドライン」が年々厳しくなっている、TVと同様にコンプライアンスが求められるようになっていると語っており、YouTubeというプラットフォームの変化にも適応させている形です。
この柔和戦略はもうひとつの戦略と紐付いています。それが、女性ファンの獲得です。
女性ファンの拡大により磐石な人気を獲得
活動休止前と活動再開後の決定的な違いは「女性ファンの獲得」です。これまでヒカルのファン層はゲーム実況出身ということもあり、男性ファンが多い傾向がありました。カードショップ店の「店長」とのコラボ動画や過激派路線は男性が好きなジャンルです。
しかし、ヒカルは、ここから大きく舵を切りました。女性ファン獲得のために、積極的にてんちむやエミリンら人気女性YouTuberとのコラボを展開。現在は活動終了してしまったものの「カルピン」という音楽ユニットを結成し、音楽活動にも挑みました。
音楽活動については、既存ファンからの否定的な意見や当時の所属事務所からの反対などもあったようですが、それでもブレること無く活動を続け、ZeppTokyoでのワンマンライブも実現させました。男性声優・女性声優がアーテイスト活動により絶大な人気を獲得しているように、歌と異性ファン獲得は密接に関係しています。
そして、決定的に違うのがルックスの変化です。髪の毛、スキンケア、歯に至るまで、ヒカルは徹底的に美容にお金と時間を投資しています。
月にどれくらい美容に投資しいてるか、については、こちらの動画で詳しく本人が解説しています。
もともと肌が弱いヒカルだが数年にわたり肌の治療やスキンケアに取り組みむだけではなく、専属のヘアメイクとも契約しました。劇的に変化したルックスは、活動休止前の彼とはまるで別人。同性から見ても格好良いなと思います。女性ファンが増えるのは必然でしょう。
彼が、女性ファンを増やす理由は、単に「チヤホヤされたい」ではありません。YouTuberとして日本一になるためには、男性ファンだけでは限界があると判断したのです。
ヒカルいわく、男性ファンは、動画の内容やジャンルによって「見る/見ない」がハッキリしており、簡単に離れてしまうというのです。ヒカルが出ているから、という理由では見てくれない人が多いです。
しかし、女性に自分の「ファン」になってもらえれば動画の内容に左右されることなく、ヒカルの姿を見るために毎回毎回視聴してくれる。この土台が上に行くためには欠かせないのだといいます。
逆に言うと見たいジャンルであれば、再び戻って来るのが男性ファン。これまでの動画で男性ファンの獲得ノウハウを十分に貯めてきたので、いつでも取り戻すことは可能です。
ファンとのコミュニケーションにかける執念
しかし、単に音楽活動とルックスの向上だけでは、簡単にファンを獲得することはできません。ここからがキモで、ヒカルは恐ろしいほどの時間と手間をかけていました。
ヒカルは100万フォロワーを超える本家Twitterアカウントの他にファン用のサブアカウントを運用しています。
ここではファンにリプ返(コメントを返す)したり、ファンが「ヒカルを支えたい」と思うようなツイートを投下し、本家と明確に差別化しているのだ。「いつもありがとう」だけではなく、ファンが欲しい言葉を見抜き的確なリプライを送っています。
これは大変な労力です。毎日欠かさずYouTube投稿を行い、アパレル事業や新規事業の準備をしながらもファンとのコミュニケーションを継続しているのです。
ここまでカロリーをかけている人物はアイドル業界にも稀有でしょう。いたとしても彼ら/彼女は毎日動画を投稿していません。
さらに驚くのがツイキャスの運用です。
ヒカルがひとりで1回につき1〜2時間に及ぶ長時間、ツイキャスを配信し、ファンと交流しています。
シチュエーションもお風呂やベッドの中など完璧に練られているし「怖いときもある」と弱みを見せたり「いつもありがとう」「大好き」と感謝を伝える瞬間もあります。本家アカウントでは見られないヒカルの姿に、女性ファンは心をくすぐられることでしょう。
果たしていつ寝ているのか、と思うほど。Twitterのファン向けサブアカウントに加え、ツイキャスまで運用しているのは、本当に驚きました。それにサブ垢で配信しているため、本来の男性ファンとの棲み分けもきっちりできています。
これが「女性ファンを獲得することでさらに影響力を獲得する」という目的のためだけの行為なのだとすれば、ヒカルの執念は恐ろしいほどです。これほど努力を継続することがどれだけ大変なことか。アイドル性の高い俳優やミュージシャン、アイドルでもなかなか出来ない領域まで踏み込んでいます。
