伝えたいことなどない。by.諌山先生
受け取る側の好きにすればいい。
自由の翼。
そんな思いが込められているように思う。
私はただ、そこにあるものをできるだけ多く受け取りたいと思っている。
しかし、私の空き容量がすぐにいっぱいになっていることに気づく。
一度狭くなった容量を、生物であれば増やすことが可能だろう。
人間が時にこの可能性を広げることを阻む。
何故なら人間は成長ではなく成功を望むからだ。
成功とは、自然に発生するものではない。
行先を定めたうえで、そこに向かうために道順を決め、それに従って動くことを求められている、いつしかそんな風に感じるようになった。
自然光の方向へと植物が伸びていくことと同じなのだろうか。
私はそうは思わない。
成功には失敗がある。しかし、成長には間違い等ない。
成功とは人間が作り出した仮想現実であることがわかる。
意志を持っているから、人間は機械的になれる。
そして楽できる。
考えなくて済む。
この混沌とした自然から離れられる。
それこそが光だという大人がいる。
しかし、光を浴びることが必ずしも幸せとは限らない。
それは実感した人しか、わからない。
そこに好奇心を抱いたりするのもまた、人間らしいということなのだろうか。
そもそも幸せなんていうのは、苦労をして手に入れるものだと誰が言ったんだろうか。
そんなことを言ったのは誰だったのか、もう名前も忘れてしまったな。
言葉は風に流せばよいのだ。
私の自由を奪った人間がいた過去、そんな思い出なんて、最初からなかったのかもしれない。
言葉で育てられたと思っていたが、その言葉たちは蛙の合唱のようだと思えば、何も縛られることはなく、煩わしいなら立ち去ればよかっただけだ。
何者も言葉で根っこから刈り取るつもりはなかった。
「伝えたいことなどない」
甘美、そして完結されたメッセージだ。
さらりと残酷な優しさを見せる男だと思った。
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