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オハイオ州立大MBA 初めてのクラス-経済学-

23年8月21日、授業初日。Managerial Economicsというクラス。

クラスメイトは約40名、やはり半円でアメリカの大学らしさが醸し出される教室。授業初日とあって、前日から緊張していた。
MBAというからには、きっとキャッチボール形式の授業だろう。教授が問いかけ、生徒が答える、それも英語で論理的に。
想像すると心臓が縮み上がる。

開始20分前に教室に着く。すでに15人程着席している。
前から2列目の席に座る。やる気は十分にある。
オリエンテーションとは違い、本番の授業は学生の主戦場である。

隣に座るクラスメイトに挨拶をし、握手を交わす。まだ緊張が取れない。

この日私は、自分に目標を課した。
"クラスで発言する。"
あまりにも力みすぎて、この目標の達成がこれからの学生生活の明暗を分けるような気さえしていた。

授業は、事前に予習した内容に沿って進む。予習量は膨大だが、準備は怠らなかった。なんせ授業が主戦場なのだから。

経済学のクラスは毎週1回の全7回、1回の授業は3時間15分である。この日の前半は、予習してきたケースを取り扱った。ケースとは、事例(過去に実際に起こった出来事)であり、学習用にA4で10-20ページ程の文書に纏められている。MBAでは、予習でケースを読んで事前課題に取り組み、ケースに出てくる企業等が直面した問題点や解決策をディスカッション形式で導き出す。

この日取り扱ったケースは、1868年に創設され、芝生等の種の生産販売を本業とするオハイオ州のO.M. Scotts & Sonsという企業のBuyoutであった。ケースには様々な情報が盛り込まれ、踏み込みすぎると複雑で話がそれるのでケースの詳細はここでは割愛するが、今回のScottsのケースは、要は企業のマネジメントが変わり、組織運営方針がガラッと変わることで、泣かず飛ばすのScottsの業績が良くなった、というストーリーであった。

「Scottsって何やってる会社だったっけ?」

教授の簡単な問いかけから授業が始まる。私はクラス全体の様子をうかがう。話が進むほど、教授の問いかけの難易度が少しずつ上がる。

「Buyout前のScottsはどのように業績管理されていたと思う?」「Buyout前後でScottsに起こった変化は?」

私は思うのである。
知っている。答えられる。たくさん準備してきたのだから。
だけど緊張して手が挙がらない。
教授の声が遠のき、自らの心の声が全身に響く。気が朦朧としてくる。

恥ずかしがるな。私は大金をはたいて、ここに来ている。発言して参加してナンボなのである。クラスメイトよ、私のノンネイティブイングリッシュを受け止めよ!
そういって、気持ちを奮い立たせた。

開始後1時間15分、意を決して手を挙げる。
声は上ずっていたが、内容は良かったと思う。
「Buyout後にScottsの業績が良くなったのは、どのような取り組みのおかげか」という、おそらくキーとなる質問の一つに対して答えた。

クラスで発言するという目標をクリアし、気持ちが晴れた。そこからは授業に集中できた。

クラスの冒頭で扱ったケースはこれから学ぶコンテンツの掴みとなり、ここから7回の授業を通じて、まず経済学の基礎的な考え方を身に着け、後半に向けて経済学の考え方を現実の事例に当てはめて論理構造を組み立てる練習をする、ということのようである。
もう少しくだけて言えば、例えば、米国スターバックスの従業員に対する大学授業料の補助は、スターバックスとして便益があるのかを経済学の観点からアカデミックに検討する、というようなことをこのクラスでやっていくのだと思われる。おもしろそうだ。

約2時間が過ぎ10分間の休憩。隣に座るクラスメイトとの会話。どこに住んでいるのか、どこで働いているのか、どんな音楽を聞くかとか、取り留めもなく陽気に会話する。

授業が終わり、鼻歌まじりで家路につく。
車内の音楽はQueenのWe Will Rock Youがちょうど良かった。


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