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連載11 第二集 10~12月編 『かみさま きょうも おひさまを つけてくれてありがとう』あきとまさきのおはなしのアルバム '88



【写真・第2集の中表紙】

十・十一・十二月
あき 三才十一か月~四才一か月
まさき 二才一か月~三か月


#123 ビリ


幼稚園の運動会。年少組の親子ゲームは、親子で手を繋いで走って行って、途中でお面やシッポを付ける、変身ゲームだった。ところが、キュリーに、よくゲームを理解させておくことができなかったため、お面のある所を通り過ぎてしまい、あわてて引き返した時には、みんなから、はるかに遅れてしまっていた。立ちすくんでしまったあき。ひとりで近所のグラウンドへ行っては、かけっこの練習を重ねてきたあきのことを思うと、かわいそうでならない。それでも、皆さんの温かな拍手に励まされて、走り抜くことができた。
私 「あき、よく頑張ったね。おかあさん、あきが泣きだすんじゃないかと思って、心配しちゃった」
あき 「あき、はを くいしばって ガンバッタの」
目に涙をためて、ふたりで笑い合った。


【写真・あき君のつくった父の日のプレゼント(レターラック)】
〔説明 紙を三角にちぎって髪に、眉毛・目は四角い黒紙を切り紙に貼って作ったお父さんの顔です〕

#124 おままごと


かよちゃん 「おとうさん、おちゃが はいりましたヨ。さあ、どうぞ」
あき 「いいヨ。おちゃは、じぶんで いれるから。おかあさんにも、いれて やろうかね。ジョジョジョー」
かよちゃん 「あきちゃんたら… おちゃは、おかあさんが いれるのヨ」
あき 「おとうさんだヨ」
かよちゃん 「おかあさんでしょ」
あき 「おとうさんだって イ イ ダ ロー!」

#125 食事中ふと考えたこと


あき 「おかあさん、おかあさんの おしりに ある ちいさい チンチンは、なんて いう なまえ?」
私 「えーと… なんだっけ?」
あき 「『おチンチンだいり』って いうんじゃ ないかなあ?」
コーヒーを、飲みかけていた夫 「グー ゲホッゲホッ…」思いきり、むせてしまった。

#126 天国に行ったら…


あき 「おかあさん、なんで めが みえないの?かみさまに、みえるように して くださいって、おねがいしたら いいのに」
私 「おかあさんはね、目の見えない人生を生き抜くことが、神様から頂いたお仕事なの。だから、『見えるようにしてください』じゃなくて、『一生懸命生きられますように』って、神様にお願いしてるのよ」
あき 「てんごくに いったら みえるように なる?」
私 「そうだといいね。神様が、『おかあさん、よく頑張りましたね』って言って、世界中を見せてくださるかもしれないわ」
あき 「わあ!せかいじゅう!あきんとこも みる?」
私 「見る見る。いっつも いっつも」
あき 「わーい、ヤッター!」

#127 海を越えてきたクリスマスプレゼント


『婦人の友』二月号を読んだ愛読者から、匿名で、ドイツ語で書かれた二冊の絵本が届いた。
あきとまさき 「わあ、きれい」
私 「これはね、ふたりへのクリスマスプレゼントですって。海のずーっと向こうの、スイスっていう美しい国に住んでいるおばちゃまが、わざわざ送ってくださったの」
あき 「わかった!それ ほんものの サンタの おばさんでしょ?」
私 「あっ、きっとそうね」
あき 「わーい、スゴイぞ。まさきー、ほんものの サンタの おばさんがね、プレゼント くれたんだって」
まさき 「ホンノノノ タンタ オバタン、ホンノノノ タンタ オバタン…」
子供達は、絵本を一冊ずつ抱えて、部屋中を跳ね回った。

#128 絵本 「いちごくまさん」をよんで


私 「くまさんたちは、あまいいちごを、ひとつも残さずに食べました」
まさき 「もっと たべたいねー」

#129 日だまり


茶の間に日だまりを見つけて、私の手を引いて行ったまさき。今度は、キュリーを呼びに行ったようだ。
まさき 「かあたん、あったかいでチョー。チュータンも おいでー。チュータン、あったかいドー」

