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CFO思考を持つIR担当者が企業価値を高める

企業価値向上12兆円構想の重要なプレイヤーはIR担当者
*企業価値向上12兆円構想とは

で続きを書いた

で、関連する記事を見つけたので、切り口を変えて短めに書いてみた。

(参照先の記事は一読推奨!)

〇インベスタージャーニー

時価総額200億円くらいまでに重要かつ優先されるのは
・投資家に会社を認知してもらうこと
・事業内容・ビジネスモデルを理解してもらうこと

説明会資料の改善、投資家向けメディアの活用などの様々な活動に寄り実現しなければならない。
上手くいけば、業績の数字と伴って企業価値も拡大する。

よく証券市場で言われるのは
”時価総額500億円を超えたあたりで景色が変わってくる”
という言葉。私がまだセルサイドのアナリストをしていた時、ピジョンの社長が説明会でニコニコしながら言ってたのを未だに鮮明に覚えている。取材を受ける機関投資家の海外割合が増える、欧米のロングオンリーの投資家が増える、といった変化がある。機関投資家の動向に注目する個人投資家の方も知っておくべきポイントかもしれない。
(現在のピジョンの時価総額2500億円。高値から株価3分の1だけど、このコメントを聞いた時の5倍)

この変化により伝え方で重視すべき点が変わってくる。
”今の姿をどう理解してもらうか”
から
”将来の姿をどう理解してもらうか”
に重心が移る。

そこで必要になるのが、CFO思考だろう。


〇日本にはスーパー財務部長はいるが、CFOはいない

”日本にはスーパー財務部長はいるが、CFOはいない”
という表現がされることがある。
スーパー財務部長とCFOの違いは、語ることがそれぞれ会計とファイナンスであること

”今の姿をどう理解してもらうか” = 会計

”将来の姿をどう理解してもらうか” = ファイナンス


御社にはCFOがいますか?

〇過去を語るだけでは片手落ち ファイナンスは未来志向

アトラエCFOの鈴木秀和氏と、一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授の野間幹晴氏の対談記事を紹介する

この記事では、真のCFOがいない IRや投資、経営計画といった経営の根幹にまで踏み込むCFOが増えていくことで、日本企業が変わっていくことを期待している。
*長めの引用ですが、元記事もぜひ

なぜ日本では、真のCFOが育たないのか(日経ビジネス)
#Yahooニュース
なぜ日本では、真のCFOが育たないのか(日経ビジネス) - Yahoo!ニュース

日本企業には真のCFOが少ないといわれて久しいが、それはどうしてなのか。真のCFOとはどんな能力を持ち、企業はどのように育てていくべきなのか。
日本企業とグローバル企業において、CFOの役割に大きなギャップがあります。例えば、大手会計事務所のKPMGジャパンが実施した「KPMGジャパン CFOサーベイ2021」で、日本のCFOが責任者を務める業務領域の上位に挙げられているのは「財務戦略」と「予算管理」です。「IR(投資家向け広報)」や「投資判断」「経営計画」はその下に位置しています。
 日本企業の多くは投資判断をしたり、経営計画を作成したりする部署として経営企画室を設置していますが、グローバル企業ではあまり見られません。CFOは財務や経理の担当役員で、経営には強く関与しないというのは日本独特なのです。そのため、特に海外の機関投資家から寄せられるCFOへの期待と実態が乖離(かいり)してしまっています。
―私は財務戦略は経営戦略とひもづいていないと意味がないと考えています。むしろ経営戦略を実行していく手段のうちの一つが財務戦略です。そのため、CFOは単なる財務戦略のプロフェッショナルではなく、「経営者」であることがとても重要だと思っています。機関投資家と直接対峙するときにも、CEO(最高経営責任者)や誰かの考えの伝達者ではなく、自分の言葉で経営戦略やエクイティストーリー(成長戦略)を語れるかどうかで説得力は変わってくるように思います。
野間氏:機関投資家は将来の話を聞きたいのに、CFOが過去の話だけをしていてはコミュニケーションが成り立ちません。日本企業の多くが過去、すなわち財務諸表の説明に終始し、フェアバリュー(適正価値)など将来について語るようなIRまでは行えていないのが実態ではないでしょうか。

また、KPMGのCFO Surveyでは企業価値の概念の拡がりとともに、求められるCFO像も変化していると書かれている。

KPMG Japan CFO Survey 2021

*図の下部分
持続可能な社会を目指した規制等の導入に伴い、企業は環境課題や社会課題に対応することが求められます。CFOは、このような環境下で持続的に企業価値を向上させるために、従来の財務資本の管理を中心とする役割から、非財務的な要素を含む企業の幅広い資本(自然資本※1、社会関係資本※2、人的資本、知的資本、製造資本、財務資本など)を俯瞰的に管理する役割へと変化することが求められます。

CFOが担うべき範囲は拡大しており、一人がカバーできる範囲を超えている。その部分をIR担当者が補うことで市場との適切な対話が可能となる。事業会社の中でIR担当者が最も市場から直接意見を聞く事ができる立場にある。投資家との対話の入り口でCFOの視点を持った翻訳者としての役割を担うことでCFOをサポートすることができる。

〇企業がCFO人材を育成しない理由


経済学者のゲーリー・ベッカーは、人的資本には一般的能力と企業特殊能力の2つの側面があると主張しています。前者は財務諸表を分析できる、あるいはデータ分析が得意であるなど他社に転職しても活用できる汎用的な能力です。後者は、その企業でしか製造していない製品を企画することにたけている能力。
企業が企業特殊能力(その会社でしか通用しないスキル)を重視した人材育成をした結果、転職しようと思う人が生まれにくく、いざ転職しようと思ってもできず、人材マーケットが発展してこなかった。企業としては人材が外部に流出せず、特殊性を高めながら効率的に終身雇用システムを運用することができた。ファイナンスや経営という能力は企業特殊能力ではないため、企業にとってCFO人材を育成するインセンティブがなかった。

 そのため、企業の内部で自社の事業について詳しい人材は育てられたけれども、CFOを育てることはできなかった。さらに、財務担当者が株式市場より銀行の方を向いていたという歴史的背景も、マーケットとの対話が上手なCFOが生まれにくかった要因だと考えられる。

上場後はいつでも投資することができます。そのため、上場後は特に「なぜ今自社の株式を買うべきなのか」というエクイティストーリーをしっかり投資家に伝えることが重要となる。株式市場と対話した経験があるCFOは多くないでしょうから、コミュニケーション方法のキャッチアップにはなかなか苦労するのではないでしょうか。

〇一般的能力の蓄積で自分価値を高める

IR担当者は自社のこと、事業環境のことは企業特殊能力に位置するかもしれないが、他の能力(ファイナンス、財務、コミュニケーションなど)は一般的能力として蓄積することで、自分自身の価値を高めることができる。
企業価値向上につながる活動、考え方は一般的能力であり、他社に行っても活用できる知識で、IRがキャリアアップを考えることができる。


〇社内に投資家の視点を持つ唯一の存在

特に中小型グロースの上場企業の多くは社長が営業職や技術職、研究職などで企業を成長させてきた。その結果、社内に資本市場について知っている人はほとんどいないため、IR担当者は社内ではユニークな存在。

また、IR担当者は経営層と近いところで活動しており、何に投資をしてどの程度のリターンをどのくらいの期間で得るか。企業価値向上につながるファイナンスの知識を得られる可能性が高い場所にいる。企業価値を高めることがIR担当者自身の価値向上につながるかどうかは、活動を通してどんな能力を高めるかにかかっているのではないかと考えている。


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