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実家のピアノ

実家のピアノ。

朝は9時、夜は8時までしか弾けないピアノ。

ものごころついたときにはもう既にあったピアノ。

当たり前にあったピアノ。

なんでも姉の真似をする一環で幼稚園の時に習い始めたピアノ。

レッスンの日にしか練習しなかったから全然上達しなかったピアノ。

小学5年生で辞めたピアノ。

辞めたら全然弾けなくなったピアノ。

弾けないとつまらないから余計弾かなくなったピアノ。
部活で毎朝早くて遅くて、弾かなくなったピアノ。

私の身体はピアノを忘れた。

このピアノの響きが
当たり前の身体だったのに。


電子ピアノと電気を使わないアコースティックピアノとの
ギャップはすごい。

身体の感覚が全然違う。

電子ピアノに慣れてしまったら、
実家のピアノを弾くと身体がびっくりする。

音の出方も響きも全然違うことに戸惑う。

それでも夜中でも一日中いつでも
練習できる電子ピアノのおかげで、

ピアノが好きなことに気づいて、
ピアノに戻ってきた私。

帰省して、
実家のピアノで弾ける曲の数が少しずつ戻ってきた私。

贅沢なかつての当たり前に気づいた42歳の私。


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