お茶は、作るもの
「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」
と謳われる通り、
埼玉県は狭山茶の産地でございます。
ひたすら平野部の広がる埼玉県東部には滅多にありませんが、
現在の私の実家がある埼玉県西部は
お茶の木がよく育つ丘陵が広がっており、
茶畑があちらこちらに見られます。
私も、生まれた県東部の町には無かった
美しい新緑の茶畑をはた目に見ながら
新入生として高校の通学路を歩き、
同じ埼玉でもこんなに風景が違うのだなと
引越したばかりの新しい生活の空気感も相まって、
感動したものです。
埼玉に住んでいたからとは
おそらく関係ありませんが、
両親も日がな一日、緑茶を飲む人たちなので、
我が実家には3煎目まで美味しく味が出る
母の御用達の埼玉のお茶屋さんの緑茶が常備してあり、
それ以外のお茶はほぼ飲まないという
一途さでした。
というわけで、
埼玉でお茶は随分身近に感じていましたが、
お茶をどうやって作るのか、は
完全に農家さんにお任せで、
出来上がりの製品をいただいていました。
自分でお茶を作る、
農家さん以外の埼玉県民は
恐らくレアですね。
なので、高知に来て、
これ、自分で作った紅茶、
とか言いながら何げなく出してくれる人に出会うと、
びっくりします。
お茶の葉を摘んで、紅茶の茶葉に加工するとこまで、
自分でしたそうです。
ちなみに、その方は農家さんではありません。
あと、違う友達で
これ、自分の友だちが作ったお茶、
といってお茶を分けてくれる人もいます。
頂いたお茶自体は、「友だちが作った」ものなのですが、
その方曰く
「おじいちゃんの家のお茶と同じ味がするよ」
といういわば、
自分ちで飲む用に家族が作ってたお茶と同じ味だよ、
という趣旨で、
分けてくれるのです。
お茶は、自分ちで作るもの、
作っていたもの、という
お茶を作る風景を知る人は、
高知にはまだまだ少なくないようです。
ちなみに、
そのお茶は、「山の釜炒り茶」という名前で
手渡されたのですが、
釜炒り茶(釜煎り茶。かまいりちゃ)は茶の製造方法の一種で、生茶葉から煎茶を造る最初の加熱工程(殺青)を「蒸す」のではなく「炒る」ことで行うものである。茶葉の仕上がりが針状ではなく、勾玉状になる。この形状から玉緑茶(たまりょくちゃ)、ぐり茶ともいうが、後述の蒸し製玉緑茶と区別するために、釜炒り製玉緑茶、釜ぐり茶ともいう。Wikipediaより
私の知ってる緑茶の味とも、
ほうじ茶の味とも、
紅茶の味とも違いました。
でも、見たことあるこの茶葉の開き方。
12年ほど前にたった一回だけ行った
中国で飲んだ、
龍井茶(ろんじんちゃ)という中国の緑茶に
似ていました。
調べてみると、
どうやら同じ仲間の製法のお茶でした。
釜で炒ることで茶葉の発酵を止める製法はもともと中国から伝わったものといわれ、実際に現在の中国緑茶の大半はこの釜炒り製法でつくられています。煎茶というとほとんどは「蒸し製の煎茶」を指すことが多いですが、九州地方などではいまも釜炒り茶が多く飲まれています。
主に九州地方の山間部で生産され、水色はやや赤みがかっており萌黄色~金色。釜香(かまこう)と呼ばれる独特の香りがあります。
薬草のような香りもします。
美味しいお茶です。
ネットの記事にある九州だけでなく、
高知の山でも、昔から今でも作られています。
自分で飲むお茶が、自分で作れること。
みんな昔はそうしてたこと。
考えてみれば当たり前すぎることを
随分沢山手放して
生きているんだな、と思う
高知のお茶との出会いでした。
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