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リーダーシップのクラスが始まる(予習)MBAリーダーシップ①

2024年1月5日、日本への数週間の一時帰国(冬休み)を堪能しアメリカに戻った。来週から仕事、そしてオハイオ州立大MBAの授業(Spring semester)も開始する。最初のクラスはリーダーシップ。3時間×6回で2月中旬に終わるショートバージョンのクラスである。


リーダーシップとは何なんだろうか

広辞苑によると、「指導者としての地位または任務。指揮権。指導者としての資質・能力・力量。統率力」とある。
何となく頭に浮かぶのは、トヨタ自動車㈱の豊田章夫会長、WBCの時のダルビッシュ選手や大谷選手、芸能界ならビートたけし(たけし軍団)。
広辞苑の定義、特に”統率力”という語彙から連想する人物はカリスマばかりである。到底マネできない。だけど、できれば少しでもあやかりたい。

職場でリーダーシップについて考えたことはある。
チームで仕事をするときは、リーダーがどのようなこと(指標等)を気にかけているか具体的に理解できると仕事がしやすいと思っていたし、リーダーからの評価が自己評価とそんなにズレていないときは、「このリーダーは信頼できる」と思った。
感情的に発言するリーダーとの仕事は困難な場面が多かったが、行動や発言に一貫性があり、冷静で素早い判断のもとチームメンバーに寄り添い仕事に弾みをつけてくれるリーダーには憧れさえ抱いた。

以上はあくまでリーダーシップについての私見であり、今回は謙虚にゼロから学び、今までの理解とのズレを実務で取り入れたい。

クラスで学ぶこと

(1)シラバス調べ

シラバスによると、このクラスではEvidence-Based Approachを使って以下を学ぶ。

  • 変更や変革が必要な状況下でのリーダーシップ問題を明確にする。

  • チームや個人のパフォーマンス、モラル、協働、創造性、ウェルビーイングやリーダーシップの継承等の長期視点での成果達成のための効果的な行動を特定する。

  • 他者の行動変化に影響を与えるためのテクニックを学び、練習する。

  • 以上の3点がどのような意味をもたらすかを理解する。

事前課題として、Evidence-based Practiceの概要を説明した資料と「Waner Cable(A)」というケースを読み、1回目のクラスディスカッションの準備をする。Evidence-based Practiceの概要を以下に纏める。

(2)事前課題:Evidence-based Practiceの概要

例えば、30年選手の現役有名弁護士の発言や、著名な医者の大ヒット本に書かれていることを鵜呑みにしてしまう人が世間には多いと思う。私も例外ではない。
合理的なエビデンスが他にあるにも関わらず、真実を無視することもしばしばである。

Evidence-based Practiceとは?
ざっくりいうと、批判的な思考&利用可能な最善のエビデンス(一つに限らない)を組み合わせて下される意思決定である。
Evidence-based Practiceに基づく意思決定時には、課題を特定し(Asking)、エビデンスをかき集めて(Acquiring)これらを重みづけし批判的に評価して(Appraising&Aggregating)意思決定に適用し(Applying)、結果を事後的に評価する(Assessing)ことがメインスキルとして求められる。

エビデンスとは?
エビデンスの種類を以下の4つに分類するとわかりやすい。簡単に言うと、法廷の証言台に立って説明し裁判官に反論されないか、というイメージで考えればいいんじゃないかと思う。

■Scientific evidence(科学的根拠)
例えば、今回のケースはユニークで科学的な研究結果を参照できない、と簡単に諦めてはいけない。ユニーク性がどこにあるのか検証すべきである。
■Organizational evidence(組織が集めたデータ、事実や数字)
財務数値や財務指標、返品率、顧客のリピート率や従業員の離職率等、ハードナンバーもあれば、顧客や従業員への意識調査や満足度調査の結果等、ソフト要素も含まれる。
組織の課題認識や、解決策の決定には欠かせない。
■Experiential evidence(専門家の経験や組織内の判断)
個人の勘や意見・信条とは異なり、近似した状況で取った近似した行動の結果を長期間にわたり集積したものを言う。例えば様々な事業を起業した経営者の起業時の過去の経験等もこれに該当する。
とあるが、個人的には、個人の勘との線引きが難しそうと思った。
■Stakeholder evidence
組織の意思決定によって影響を受ける人が見出す価値や懸念を言う。Stakeholderは、組織内であれば従業員、マネジャー、役員等、また組織外であればサプライヤーや顧客、株主、政府や公共等広く該当する。
視点を変えれば意思決定内容が変わる。視野が狭いと足元をすくわれるので、俯瞰的に判断できるようにエビデンスを集めるべきということである。

なお、エビデンスに完璧なものはなく、エビデンスが誤解を引き起こす可能性もあるので、状況に応じて複数のEvidenceを組み合わせ、批判的に評価しないといけない。また、高品質なエビデンスが問題の直接的な答えになるわけではない。
ちなみに、Evidenceを集める時間がない、というのは言い訳に過ぎない。例えば原子力発電所の放射能漏れ対応等の緊急事態では、1分1秒を争う事態であり一般的にルールを逸脱して意思決定を下す必要があるため、このような場合は例外であるが、日々の暮らしの中でそんな事態に遭遇することは稀である。

そもそも、なぜEvidence-based Practiceが必要なのか?
わかりやすい例がある。
あるアメリカのIT企業では、技術的専門性が高いマネジャーが最も優秀と考えられていた。スタッフに仕事を任せ、彼らが困ったときに手を差し伸べるようなマネジャーだ。
だが、マネジャーに対して見出すバリューについて従業員に質問した結果、"技術的専門性"は最も低くランク付けされ、一方、"良い質問を投げかけてくれて、会う時間を設け、従業員のキャリアや人生を気にかけてくれる態度"にマネジャーとしての価値を見出していた。そして、そのようなマネジャーが率いるチームは、パフォーマンスが高く離職率も低かったとのこと。
なお、このようなエビデンスは既に科学的に研究されており、Evidence-based Practiceにドライブをかけていれば、もっと早く改善活動を促せたはずである。
これは一例に過ぎず、個人の経験や勘・意見を元に下した意思決定により多大な(機会)損失を被る組織は少なくないという。

感想
正しく課題を認識し、批判的かつ建設的に課題に対応し解決策を見出すという姿勢は確かにいつだって正しい行動だと思うし、日常的にクセ付けしないと、根拠のない周囲の意見に流されてしまい、結局行動に落とし込めない。
とはいえ、正しさを追求し過ぎて他人と衝突しながら生きていくのはまっぴらごめんなので、衝突を回避しながら上手くやるテクニックを是非知りたい。

もう一つの課題であるケース「Warner Cable(A)」では、多分、登場人物のリーダーシップの良し悪し、改善ポイントを考察しクラスでディスカッションするのではないかと思うが、これはこれで長くなるのでオハ大日記はここで締める。


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