女性ファンからチヤホヤされるのが嬉しい、という理由だけではここまでのことはできないはず。天賦の才でもない限り、女性ファンを獲得するための手法を相当に研究し、努力をしています。
勝利までの飽くなき決意を持って突き進む活動再開後のヒカルは、ひとつ上の次元に足を踏み込んだのは間違いないでしょう。
復活を果たしたがTVに出ていないヒカル
破竹の勢いで突き進むヒカル。ここで、ひとつの疑問が浮かびます。彼の姿をテレビで見かけることがありません。
ヒカキン、はじめしゃちょー、といったトップ級YouTuberだけがテレビ出演しているのではなく、ヒカルよりもチャンネル登録者数自体は下回る、ヴァンゆんやスカイピースもテレビ出演を果たしていることから、単にチャンネル登録者数が理由ということではないでしょう。
宮迫とのロコンドテレビCMが地上波で流れ、Twitterトレンド1位になるほどの、大きな話題を呼びましたが、ゴールデン帯のTV番組出演には至ってはいません。
テレビ朝日系列で放送された「中田敦彦 presents STAND UP STUDY」でゲスト出演を果たしましたが、AbemaTVの地上波告知枠という位置付けですし、放送時間も深夜帯でした。
これほどの人気・実力・勢いを兼ね揃えたヒカルがなぜテレビとの接点が無いのでしょうか。
テレビに出られない理由=出ない理由だった
ここからは、ヒカルとTVの関係性、そして、今後の可能性について、ヒカルとTV両方の目線から分析をしていきます。
理由①:テレビ業界の情報リテラシー
テレビ業界は、ネットの情報やブームに疎い世界です。ターゲットの多くが中高年層であることを考えるとどうしても若年層向けの題材を扱う優先度は下がってしまいます。
「ヒプノシスマイク」や「刀剣乱舞」「鬼滅の刃」といった超メガヒットコンテンツでようやく地上波で扱われる、というレベル。
もはや人気がひとつのジャンルとして定着した「声優」ですら野沢雅子さんや山寺宏一さん以外の名前が出てくることはほとんどありません。トップクラスの人気を誇る神谷浩史さんの「プロフェッショナル」や梶裕貴さんの「世界一受けたい授業」も地上波からするとチャレンジングな取り組みだったのだと思います。
そのためキャスティングの決定権を持っているチーフプロデューサーは「そもそもYouTuberをよく知らない」。知っていても「なんか炎上してた人?」という認識しか持っていない、というケースが多々あります。
また、連日の業務や放送に追われ、新たなジャンル開発・新たなキャスト探しが行われていないという側面もあります。若い世代のカルチャーに接しているはずのディレクター、AD、作家陣も制作時間に追われ、目新しいキャスティング提案まで至ることができないのです。(このあたりはTV局の働き方改革に伴い、少しずつ改善してくると思うのですが…)
地上波ゴールデン番組で毎回同じ顔ぶれを見るのもそれが理由です。テレビの人ほどエンターテイメントを見ていない、というのは残念ながら事実です。そもそもYouTuberというカテゴリ自体がフォーカスされにくいというのが理由①です。
理由②:テレビ局からすると、炎上するのがこわい
不倫騒動やステマ騒動、薬物騒動など様々なトラブルが起こるたびにテレビ局は様々な調整をしなくてはなりません。そのため、よりクリーンな人物の起用を求められます。
確かに、ヒカキンやフィッシャーズらスキャンダルのにおいがしない、安心感のあるYouTuberがゴールデンタイムに出演するのは納得感があります
しかし、ヒカルも活動再開以降、クリーンな動画しか投稿していませんし、代理店を通さないグレーな広告案件は即座に断る様子も動画も公開されています。
著作権についても気を使っており、芸能人の画像や音源の無断使用を避けています。ヘラヘラ三銃士との動画では、その様子が伺えます。
ここまでクリーンな映像制作を行っているヒカルは、きちんとリスクを排除しており、むしろ炎上しない可能性の方が高いYouTuberです。ところが、それにも関わらず「なんとなく炎上しそう」というイメージを払拭しきれていない可能性が高いのです。
先ほどの①にも記載したとおり、YouTuberへの曖昧なイメージと、過去の騒動による「なんか炎上したんでしょ?」という印象がある点を拭い去るには、特にネットの動向に疎いテレビ業界では、どうしても時間がかかってしまいます。