#130 福引


あき 「あき、じいちゃんと のうきょうさい いってネ、ガラガラーって まわして、ポトーンって、しろい まあるい もの でるの やった」
私 「よかったわね。それで、何が当ったの?」
あき 「ハサミと カレンダー。でも、あき つまんないなあ」
私 「あきは、何が欲しかったの?」
あき 「あき、あの しろい まあるい ものが ほしかったんだ」

#131 雪の朝


あき 「あき、きょうは おばあちゃんと ようちえん いくヨ」
私 「あら、なんで?」
あき 「キューちゃん、ゆきで あしが つめたくて かわいそうだもん」

#132 凍った坂道


あき 「まさきー、みちへ でちゃ ダメだぞー。あぶなーい!… ギャー!」
まさきを止めようと、駆け出したあきだったが、自分がころんでしまった。まさき、駆け戻って来た。
まさき 「にいたん、ダイドウブ?にいたん、ないちゃうの?」
私 「おにいちゃんだって、泣いてもいいのよ。だって、痛いんだもの」
あき 「ウー グー、なかないゾー!」

#133 離乳宣言


さっきからまさきは、私が乳首にバンソウコウを貼る様子をじっと見ている。
まさき 「かあたん、オッペー いてえ?」
私 「そうなの。まさきが力一杯吸うと、痛いんだ。そろそろ、おっぱいやめようか。まさきも、大きくなったものね」
まさき 「マサチ オオチク なった?」
この日、まさきと私は、 折々このことを話題にして、話し合った。そして問題の夜。
私 「まさき、おっぱいやめてみようか。まさき、大きくなったもんね」
まさき 「マサチ オオチクなった。マサチ オッペー やめウ」
そしてまさきは、自分で宣言したとおり、その夜から、気持ちよく離乳した。

#134 みっつになった磁石


子供達、小さな磁石を、ふたつずつ持って遊んでいたが、あきが、ひとつを無くしてしまった。まさきから、ぶんどろうとする。
夫 「あき、ちょっと勝手だぞ。やめろ!」
あき 「ヒ~、ウワーン!」
なかなか泣きやまない。
私 「ねえ まさき、おにいちゃん、泣いちゃったね。磁石が、ひとつ欲しいんだって」
部屋の隅まで逃げて、じっと磁石を握りしめていたまさき、だいぶ考えてから、そっと兄に近づく。
まさき 「にいたん、はいヨ。にいたん」
まさき、とっておきの磁石を、兄にあげた。あき、私の胸に、涙をこすりつけながら、てれ笑い。

#135 あきのおしうり撃退法


見知らぬおばさん 「このお札を買いなさい。そうすれば、地獄にいる祖先の霊は、救われます。ねえ、奥さん…」
いくら断っても、おばさんは、帰ってくれない。私が、困りはてていると…
あき、明るい声で 「おばちゃん、そんな いい おふだなら、おばちゃん、だいじに とっとくと いいヨ。あげちゃうと、おばちゃんの ぶん なくなっちゃうヨ」

#136 入院


あきが、一日入院して、アデノイドの手術を受けることになった。私が、付添いたいと申し出たが、医師は、「おばあちゃんの方がいいな」と繰り返す。付添いの付添いを、友人に頼むことで、ようやく私の付添いを、許可してもらった。ところが…
看護婦さん 「あき君、検査です。こちらへ入ってください」
私は、キュリーのハーネスを握り、あきの手をとって立ち上がった。
看護婦さん 「付添いは、そちらの方に、お願いします」
鶴田さん 「私ですか?おかあさんで、十分だと思うけど…」
私は、待合室に、とり残されることになってしまった。
帰って来た鶴田さん 「あきちゃん、みんな自分でやったから、私、何もすること、ありませんでした。みんな、目が見えないと、何もできないと思っているのかしら」
それから鶴田さんは、余分な手だしをしないよう、極力気をつけてくださったようだ。おかげで私は、あきに、ピッタリとついて、看護することができた。看護婦さんたちも、部屋中をさわって、自分で確認している私の様子や、キュリーの働きぶりを見て、病院の構造や、室内の器具の使い方など、丁寧に教えてくださるようになった。そして夕方。
看護婦さん 「夜の付添いは、見える方でないと困るとお願いしていましたけれど、これなら、おかあさんとワンちゃんだけでも大丈夫ですよね。ワンちゃんには、ゴザを持って来てあげましよう」
私 「わかって頂けて、本当に嬉しいです。ただ、次男が、私と離れて、寝たことがないもので、どうしようかと…」
あき、かすれた声で 「おかあさん… まさきんとこ いっても いいよ。でも…『てぶくろを かいに』の おはなし、もう1かいだけ やってね」
よく我慢したと思う。私が、語り聞かせながら、あきの頭を、撫でていると、指に涙がふれた。

