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ヒーローとヴィランが反転するヒロアカという物語

ヒロアカが好きなんですけど、何が好きかってあんまりちゃんと表明したことなかったなと思い、単行本読み返しているタイミングで書いておきます。

わたしは、元々は連載開始時に「画風が違う」というオールマイトの一発ギャグのような設定と絵のうまさにやられ、林間合宿編あたりで脱落して、アニメのビルボあたりで戻ってきたオタクです。

リアタイ時ハマった理由は上記の通りなんですが、出戻りして改めて読んでいちばんの魅力だと思ったのは、一貫して「ヒーローが言いそうなことをヴィランが言う」っていう物語のつくりなんですよね。

本作の敵役は死柄木弔(しがらき・とむら)という青年、そしてその背後にいるオール・フォー・ワン(AFO)という巨悪なわけですが、この弔くんが初回のヒーロー襲撃に失敗した時、AFOは言うわけです。

「悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄ではなかったハズだ」

失敗に寛容ですねえ。オール・フォー・ワンは一貫して弟子(のような存在)である弔くんに寛容で、失敗から学ぶことを積極的に勧めます。教師のお手本のような人ですわ。

一方、世界に名を轟かすNo.1ヒーロー・オールマイトは弟子の育成に四苦八苦するわけです。自分がなんでもすぐにできたので、教えるのが下手なのがこれでもかと作中描写されていて、「いい選手がいい監督になるわけじゃないんだなあ」というのがながら読みでも実感できる描かれ方でこれまた面白いわけですが。

ヒーローが言いそうなことをヴィランが言うのは、オール・フォー・ワンに限りません。

弔くんも世界を壊すと宣言した後、仲間であるトガヒミコに「私の好きなものまで消しちゃうの?」と聞かれた時、「仲間の望みは別腹さ 好きに生きてろ」と返します。仲間思いなんですねえ……。

少し話はそれますが、弔くんが自身の挙動について「未来の王様がご帰還だ!」とのたまったのちピンチになると、トガちゃんは「未来の王様がピンチです!」と発言します。

最初期こそピリついてますが、敵連合には一貫してこういう気安さがあり、居心地の緩やかな連帯であればこそ、社会からつま弾かれた者たちが安住の地に選んでいるんだろうな、というのがわかるのも好きなポイントです。主人公たち、案外こういう日常が伺える描写が少ないので。全寮制の学園ものなのに!

閑話休題。

私が何より弔くんがリーダーの器だなと思ったのは、敵対していた金持ちの悪役リ・デストロを打ち負かしたのち、仲間が寿司を食いたがっていたことを思い出し「おまえ社長だから金あるよな!」と寿司を奢らせるシーン!これめちゃくちゃいいんですよ……些細な発言でも覚えていて、きちんと対応してもらえる。社会人経験ある人ならわかると思うけど、こうした細かい気配りができる上司はついていきたくなりますよね。この寿司は人の金だけど笑

「そうさ夢と希望に満ち溢れてるんだよ」(弔くん)

「仲間の役に立とうって人間に悪ィ奴はいねえ 一緒に好きに飛ぼうな!」(トゥワイス)

「ただ皆の幸せを守るだけだ」(トゥワイス)

「たすけてくれてありがとう」(トガちゃん)

「自分より大事な仲間に恵まれた これより最高な人生があんのかよ」(トゥワイス)

「笑おうぜトガヒミコ 人は笑う為に生きている!」(荼毘くん)

「君の一歩が皆の勇気になるんだ」(オール・フォー・ワン)

「そうさ伊口くん 誰もが誰かのヒーローになれるんだ!」(オール・フォー・ワン)

皮肉っぽいのもありますが、字面だけ見るとよっぽどヒーローしてるわけですよ。ヴィランのほうが。堀越先生はかなりこのあたり意識してるんだろうな〜と思うので、連載終わったらぜひこのあたりインタビュー記事なんかで掘り下げてほしいです。

というわけで週刊少年ジャンプの看板漫画・僕のヒーローアカデミアのちょっと正統派とは違う魅力の話でした。

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