さらには、フリーで活動していることも一因であることが推察されます。太田プロに所属していて安心感のあるヴァンゆんが起用されているのは、大手事務所所属という、セーフティネットがあるのも理由の一つでしょう。
理由③:出演することで得られる効果がテレビ局のKPIになっていない
テレビ局にとって何より大切な数値は何十年にもわたり「視聴率」です。
「TVer」の利用拡大に伴い、テレビ番組の見逃し再生回数や「3年A組」見たさにHuluのサーバーがダウンするなど、TV局が運用する動画配信サービスの加入獲得など、視聴率以外の指標も徐々に取り入れられてきてはいますが、未だに視聴率絶対主義は揺るぎません。
チャンネル登録者数400万人という数は、とても大きい数字に見えますが、日本の世帯数(およそ5,700万世帯)という数から鑑みると「視聴率」に与える変動値は限定的です。
また、400万人を構成するファン層のうち、ヒカキンらと比べ、子ども達のファンが少なく「親がチャンネル権を握っている」「家にそもそもテレビがない」というファンも少なくはないでしょう。
さらに、視聴率至上主義に伴い、ヒカルが番組出演することで得られるTwitter上でのRT数や予告編の再生回数がテレビ局からすると、成果としてなかなか成果として認識されにくいという現状があります。
ここまでは、テレビ側の理由が中心でしたが、あくまでもこれは、表面的な理由に過ぎないと考えています。より本質的な理由は、単にテレビ側だけではなく、ヒカルの思考や戦略とも関わっていると思います。
理由④:ギャランティがマッチしない
テレビに出演するタレントのギャランティとYouTuberの収入は大きく異なります。テレビは拘束時間が長い割には、イベント出演費や講演会費用、さらにはCM出演費と比較すると圧倒的に低い傾向にあります。
全国に顔と名を売り、それを元に広告を獲得したり、音楽が売れるようになる「プロモーションの場」としてテレビが位置付けられているのが理由でしょう。
しかし、YouTuberは30分〜40分一本撮影の動画でYouTubeから数十万〜数百万円の広告収益を獲得することができます。さらには、企業案件などもふまえると収益性は圧倒的です。ヒカルは2020年2月に2億円の利益(※売上ではない)を記録したと語っています。
単にテレビ番組への出演を「収益獲得の場」として考えると効率が非常に悪く、また、テレビ側からしてもそれだけのギャランティを用意することは困難でしょう。
「ギャラが低くても出たい!」とヒカル側が納得するためには、
・ 自身のブランディングにつながる体験ができる
・ 自分の力では会うことのできない憧れの人物と会うことができる
という要素が必要でしょう。
理由⑤:テレビという場の制約の多さ
これが最大の理由だと思います。ヒカルは度々動画の中で「テレビは制約が多すぎる」と語っています。
ヒカル自身、テレビが好きで育ってきた世代ですし、自身の動画の中で憧れの芸人や俳優と会うと明らかにテンションが上がり、まるで少年のように嬉しそうな様子が伺えます。
しかし、テレビ番組は、台本がガチガチに固められており、入念なリハーサルをしてから撮影する非常に段取りが多いシステムを採用しています。演出ファーストです。
一方で、ヒカルは台本を作成せず、ほとんどがフリートークです。ひとりでカメラに向かって30分以上ノンストップで話すことができる、というのが最大の武器であり、動画の見所となっています。つまり、キャストファーストと言えるでしょう。
テレビ番組の場合は、時間の制約や演出意向というものが存在しますので「こういった発言をして欲しい」とあらかじめ方向性が定められています。これにより、自由に発言できず、ヒカルにとってストレスになってしまうことは間違いないでしょう。
キャストファーストで取り組むことができるのは、一部の大物司会者クラスに限られてしまいますし、とんねるずのレギュラー番組終了に伴い、一部ではその文化すらも破綻しつつあります。
さらに、YouTubeの場合、出演者が喋る「間」を短くカットし、テンポよく見せていくのに対し、テレビ番組の場合は、こういった編集方法はせず、不要な部分はバッサリカットします。長く話すことは必ずしも求められず、端的にわかりやすいインパクトあるリアクションをしなくてはいけません。これでは、互いの持ち味を消しあってしまうことになります。