#137 ウソ喰い鳥


あき 「いっただっきまーす」
私 「あら、あき、手は洗ったの?」
あき 「うん」
私 「あっ、あきの後ろで、ウソ喰い鳥が、『いっただっきまーす』って言ったゾ」
あき 「ウソクイドリって なあに?」
私 「ウソを食べる鳥だって。ウソをいっぱいついてくれる子供が大好きだから、森の中にある、自分のお家に、招待してくれるらしいわ」
あき、長いこと考えてから 「もりの なかって、たべるもの ある?」
私 「こう寒くちゃ、あんまりないかも」
あき 「そうか。じゃあ、あき、てー あらって くるヨ」

#138 あのねのネ


あき 「ねえ、おかあさん、だれにも いわないで。あき、おかあさんが スキだよ」
私 「ありがとう。でも、言っても大丈夫よ。世界中の子供達は、みんな、おかあさんが、大好きなんだから」
あき 「へえ、そうか。じゃあ、これは ないしょだヨ。(いかにも、てれくさそうに)ア ノ ネ、あき、ゆみこせんせいも、スキに なっちゃったんだヨ」

#139 冬、我が家の朝


あき、小さな声で 「お か あ さん」
私 「ん?あき、今朝も、早いのね」
あき 「シー、まさき おきちゃうヨ」
あき、カーテンを、そっと めくりながら「あっ、そらが もう あかいヨ。おひさまー、おひさまも、はやおきだねえ。めざましどけい、どこに もってんのー?」

#140 おねしょでション


私が、洗ったおねしょシーツを、日に干していると、
あき 「あき、こんどっから おチンチンに タイマー かけとこーっと」
私 「えー?ウフフ…」
あき 「だって、そうしたら、あさまで ぬれないもんナ。エヘヘ… あき、いい かんがえでしょう」

#141 セブンイレブンのクリスマスプレゼント


あき 「やっぱり サンタさん、きて くれたんだね」
夫 「開けてみろ。開けてみろ」
あき 「あれ?セブンイレブンの マークが ついてるゾー」
夫 「ゴックン。そうか?サンタさんも、プレゼントが足りなくなって、セブンイレブンで、仕入れたんだろう」
あき 「そんな カバなー!」
夫 「そうか?それなら、そのマークは、サンタさんが、七時に来ましたよっていう、印なのかもしれない。ゴックン」
正直者の夫は、しきりに生唾を飲み込みながら、言い訳に苦心している様子。私、そばでニヤニヤ。
あき 「あっ、けしゴムが はいってる。あき、ほしかったんだ。あっ、まさきの だいすきな アメも ある。あき、まさきんとこ おこして くるヨ。まーさきー、サンタさんがネー、プレゼント くれたゾー!」 ダダダダ…
私 「おとうさんたら、そんなに心配しなくたって…」
夫 「やあ、まいったなあ。来年のクリスマスには、何か作ってやることにしよう」


【写真・あき君の絵】
〔絵の説明 4人が縦に描かれています。4人みな少しずつ大きさが違います。想像して一番上からお兄ちゃん・お父さん・間にセブンイレブンのマーク・まさき君・お母さん〕

#142 マチャキのお気にいりの歌


「🎵もー みーのきー、もー みーのきー、いつも もーみーのーきーー」
「🎶コーケコッコの おばたんのー.あかーい まっかな ひーが のぼウー」

#143 お茶碗かいたのダーレ?


私が、あわただしくかたづけていて、お茶碗を、とり落としてしまった。ガッチャーン!例によって、子供達が、駆けつけて来た。
あき 「なんだ なんだ?あーあ、あき、かたづけて あげる」
私 「おかあさん、やるから」
あき 「いいよ いいよ あぶないから。おい、まさきー、そうじき もって こーい!」
まさき 「はーいっ」
まさきは、重い掃除機を、私は、あきの手袋と、スリッパを持って行く。あきは、欠片を集めて、丁寧に掃除機をかけてから、ふき掃除までしてくれた。
まさき 「にいたん、きれい きれいって したネ。アリナトウ」
私 「本当にねえ。ふたりとも、ありがとう」

(連載12へ続く)

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