そして、キャスティングの忖度という文化が未だに存在していることが推察されます。仮にヒカルがMCを務める番組ができたとしても、そこに現時点で宮迫がゲスト出演することは極めて難しいでしょう。
実際、ヒカルと宮迫がCM出演を果たしたロコンドについてもテレビ東京以外の地上波局では、放送することができませんでした。
こういった暗黙の了解や忖度といった古い業界慣習に対して、ヒカルは極めて否定的です。テレビ業界からこういった文化が無くならないと、ヒカルにとっては、そもそも魅力的な環境とは言えないのでしょうか。
これら①〜⑤の理由が複雑に絡み合い、ヒカルのテレビ出演に至っていないと、私は考えています。
つまり、ヒカルが「テレビに出られない」というのは正しい表現ではなく、テレビとヒカル、両者のメリットや狙いが合致しておらず、「まだ両者の環境が整っていない」というのが実情ではないでしょうか。
ヒカルがテレビに出演する日は来るのか。
まだまだテレビ業界とYouTuberの関係性は成熟していないのが実状です。これから交わっていくのか、はたまた折り合うことなく異なる文化として進化を遂げていくのかは分かりません。
先日の放送ではマツコがヒカキンとの対話の中で、こう論じていました。
(続き)マツコ「You Tubeという新しいメディアにはいるけど、マスのメディアなのよ。マスになるってことは自由を失うってことなの。で、責任を伴うの。その代わり、信頼を得られるの」/『マツコ会議』5/23
— 飲用 (@inyou_te) May 24, 2020
(続き)マツコ「要はHIKAKINさんのようにメジャーになっていくってことは、それに伴って好き勝手できなくなるってことなの。好き勝手し続けられる人ってのは、そこまでの人なのよ」 HIKAKIN「(拍手)」/『マツコ会議』5/23
— 飲用 (@inyou_te) May 24, 2020
一部の切り出しとなっていますので、誤解なく文脈を読まれたい方は、元ツイートや見逃し配信をご覧いただきたいと思いますが、「自由」と「信頼」の話でした。
テレビに出て「信頼」を勝ち取り、マスの立場になる以上は、個人の「自由」は制約されてしまう、という考え方はあながち間違いではないでしょう。ただ、ここで失う自由は、は必ずしも「好きなことができない」ということでは無いのではないかと考えます。
つまり、まだテレビ局とYouTuberの関係が成熟しておらず、「自由を与える」ことで最大限面白くなり「信頼」を獲得できる、という新たなモデルの成功体験が無いのです。この最初の一歩を踏み出すのが実はヒカルなのではないでしょうか。
また、よく混同されて議論がなされますが、自由=コンプラを無視する、自由=著作権を意識せずに画像や音楽を勝手に使う、ということではありません。ここはヒカルも非常に気をつけています。
ワイドショーのコメンテーターやクイズ番組は台本やフォーマットが明確に定められており「自由」は保証されていません。それにコメンテーターやひな壇の仕事をヒカルは求めていないでしょう。
ヒカルがテレビに進出するための足がかりとなるであろう番組は以下のジャンルに分類することができると考えます。
1)ドキュメンタリー番組
「情熱大陸」や「プロフェッショナル」といったドキュメンタリー番組への出演が最も近いと考えます。「情熱大陸」の方が可能性は高いでしょう。「プロフェッショナル」は<職業>をひとつの切り口にしているので、他のYouTuberを密着することになれば、ヒカルの番が回ってくるのは相当後になるはずです。一方で「情熱大陸」は人軸ですので、他のYouTuberが先に扱われていたとしても、音楽アーティストを数多く放送しているように、ヒカルの番が回ってくるでしょう。
もちろん、一番最初に取材されるYouTuberになれば何も心配はいりません。そのために必要なのは、ドキュメンタリー番組が成立するための条件に合うことです。ドキュメンタリーにおいて、ただ単にネームバリューだけで企画が通るのはごく一部ですので、「なぜ今密着する必要があるのか?」が重要です。
何十年ぶりの復活ライブ、自ら手がける全く新しい舞台が始まる、海外へ初挑戦する・・・など、時流とマッチしたテーマが求められます。
ヒカルのファンだけではなく、世の中から見ても「挑戦的」な取り組みを仕掛ける時が、ドキュメンタリー実現のチャンスだと思います。
2)リアリティショー
最も輝く可能性があるのがリアリティショーです。実際、ヒカルのYouTube上で展開されている動画には、リアリティショーに分類されるものがたくさんあります。ロコンドとの取り組みはまさにリアリティショーです。
「恋愛リアリティショー」が世の中に飽和状態となり、「テラスハウス」の構造に限界が生じた以上、今後は新たなジャンル、特にビジネスジャンルやオーディション企画が主流となるでしょう。
リアリティショーでは、ヒカルの武器であるトークスキルやビジネススキルが生かされるため、彼の力を最大限に発揮することができます。ビジネスジャンルのリアリティショーのホストとなることができるYouTuberは現時点ではヒカルがポールボジションにいます。
そして、テレビ局も最近では広告媒体としての序列が下がっていることもあり「放送外事業」に力を加えています。ヒカルの力でリアリティショー発の商品やグッズが大量に売れる、などの反響が生まれれば、一気に追い風となるはずです。
つまりテレビ局側が「視聴率」だけにとどまらないKPIを見出した瞬間、ヒカルの強さが炸裂します。リアリティショーは続きが見たくなるニーズ、一気見したくなるニーズが高いため、動画配信サービスへの誘導とも相性が良いです。テレビ⇄WEBのクロス導線の突破口としての役割も期待されます。
3)憧れの人物、共演したい人物が出演するバラエティ番組
ヒカルが共演したいと思う憧れの人物との共演、その人物からの逆オファーが実現する可能性は十分にあります。ヒカルは、400万人登録突破記念として、自身で米津玄師の「Lemon」をカヴァーしました。
米津玄師側がこれに反応したり、他のアーティストとの関係性が強化されることで、テレビ業界の中でも認知度と安心感が高まり「●●さんが言うならゲストに呼ぼう」という流れが生まれる可能性があります。
本日公開された動画では、MY FIRST STORY のHIROが出演を果たしました。こういった取り組みが続いていくと、テレビ業界からの「認知度」と「安心感」がますます高まっていくでしょう。
まとめ:Xデーはいつなのか。
ここまで紹介してきたように、現時点では、まだまだ目に見えない課題があります。
しかしながら、今後、テレビ側の理解やYouTubeへのリテラシーが向上していくことでYouTuberが番組出演するチャンスは拡大していくでしょう。それに伴い、炎上リスクへの漠然とした恐れや不安も解消されていくはずです。
「共演NG」や「業界の忖度」が解消されるには、まだまだ時間がかかりそうですが、それ以外の点で魅力的な要素(ブランディングにつながる、共演したいキャストがいる、自由度が高いなど)をテレビ側が提案することで、ヒカルが納得する条件も出てくるでしょう。
どこかのタイミングで一気にYouTuberがテレビ出演を勝ち取るタイミングが来るとすれば、UUUM型のYouTuberは同系列のライバルが多いのですが、ヒカルのポジションはなかなかいません。
テレビ局はまだまだYouTuberとの向き合い方の正解を見出していませんが、新型コロナウィルスが生活様式を一変させ、これまでのような大型ひな壇番組、触れ合い町歩き番組が減少することを考えると新たなジャンルや新しい番組が生まれてくることは自明です。
2020年がヒカルのテレビ出演においてエポックメイキングな年になる、と僕は予想しています。
これを越えられないと、マネージャーの高橋氏が語るように「NETFLIX」や「Amazon Prime Video」といった自由度の高い場所に活躍の場を見出し、地上波テレビとの扉は閉ざされてしまうと思います。
最後となりましたが、ヒカルさん。チャンネル登録者数400万人突破、おめでとうございます。今後ますますの活躍を期待しています。そして、番組を共にできる日を楽しみにしています。
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筆者プロフィール
大原 康明(おおはら やすあき)
1989年11月1日生まれ。神奈川県出身。テレビ局勤務。
番組制作部門でドキュメンタリーや音楽番組、コント番組、ドラマなど数々の番組でプロデューサーを務める。新規ジャンル開発・立ち上げやオリジナルイベント開発を経験し、現在は新規サービス開発とマーケティングを担当。
Twitter:https://twitter.com/OharaSpeaking/
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